2011年11月6日日曜日

チェ・ゲバラと歩んだ人生

   チェ・ゲバラの最初の夫人イルダ・ガデア(1921~74)が書いた『ミ・ビーダ・コン・エル・チェ』の日本語訳『チェ・ゲバラと歩んだ人生』がついに出た。中央公論新社からで、訳者は新進気鋭の松枝愛(まつえだ・めぐみ)だ。

  イルダは死の2年前1972年に、『チェ・ゲバーラ  アニョス・デシシーボス(チェ・ゲバラの決定的な歳月)』を刊行したが、絶版となった。だが2006年ボリビアで復刻版が出版され、それを訳したのが『チェ・ゲバラと歩んだ人生』である。

  この本には、これまで日本ではほとんど知られていなかった、チェのグアテマラ時代とメキシコ時代の生き方が細かく記されている。恋人・妻だった左翼活動家イルダでなければ書けなかった本だ。

  アルゼンチン人青年医師エルネスト・ゲバラは、グアテマラでイルダと出会い、1954年の流血のグアテマラ政変を身近に経験して、革命家への道に入った。メキシコ市ではカストロ兄弟に会い、キューバ革命に参加することになる。まさに「決定的な歳月」だった。

     イルダの実弟リカルド・ガデアが、姉や、姉が属した「アメリカ革命人民同盟(APRA=アプラ)」について書いた巻末の文章は貴重だ。また、イルダ縁の地を訪れリカルドに会ってまとめた「訳者後書き」も読みごたえがある。

  松枝は前訳書『革命の侍』(2009年、長崎出版)のときもそうだったが、物語が展開する土地を歩き、著者らに会って翻訳し、「後書き」を書く。訳者の意気込みが感じられる。

  チェに関する本は数多いが、これは特に面白い。だが、これ以上、内容に触れるのは控えよう。みなさんに読んでほしいからだ。(因みに、巻末の「解説」は不肖・私が書いている。)

  チェの女性観もうかがわれ、この点でも興味深い。

(2011年11月6日 伊高浩昭)