2011年12月5日月曜日

ペルーで非常事態発動(後に解除)

▼▽▼ペルーのオヤンタ・ウマーラ大統領は12月4日、北部のカハマルカ州内のカハマルカなど4地方に「安寧秩序が侵されたため憲政上の責任を果たす」として5日から60日間、非常事態を発動すると発表した。

    カハマルカなど4地方では、南米1の金生産企業ヤナコチャ社がコンガ金山から金と銅を採掘する「コンガ計画」を実施しようとしていた。

    これに反対する住民は「カハマルカ防衛戦線(FDC)」を結成し、11月23日から無期限の阻止活動を展開していた。住民は、水源である4か所の湖沼が採掘作業によって汚染され破壊されるとして、同計画に反対してきた。

    事態を重く見た政府は29日、サルモーン・レルネル首相を通じて、ヤナコチャ社に対し、計画を一時停止するよう要請した。同社も、これを受け入れた。首相は「愛国的決定だ」と強調し、「住民のための水源の安全性が確保されたら、会社は、それを維持する責任を担いつつ操業することができるようになる」と述べた。

    ヤナコチャ社には、ペルーのブエナベントゥーラ社、米国のニューモント、世銀の国際金融会社(IFC)が参加している。コンガ金山開発に48億ドルを投資し、19年間に金890万オンス(時価150億ドル)を採掘する計画だ。

    だが、計画そのものの廃棄を求める住民は、12月に入ってからも道路閉鎖、鉱山施設包囲など阻止活動を続けていた。

    ウマーラは、歴史的な「ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)」を3日創設した、カラカスでの第3回ラ米・カリブ首脳会議への出席を取りやめたが、その理由の一つが「コンガ計画」をめぐる不穏な状況だった。

    「住民との対話が行き詰った」ためとする非常事態発動は、住民意思を尊重しながらも、その住民を含む「貧困層の生活向上には、鉱山開発による国庫収入が欠かせない」との大統領の判断に基づく。

    7月28日に就任したウマーラだが、既にさまざまな難題に取り巻かれている。

(2011年12月5日 伊高浩昭執筆)

          政府は12月16日、非常事態を解除した。地元は13日、無期限の阻止行動を打ち切っており、これを受けた措置。政府と地元は19日、話し合いを再開する。

   この間、サロモーン・レルネル首相が10日、対話失敗の責任を取る形で辞任した。オスカル・バルデス新首相が11日就任し、地元と折衝していた。

(12月17日追記)