2012年9月3日月曜日

オルテガ大統領が米軍事学校派遣打ち切りを表明

☆☆☆ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は9月4日、軍・警察要員を今後、米国の軍事学校に派遣しない、と言明した。

★米政府は1946年からパナマ運河地帯に「アメリカス学校(SOA=スクール・オブ・アメリカス)」を置き、ラ米の軍人と警官に反共、親米、弾圧、拷問、殺害、クーデターの陰謀、戦闘、対ゲリラ戦などの訓練を施していた。ラ米左翼は、SOAを「スクール・オブ・アセシーノス(暗殺者養成学校)」と呼んでいた。

★SOAは、20世紀末の運河地帯のパナマへの返還に伴い撤退したが、2001年、米ジョージア州ベニング基地内に「西半球安全保障協力学院」として復活した。現在も、ラ米の多くの国々が軍人と警官を留学させている。

★ロイ・ブルジョアという米国人カトリック司祭(74)がいる。1972~75年、布教のため派遣されたボリビアで、バンセル極右親米政権による虐殺などおびただしい人権蹂躙を目の当たりにし、抵抗運動に協力した。逮捕され厳しく取り調べられた後、米国に強制送還された。バンセルもSOA出身だった。

★ブルジョアは、ボリビア体験も踏まえて1990年、SOA-WATCH(SOAW=SOA監視団)を組織した。以来、ラ米諸国を訪問しては、軍人・警官の派遣を止めるよう働き掛けてきた。

★司祭は、東西冷戦終結後、役割を失ったSOA留学経験者のかなりの部分が麻薬など組織犯罪に関与してきた事実にも注目してきた。例えばメきシコの麻薬マフィア「ロス・セタス」の中核は、SOA出身の陸軍特殊部隊の元要員たちだ。

★これまでの司祭の説得やラ米政府の独自の判断で、ベネズエラ、ウルグアイ、ボリビア、アルゼンチン、エクアドールが派遣を止めた。司祭は今回ニカラグアを訪れ、オルテガ大統領を説得し、派遣打ち切りの約束を取り付けた。

★ニカラグアはサンディニスタ革命後、SOAへの派遣を打ち切った。ソモサ独裁時代に派遣されていた軍人・警察幹部の多くが、レーガン米政権の仕立てた反革命ゲリラ(コントラ)の中心となってニカラグアに内戦を仕掛けていた、という深刻な事情があった。

★ニカラグアは、SOAが「協力学院」と名前を変えて再登場した01年、当時の親米保守政権が派遣を再開した。07年に復活したオルテガ現政権は、それを踏襲してきた。司祭は08年にオルテガを説得している。2度目となる今回は、ニカラグア軍・警察が他の多くのラ米諸国と異なり、革命から生まれた武装組織であることをあらためて強く指摘し、オルテガに派遣打ち切りを求ていた。