2011年11月14日月曜日

3・11 文明を問う (6の2)

----共同通信社編集委員室インタビュー企画18回連載記事紹介ーーーー

     4人目の登場人物は、ことし6月下旬、4度目の来日を果たしたノーベル文学賞作家マリオ・バルガス=ジョサ氏(75)。ペルー人で、スペイン国籍ももつ。

    「東日本大震災は、世界が注目する大惨事だ。作家は常に自分の時代に立ち向かわなければならない。文学は人間を目覚めさせ、常に正義と進歩を目指す。作家は文学を通じて行動する」

    (福島事故を契機に近代化を反省すべきかと訊かれて)「近代化に背を向けるべきではないが、進歩には危険性もある。物質主義は感情、感受性、個人精神を破壊し、専門外の人間との対話を奪い、非人間的な社会をつくる。物質的進展と豊かな精神性を調和させなければならない」

    「近代化は小さな文化を消しがちだが、小さな文化は全球(グローバル)化に対する重視すべきもう一つの原則を示す。それは震災で問われている自然との関わり方、自然への畏敬を教えてくれる。伝統文化は近代化の障害ではなく、われわれ人類の財産なのだ」

    「原発は、自然に挑戦するリスクが大きく、文明が破壊される恐れがある。このエネルギー源を拒否し、リスクのないものを世界は協力して創るべきだ。文学、ジャーナリズムは議論を起こそう。福島の教訓を世界はないがしろにしてはならない」

    「これからは文学、美術、音楽など、人間の在り方を示すものが役割を果たす。日本は、物質主義でない市民文明を創る今後の闘いでも模範となってほしい」

[MVLL(マリオ・バルガス=ジョサ)来日時の伊高執筆記事は、月刊『ラティーナ』誌2011年9月号および、『週刊金曜日』誌10月7日号を参照されたい。]


    5番手は、「平和研究の父」と呼ばれるノルウェー人政治学者ヨハン・ガルトゥング氏(80)。
    
    「日本の原発の多くは海浜にある。科学者たちは、地震や津波への警戒を政府や電力会社になぜ警告しなかったのか。この点に怒りを覚えた」

    「日本は、クリーンエネルギーに転換できる地熱、地中の熱水が豊富だ」

    「原発からの転換には莫大な初期投資が要る。21世紀の終わりには実現できるのではないか。エネルギーの歴史を考えたとき、福島は世界の象徴になる」

    「広島・長崎の原爆は米国が投下した。では、福島原発事故は誰の責任か。日本は、それを考えるべき重大な機会にある」

    「日本は米国の要求に対して常に抵抗しない。日本は、対米同盟関係から本当の意味での独立を果たさなければならない」

    「現代は全球主義(グロ-バリズム)でなく、地域主義の時代だ。欧州連合、アフリカ連合、東南アジア諸国連合などが機能している。日本は米国との良好な関係を維持しつつ、東アジアでの非軍事共同体の結成を目指すべきだ」[感想ならぬ一言:そして南米諸国連合(ウナスール)も機能している。]

    「原爆の被害者であり、(植民地支配の)加害者でもある事実を受け止めて行動する指導者が日本には必要だ。(南京大虐殺などをめぐる)議論があろうが、悪いことをしたという自覚が前提になければならない。加害者には、行為に及んだ理由を伝える権利がある。被害者には、それに反論する権利がある」


    6人目は、ノーベル平和賞受賞者でケニア人のワンガリ・マータイさん(71)。環境保護政策の指導者だった。

    「われわれは自然の力に対して謙虚になるべきだ。人類は自然の最上に位置していると思いがちだが、自然の力はわれわれを簡単に打ちのめす」

    「技術や能力のない途上国が原発を導入すれば、自国民だけでなく人類を危険にさらす。原発には<発展ぶり>を誇示したがる政治家の自尊心を満たす魔力がある。こうした力に寄り掛かる人々を止めよう」

    「アフリカには水力発電に適した大河がたくさんある。コンゴ川が活用されれば、アフリカ全土を賄うエネルギーを得ることができる」

    「人類は(大自然の破壊、気候変動などを)警告されながら何もしてこなかった。すぐ忘れてしまう。だが忘れることは、ある面ではいいことかもしれない。人類は忘れなければ立ち上がることができいないのかもしれない」

[感想:マータイさんは、このインタビュ-記事が紙面に載っていた時期の2011年9月26日、癌で死去した。日本人の「もったいない」の思想を国際社会に広めようと努めた賢者だった。「もったいない主義」も、MVLLの言う「小さな文化」である。]

(2011年11月14日 伊高浩昭まとめ)