2011年11月24日木曜日

スペイン総選挙の反響

               スペイン総選挙が11月20日実施され、マリアーノ・ラホーイ党首の率いる野党「国民党(PP=ペペ)」が過半数を上回る186議席を得て圧勝した。

     PPは、スペイン内戦を起こしたフランシスコ・フランコ将軍ら反乱軍の「国民戦線」の流れをくむ保守~右翼政党。ホセマリーア・アスナールが首相だったPP政権(1996~2004)以来ほぼ8年ぶりに政権に返り咲くことになった。
     
     南米ではアルゼンチン、ウルグアイ、チリ、ペルー、ボリビア、エクアドール、コロンビアなど、中米ではパナマ、コスタ・リカなど、カリブ海ではドミニカ共和国、ハイチなど、そして北米に位置するメキシコが、マリアーノ・ラホーイ次期首相を祝福した。

     スペインが重視する大国ブラジルは、公式声明を出していない。
    
     最も注目されるのは、アスナールPP政権が敵視した社会主義キューバだ。だが22日現在、反響は出ていない。フィデル・カストロ前議長は、極右のアスナールと犬猿の仲だった。

     アスナールは欧州連合(EU)を巻き込んで、カストロ体制に冷戦を仕掛けた。スペインやラ米諸国では、ラホーイ新政権とラウール・カストロ政権が早晩、緊張関係に陥るとの展望記事が出回っている。
     
     マイアミのキューバ系社会にある「キューバ系米国人財団(FNCA)」は、ラホーイ勝利で、スペインおよびEUのキューバへの圧力が強くなると、期待を表した。
    
     次に注目されるのは、ウーゴ・チャベス大統領が「ボリバリアーナ革命」を遂行しているベネズエラだ。外務省は、「チャベスが、スペイン人民に民主的行事(総選挙)の成功を祝福した」との声明を発表した。

     またニコラース・マドゥーロ外相は、「新政権とはイデオロギーの違いを超えて良好な関係を維持したい。我が国とポルトガル(右翼政権)との関係が模範となる」と述べた。
     
     ダニエル・オルテガ大統領が11月6日に再選されたばかりのニカラグアは、公式声明を出していない。だが「今日のニカラグア」誌が、「スペイン人民はPPを怖がらなくなった」と論評した。

     かつてスペインには、内戦に敗れた「人民戦線」派(スペイン共和国支持派)の間に、フランコファシズムの思想を引きずっていたPPへの恐怖心があった。今選挙でPPが議会の過半数を制したことは、有権者の多くに「過去への恐怖心」がなくなったか薄れたかを意味すると分析している。
     
     ラ米・カリブ33カ国は12月2~3日ベネズエラの首都カラカスで首脳会議を開き、米国・カナダの入れない「ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)」を創設する。来年はスペインのカディスで、第22回イベロアメリカ首脳会議が開かれ、ラホーイが議長を務めることになる。

     ラ米の団結があり、ラ米を歴史的に重視するスペイン外交がある。時代も、21世紀第2・10年期に入っている。ラホーイとしても、アスナールのような極右反共路線に簡単には乗れないはずだ。

(2011年11月23日 伊高浩昭執筆)