2013年1月27日日曜日

銃器を自転車かパソコンと交換を-ウルグアイ政府が計画


☆★☆ウルグアイ政府は、国内に出回っている銃器類を大幅に減らすため、銃器を自転車もしくは電脳(パソコン)と交換する計画に近い将来着手することにしている。

☆殺人に用いられる銃器を「生きるための武器」に換えるこの政策には、年間12億ドルかかるという。国内では2010年現在45万丁の銃器が登録されている一方、推定50万丁が不法に所持されている。人口320万人のこの国に計95万丁の銃器があるとすれば、約3人に1人が所持していることになる。

☆昨年、殺人事件が267件起きている。200件以下だった一昨年をかなり上回ったこともあって、内務省は交換政策を策定した。 

「チャベスは呼吸不全克服」と、ベネズエラ政府発表


☆★☆ベネズエラのエルネスト・ビジェーガス通信情報相は1月26日、チリの首都サンティアゴで、「ハバナで療養中のウーゴ・チャベス大統領は、深刻だった呼吸不全を克服した。容体は概して良好である」と発表した。

☆ビジェーガスは、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)とEUの首脳会議にチャベスの代理として出席しているニコラース・マドゥーロ副大統領に随行している。

☆読み上げられた声明文の末尾には、「CELACは、チャベス大統領のラ米・カリブにおける指導力によって生まれた」と明記されている。

☆チャベスは、シモン・ボリーバルやホセ・マルティのラ米統合思想に基づき、米州の「南」であるラ米・カリブ33カ国の一大機構CELACの創設を志し、2011年12月カラカスで実現させた。米州の「北」である北米合州国とカナダには加盟資格がない。

CELAC出現で、米州の南北の境界はメキシコ、キューバ、バハマの北側と米国を隔てる東西の横線となった。広義の「南米」がその線まで北上したわけだ。  

CELAC・EU首脳会議が「サンティアゴ宣言」を採択


☆★☆ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、33カ国)と欧州連合(EU、27カ国)の首脳が一堂に会する第1回CELACEU首脳会議が1月26日、チリの首都サンティアゴで始まった。ラ米史上、最大級の首脳会議である。

☆チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領が議長を務め、議長が読み上げた48項目の「サンティアゴ宣言」は全会一致で採択された。会議は27日までだが、途中で帰国する首脳たちがいるため、初日の採択となった。

☆宣言は、「保護主義を避けつつ通商を拡大」、「投資の安全を保障しつつ投資拡大」の2点が持続的開発に重要だと強調した。投資保護では、各国の内政上の決定は国際公約・義務に則り行われる、との外資国有化防止措置が盛り込まれている。

☆特にカリブ海諸国が懸念する気候変動には、対策を講じることが明記された。第2回首脳会議が2015年にブルッセルで開かれることも決まった。

☆ラ米とEUの首脳会議は7回目とされるが、2011年12月カラカスで発足したCELACEUの首脳会議は初めて。CELACには北米の米国とカナダは加盟できず、両国の不在が目立った。

☆28日には第2回CELAC首脳会議が開かれ、輪番制議長はチリ大統領から、キューバのラウール・カストロ国家評議会議長に移る。

2013年1月26日土曜日

スペイン語の黒人差別表現追放を-ウルグアイで署名運動


★☆★アフリカ系市民を差別する西語表現をなくそうという運動が、ウルグアイで1月22日始まった。「アフリカ系ウルグアイ人協会」の呼び掛けによるもので、3月20日までに1万人の署名を集め、国連「人種差別追放日」の3月21日に王室スペイン語アカデミア(RAE)に提出する。

★例えば「トゥラバハール・コモ・ネグロ」(黒人のように働く)という表現は、奴隷時代の過酷な強制労働を連想させるとして、「トゥラバハール・ムーチョ」(大いに働く、たくさん働く)のような言い方に換えるべきだ、とする。

★「ノ・ソモス・ネグロス」(我々は黒人ではない=そんなひどい目に遭う覚えはない)という差別性が明確な用語も罷り通っている。協会はRAEに、「黒人」という単語の入る差別的語法を西語辞書から追放するよう訴える。

★政府高官、サッカー選手、作家らウルグアイの著名人たちが広報ビデオに出演し、署名を呼び掛けている。あるアフリカ系市民は、「アフリカ系ウルグアイ人の73%は今日、まともな職業に就けないでいる。植民地時代(奴隷時代)とさして変わらないのだ」と語っている。

2013年1月25日金曜日

チリで26日からCELAC・EUおよびCELAC首脳会議開催


★☆★チリの首都サンティアゴで1月26日から28日にかけて、二つの大きな首脳会議が開催される。ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック、33カ国加盟)と欧州連合(EU、27カ国加盟)の合同首脳会議、および第2回CELAC首脳会議である。

★合同会議では、経済統合、開発、国際組織犯罪、麻薬、国際金融危機、コロンビア和平交渉、ハイチ支援などが議題となる。

★28日開催のCELAC首脳会議では、議長国がチリからキューバに移り、ラウール・カストロ国家評議会議長が新議長に就任する予定。

★両会議に合わせて、社会活動、労働、先住民など400のラ米民間団体がチリ大学構内で「人民サミット」を開く。その決議は、両首脳会議に渡される。

CELAC首脳のうち、チャベスが療養中のベネズエラと個別の理由によるエル・サルバドールは欠席し、副大統領が代理出席する。昨年6月国会クーデターで大統領を追放したため加盟資格停止となったパラグアイの公式な出席はない。

ベネズエラ指導部がチャベス大統領と新たに面談


☆★☆キューバ訪問中のベネズエラ外相エリーアス・ハウアは1月24日、ハバナで同日、ニコラース・マドゥーロ副大統領、ディオスダード・カベージョ国会議長、ラファエル・ラミーレス石油相、シリア・フローレス検事総長、バリーナス州知事アダン・チャベス(大統領の実兄)とともにウーゴ・チャベス大統領と面談した、と明らかにした。

★経済、政治、ベネズエラ統一社会党(PSUV、政権党)運営、5月予定の市長・市議会選挙対策などについて話し合われた、という。

★ハウア外相はまた、「チャベス大統領は術後の回復過程にある。だが今後、一層複雑かつ深い闘病過程に入る」と述べた。

★マドゥーロとハウアは、チリのサンティアゴ市で26~28日開催されるラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)と欧州連合(EU)の合同首脳会議、およびCELAC首脳会議に出席するためチリに向かう予定。

2013年1月23日水曜日

故独裁者の息子ピノチェー2世に小切手詐欺容疑


▼▼▼チリ軍政独裁者故アウグスト・ピノチェーの長男アウグスト・ピノチェー=イリアルト(69)は1月22日、空小切手発行容疑で裁判所に召喚されながら応じなかった。新たな召喚日は2月12日と決まった。

▼長男ピノチェーは去年3月、額面380万ペソ(約7万米ドル)の小切手を振り出したが、資金の裏付けがなかった。このため8月に告訴された。

▼故独裁者は、人道犯罪責任の他、2600万ドルの不正蓄財で追及されていた。息子も、武器買い付けに際し300万ドルを受け取った嫌疑がかけられていた。独裁者の妻や他の子供らにも不正容疑がかけられ、「腐敗一族」として問題になってきた。

ラ米でも終末期医療めぐる麻生暴言広く報道さる


▼▼▼副総理兼財務相麻生太郎氏が1月21日、「社会保障国民会議」で終末期医療問題に関し、「さっさと死ねるようにしてもらうとか、いろんなことを考えないといけない」(朝日新聞報道)、「チューブの人間」、「政府のお金で生かされていると思うと、寝覚めが悪い(同報道趣旨)」などと暴言を吐いたニュースは世界で広く報じられた。多くの国で高齢化と医療が大きな問題となっているからだ。

▼富裕な家に生まれ、人生の苦労をほとんど経験したことのない者の傲慢で冷酷な発言だ。しかも首相経験者である。「失言」や「発言撤回」で済まされるものではない。政権の体質さえ疑われかねない恐るべき発言である。

▼ラ米でもアルゼンチン、チリ、ペルーなどで新聞、ラジオ、テレビが伝えた。スペインでも多くのメディアが一斉に報じた。発言の非人道性が衝撃だったからだろう。

▼首相に次ぐ地位にある者の暴言が、日本政府の品性と、選んだ日本人有権者の意識への疑問を国際社会に拡げたのは確かだろう。

2013年1月22日火曜日

マプーチェなど「先住民の存在を憲法で認める」とチリ大統領発表


★☆★チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領は1月21日、先住民の存在を憲法で認める方針、および「多民族代表者会議」を創設する方針を発表した。

★26日から首都サンティアゴで、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)と欧州連合(EU)の合同首脳会議が開かれる。欧州議会は昨年、チリ政府に、先住民最大民族マプーチェ人の人権や生活権に配慮するよう要請していた。大統領は首脳会議直前に、新たな措置の発表に踏み切った。

★マプーチェ人はスペイン人入植以来虐げられ、土地の大部分を入植者に奪われた。今日でも土地奪回闘争が続いているが、政府はピノチェー軍政期の悪法「テロリスト取締法」を盾に闘争を厳しく弾圧し、しばしば先住民側に死者が出ていた。

★マプーチェ人は、EU首脳陣の来訪をにらみつつ、今月16日、マプーチェ指導者会議を南部のテムーコ市で開いた。会議は、過去の先住民権利制限条約の見直し、自治権、土地返還、賠償、謝罪、軍・警察の撤退、弾圧の悪法適用撤回などを決議し、要求として政府に突きつけていた。

★マプーチェ人に代表される先住民への歴史的な差別問題は、「経済発展」を誇るチリ人が長年目をつぶってきた問題であり、「チリの恥」として今日まで存続している。

ベネズエラ外相が「チャベスと話し合った」と発表


★☆★ベネズエラのエリーアス・ハウア外相は1月21日、ハバナで療用中のウーゴ・チャベス大統領と話し合った、と同地で発表した。

★チリのサンティアゴで26、27両日、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)と欧州連合(EU)の首脳会議、28日にはCELAC首脳会議がそれぞれ開かれる。ベネズエラからはニコラース・マドゥーロ副大統領とハウア外相が出席する。CELACを一昨年12月カラカスで発足させた立役者チャベスだが、両会議で取るべきベネズエラの立場についてハウアに指示したという。

★ハウアは、「大統領と冗談を言い笑い合った」とも述べた。

★ハウアはまた、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相と会談した。ラウール・カストロ国家評議会議長は28日、CELAC輪番制議長を、チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領から引き継ぐことになっている。

2013年1月21日月曜日

2012年度の「現代ラテンアメリカ情勢」講座終わる


★☆★立教大学ラテンアメリカ(ラ米)研究所で私が担当する「現代ラ米情勢」の2012年度の講座は、1月19日のイシカワ駐日ベネズエラ大使を招いての公開講演会をもって終わりました。本日21日、成績表をラ米研に渡し、私の役目もひとまず終わりました。

★受講生の皆さん、新しく受講生になる可能性のある皆さん、桜花爛漫のころ、池袋キャンパスでお会いしましょう。2013年度もラ米は激動の一年になることでしょう。

★お元気で! 20130121 東京 伊高浩昭

チャベス大統領は帰国する、と副大統領語る


★☆★ベネズエラのニコラース・マドゥーロ副大統領は1月20日、テレベン放送のホセ=ビセンテ・ランヘール(JVR)の報道番組で、「ウーゴ・チャベス大統領は術後期間を終え、治療は評価過程に入りつつある。早かれ遅かれ帰国する」と述べた。

★ベネズエラ高官が大統領の帰国に言及したのは初めてのこと。それが政権復帰を意味するのか、それとも引き続き療養生活を続けるのか、あるいは祖国を死地に選ぶためか、定かでない。

JVRは、チャベス政権で外相、国防相、副大統領を務めた元政治家で、老練なジャーナリスト。チャベスとは盟友で、信頼関係は厚い。

【立教大学池袋キャンパスで19日午後行なわれたイシカワ駐日ベネズエラ大使の公開講演会は、大盛況の裡に終わりました。御参加を、ありがとうございました。】

2013年1月18日金曜日

きょう19日、駐日ベネズエラ大使公開講演会


★☆★ベネズエラのセイコウ・イシカワ(石川成幸)駐日大使が本日19日(土)1500~1800、立教大学池袋キャンパス14号館3階で、ベネズエラ情勢、対日関係、チャベス大統領の現状などについて講演します。

★立教大学ラテンアメリカ研究所(ラ米研)主催です。

★講演の後、司会・伊高との対談、会場との質疑応答があります。逐次通訳が付きます。

★予約不要、入場無料です。先着者優先です。どうぞ、お出かけください。

2013年1月17日木曜日

ベネズエラの絵本『道はみんなのもの』を読む


★☆★ベネズエラの原書を翻訳した児童向け絵本『道はみんなのもの』を読んだ。クルーサの文とモニカ・ドペルトの絵による優れた作品だ。この国の社会状況の一断面が興味深く描かれている。この一月に東京・新宿の「さ・え・ら書房」から刊行されたばかりだ。

★ベネズエラでの生活経験を持つ岡野富茂子、岡野恭介夫妻の共訳である。

★カラカスのバリオ(低所得者居住地区)の子供たちが、市役所や大人たちを動かし、自分たちの遊び場であり、誰にでも開かれた憩いの場である公園を造る話だ。

★訳者が指摘するように、現代日本の子供たちの都会での生き方に示唆を与える物語だ。
モニカの絵は魅力にあふれ、バリオの姿を見事に捉えている。

★ウーゴ・チャベス大統領は、バリオ住民の協力連帯精神を上手に引き出し、バリオの現代化に努め、これを重要な支持基盤にしてきた。 

2013年1月16日水曜日

ベネズエラ新外相にEハウア前副大統領

★☆★ベネズエラのニコラース・マドゥーロ執行副大統領は1月15日、兼務していた外相の職位を離れ、新外相にエリーアス・ハウア前副大統領が就任することを明らかにした。

☆マドゥーロは、ハバナで療養中のウーゴ・チャベス大統領が任命した、と述べた。

★ハウアは、副大統領を昨年10月退き、12月の統一州知事選挙のミランダ州知事選挙に政権党候補として出馬した。だが、野党連合の大統領候補だったエンリケ・カプリレスに僅差で敗れた。

☆マドゥーロが外相兼務を解かれたことは、事実上の大統領代行として政権を運営するとともに、
将来の次期大統領選挙に向けて出馬する態勢を固めるため。今回の人事で、「チャベス後」の時代が始まりつつあることが一層鮮明になった。

ベネズエラ高官らがチャベスに面会=19日に駐日大使講演会


★★★ベネズエラのニコラース・マドゥーロ副大統領は1月15日カラカスで、「昨日ハバナでウーゴ・チャベス大統領に面会した。大統領は坂道を登りつつある。真に闘っている」、「我々とキューバは最も深い友愛で結ばれている」と述べた。

★チャベスに面会したのは副大統領の他、Dカベージョ国会議長、Rラミーレス石油相、Cフローレス検事総長、実兄アダン・チャベス(バリーナス州知事)。それぞれの立場で政策や状況を大統領に報告した、という。

★一方、複数のブラジル政府高官は匿名で14日、「チャベスが死去したら、速やかに大統領選挙を実施するよう、マドゥーロに直接伝えてある」と明らかにした。

●●●このような状況の下、3日後の19日(土)1500~1800時、立教大学池袋キャンパス14号館3階で、同大学ラテンアメリカ研究所(ラ米研)主催により、セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使の講演・対談・質疑応答会を公開で催します。予約不要、入場無料です。ご来場を歓迎します。司会は伊高が務めます。●●●

2013年1月15日火曜日

キューバが出入国を大幅に自由化


★☆★キューバの改正移民法(出入国管理法)が1月14日発効した。従来の「出国許可証」(タルヘタ・ブランカ)や、渡航先からの「招待状」の提示は不要となった。

★改正法は昨年10月成立し、発効が待たれていた。

★出国は今後、旅券(パスポート)と渡航先の入国査証があれば可能。ただし、「公共利益、防衛、国家安全に関わる人物」の出国は、亡命や頭脳流出の観点から制限される。

★旅券発給料金は100CUC100兌換ペソ=約100米ドル)。従来の55CUCから大幅に引き上げられた。平均月収が二十数CUCのため、米ドルを持たない者には高額だ。

★在外滞在期間は、従来の1年未満から24カ月に延長され、更新も可能。1994年以降に不法出国した在外キューバ人には、一時帰国許可が与えられる。

★出国希望者、特に若者たちの不満を吸い上げ、出入国を「自由化」することで、「不満のガス抜き」と、国際社会とりわけ米国の印象改善を図る狙いがある。

★同時に、外貨の送金や持ち帰りを増やす狙いがある。これまでの在外送金者は高齢化が進み、この面でも若返りが必要になったわけだ。

2013年1月14日月曜日

イタリア映画「海と大陸」を観る


★☆★イタリア映画「海と大陸」(2011年、エマヌエーレ・クリアレーゼ監督、93分)を試写会で観た。地中海のシチリア海峡の南にある小さなイタリア領リノーサ島を舞台に展開する人道的、社会的な物語で、傑作である。

★★4月6日から東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。

★この島は、マグレブ(アフリカ北岸)のチュニジアとリビアに近く、だいぶ前から、欧州移住や出稼ぎ労働を望むアフリカ人難民の流入が絶えない。物語は、島の経済を支える観光と旧来の零細漁業、新世代と老世代、北イタリアと南イタリア、欧州とアフリカ、旧宗主国と旧植民地、本土(陸)と海、など幾重もの対比の中で繰り広げられる。

★さまざまな葛藤に苛まれていた主人公ら漁民一家の暮らしは、エティオピア人難民母子の<闖入>という異質で非合法の重大問題を抱えて暗転する。だが、最後に人間的な共感が生まれて一時的な救いがもたらされる。だが、その先はわからない。

★イタリア南部の日常に絡んで久しいアフリカ難民の問題は、岩波ホールで昨年上映された「ジョルダニ家の人々」でも取り上げられた。それほど南伊では無視できない社会問題にして国際問題なのだ。

★物語では、難民女性サラはエティオピア人で、リビア経由、リノーサ島に辿り着く。エティオピアもリビアも20世紀にイタリアの支配下に置かれた歴史がある。この設定も暗示的だ。しかもサラを演じた女性が、まさに難民出身者なのだ。

★この映画には、殺人場面と愛欲場面が全く無い。この二つを盛り込まずに面白い映画は幾らでも作ることができる。そのことを新たに証明している。この点からも好感が持てる。

2013年1月11日金曜日

カラカスでチャベス支持連帯の人民大集会開かる


★☆★カラカスのベネズエラ大統領政庁(ミラフローレス宮)一帯で1月10日、ハバナで療養中のウーゴ・チャベス大統領への支持・連帯集会が開かれた。全国から動員された数万人ないし十数万人の支持者が結集した。

★最高裁判断によりチャベス大統領の新任期就任式は9日無期限延期されたが、この日の人民大集会は象徴的な就任式となった。チャベスが宣誓する代わりに、事実上の大統領代行になっているニコラース・マドゥーロ副大統領が「憲法に対し、チャベス大統領への絶対的忠誠を誓う」と宣誓した。人民は「宣誓する」と合唱し応じた。

★マドゥーロは、「反政府勢力による不安定化の陰謀に備え警戒を怠るな」と、治安部隊に発破をかけた。

★来賓のウルグアイ大統領ホセ・ムヒーカ(メルコスール輪番制議長)は、「(チャベスが)もし明日居なくなっても団結、平和、労働を」と訴えた。ボリビアのエボ・モラレス大統領は、「チャベスは世界人民の反帝国主義闘争を代表する。その健康をラ米と世界の人民が気遣っている」と指摘した。ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は、「死の対決をしてはならない。平和を守らねばならない。この国が対決すれば、ラ米全域に波及する」と警告した。キューバのミゲル・ディアスカナル副首相は「帝国主義がベネズエラを侵攻すれば、キューバは自国が攻撃された場合と同様に受け止め、反撃する」と勇んだ。

★スリナムのデジ・ボーターセ大統領、エル・サルバドール副大統領、パラグアイ前大統領、ラ米諸国外相らも出席した。

★一方、カラカスで10日、ペトロカリーベ(カリブ石油機構)特別会議が開かれた。ベネズエラのラファエル・ラミーレス石油相兼石油公社(PDVSA=ペデベサ)社長は、「ペトロカリーベと米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)の加盟国による経済特区新設を提案する」と、構想を打ち出した。

アルゼンチン海軍帆船リベルターが帰着


▼▼▼アルヘンティーナ海軍の練習帆船リベルターが1月9日、マルデルプラタ港に帰港した。クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)大統領以下、政府要人と数千人の市民が桟橋で出迎えた。

▼リベルターは練習航海中だった昨年10月、米ヘッジファンドの訴えを認めた米法廷の命令で債権の形(抵当)として差し押さえられ、ガーナの港で抑留された。だが国際海洋法裁判所の裁定で12月抑留を解かれ、亜国に向かっていた。

CFK大統領は10日以降、ハバナで、術後療養中のチャベス・ベネズエラ大統領(の家族)を見舞う。その後、アラブ首長国連邦、インドネシア、ヴィエトゥナム3国を歴訪する予定。

2013年1月10日木曜日

ベネズエラ最高裁が「チャベス宣誓は不要」と判断


★☆★☆★ベネズエラ最高裁判所のルイサ・モラレス長官は1月9日記者会見し、ウーゴ・チャベス大統領は10日に予定される新任期就任宣誓式に出席する必要はない、との判断を明らかにした。

★長官を含む7人の判事は、最高裁憲法法廷で審理した結果、「チャベス大統領の場合は新任ではなく(連続)再選であるため、職位と政権に中断がない。このため新たな就任式は不要」との結論に達した。

★長官はまた、「宣誓式は1月10日以降、突発的事態(癌手術後の療養)が終わってから最高裁ですればよい」とも述べた。

★この最高裁判断は、政府と国会の憲法解釈の要請を受けて為された。政府と国会が前日の8日に発表した見解とほぼ同じである。

『ラテンアメリカ10大小説』を読む


★☆★この本(木村栄一著、2011年、岩波新書)は、小説家志望者には必読書だろう。たとえば、メタフォラとデフォルメの最たる「魔術的リアリズム」の手法が分かりやすく解説されている。机上に長らく「積ん読(つんどく)」していた本の中から目をつぶって選んだのが、この本だった。面白かった。

★著者は「ラ米で西語がみずみずしい生命力にあふれていた時代に生まれ合わせたラ米人作家たちが、失われていた物語を小説の中に甦えらせた」と指摘する。その時代はメキシコ革命(1910~17)、スペイン内戦(36~39)ボリビア革命(52)、キューバ革命(56~59)、ニカラグア革命(78~79)が連なった時代だった。

★大西洋の彼岸の旧宗主国スペインの血みどろの内戦は、ラ米知識人に強く深く影響を及ぼした。此岸のラ米革命は、よどんでいたラ米の風土を撹乱した。先住民族が状況の表面に躍り出してきた。

★もう一つの重要な要素は、北方の巨人・米国が帝国主義の力でラ米を絶えず呑みこもうとしていたことだ。革命をはじめとするラ米の動きは、米国の南下圧力に抵抗する力学から生まれている。米国をたじたじとさせたキューバ革命がラ米知識人に与えた衝撃は計り知れない。創作の強烈な刺激となった。

★幾つか気づいた点のなかの一つだけ挙げるが、1973年のチリ軍事クーデターを第8章では「革命」と書き、第10章では「クーデター」と書いていること。これはもちろんクーデターが正しい。さらなる重版の際に正しい方に統一すべきだろう。

2013年1月9日水曜日

「チャベス大統領は10日の宣誓式に出席しない」と発表


▼▼▼▼▼ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は、1月10日に国会で行なわれる予定の新任期就任宣誓式に出席しない。このことが公式に確認された。

▼ディオスダード・カベージョ国会議長が8日本会議で、ニコラース・マドゥーロ副大統領兼外相から同議長に宛てた書簡を読み上げる形で発表した。

▼書簡は、「医師団の勧告に基づき、術後の回復過程が10日以降となるため同日の就任式に臨むことはできない」と「大統領が報告するよう求めてきた」と記している。

▼副大統領は書簡で、「このため宣誓式は(憲法231条に基づき)将来的に最高裁判所で行なわれることになる」との解釈を付記している。

▼議長が書簡を読み終えたとたん、政権党議員たちは立ちあがり、手拍子とともに「司令官、前進を(パランテ、パランテ、コマンダンテ)」を何度も合唱した。野党議員たちは不快な面持ちで、野次を飛ばす者もいた。

★続いて本会議は、チャベスが回復に必要な期間キューバに滞在できるとする決議案を過半数の賛成で可決した。憲法235条は、大統領が国外に連続5日以上滞在する場合、国会の承認が必要と規定している。大統領は昨年12月9日、国会の全会一致の議決によってハバナ行きが承認された。今回は多数決で235条適用が承認された。
 

ベネズエラ野党連合が「チャベス一時的不在」を主張


▼▼▼ベネズエラ野党諸党がつくる「民主連合会議(MUD)」は1月8日、ウーゴ・チャベス大統領が10日の新任期就任宣誓式に出席できない場合、憲法が規定する「一時的不在」扱いにすべきだと主張した。

MUDは、米州諸国機構(OEA)のホセミゲル・インスルサ事務総長宛ての公開書簡で見解を明らかにした。

▼「10日に宣誓が行われず、一時的不在規定も適用されなければ、重大な違憲状態に陥る」と警告している。「一時的不在」の場合は、副大統領が大統領代行となる。

▼憲法は、「一時的不在」は90日間で、必要な場合さらに90日間延長できるが、180日が過ぎたら国会が「絶対的不在」状態にあるか否かを議決する、と規定している。「絶対的不在」となったら国会議長が暫定大統領となり、30日以内に新たな大統領選挙を実施しなければならなくなる。

MUDが現時点で「絶対的不在」でなく「一時的不在」論を持ち出したのは、昨年12月、手術・療養のためチャベスがハバナに行くことを、国会がMUD議員も含む全会一で承認しているからだ。さらに90日ないし180日以内に選挙必勝態勢を整えるという狙いもある。

2013年1月8日火曜日

なぜ「左から右へ転じたか」-興味深いペルー政治の分析


▼▽▼雑誌「ラテンアメリカレポート」(2012年)Vol29#2に、興味深い論文が載っている。村上勇介執筆の「ペルー左派政権はなぜ新自由主義路線をとるのか――<左から入って右に出る>政治力学の分析」である。

▼2期目のアラン・ガルシア政権と、オヤンタ・ウマーラ現政権を対象として分析している。ガルシアの場合は、1980年代後半の第1期政権は未熟ゆえに大失敗したため、その教訓で変身したのは疑いない。だが「変身しすぎた」と思う。これについてガルシア自身が理由について何か語っていたとすれば、ぜひ読みたいところだ。

▼ウマーラについては、「本人が大統領とはこうあるべきだ、という確乎たる理念を持っていなかったためではないか」との分析が面白い。守勢に回り、今や任期を全うするのが大目的になっている、という指摘がある。

▼大統領制のペルーでは、筆頭閣僚の首相がころころ代わる。しかし議院内閣制の日本の首相がころころ代わるほど異常ではない。

▼長文の論文で図解も入っており、直接読むのをお勧めする。

ゴーガンの『ノア・ノア』を半世紀ぶりに再読した


★☆★☆★ポール・ゴーガン(1848~1903)の『ノア・ノア』(岩波文庫)を半世紀ぶりに再読した。実に面白かった。1890年代に書かれたタヒチ島の紀行文だが、画家ならではの観察力は内面にまで及び、それが素晴らしい。

★内容は、タヒチ島のフランス文明に侵された姿、先住民の生活、原始の生活体験、幼な妻との愛、先住民族の信仰・天文学的知識・迷信・伝説、に分かれている。特に面白いのは先住民の生活と、自身の生活体験だ。

★「新鮮な、燃えるような色彩をもった風景は、私を盲目にした」、「不自然を避けて自然に入り込んでいった。今日の日が自由で美しいように、明日もまたこんなであろうと確信をもって」、「我々(文明人)は虚言家に騙されて、女性を繊細なものだと規定している。だがタヒチでは、女は男と同じ仕事をする。男は女に無頓着だ。だから女には男性的なところがあり、男には女性的なところがある。この両性の近似は。。。」。味わい深い言葉が頻繁に出てくる。

★「私は、数多(あまた)の夢を失った魂を持ち、肉体は数多の努力に疲れ果てて、道徳的にも精神的にも疲弊している社会の悪を長い間、運命的に受け継いできた、言わば老人である」。見事な老人の定義である。

★巻末の、訳者前川堅市による解説も興味深い。

★これを読むと、ゴーガンが欧州文明世界を捨て切れなかったことがよく分かる。

★「ノア・ノア」とは「芳香」、「好い香り」を意味する。

2013年1月6日日曜日

ベネズエラ国会議長に現職D・カベージョが再任


▼▼▼ベネズエラ国会は1月5日、議会執行部(5人、任期1年)の選挙を実施し、議長には現職のディオスダード・カベージョが再選された。国会議長は、ウーゴ・チャベス大統領が「絶対的不在」となった場合、暫定大統領に就任し、新たな大統領選挙を実施する重責を担う。

▼チャベス大統領から後継者に指名されているニコラース・マドゥーロ副大統領兼外相は同日、「大統領の新任期が10日始まるにせよ、チャベスは再戦されており、職務は継続されている。就任式は不要だ。宣誓式は形式主義にすぎない」と述べた。前日にも同様の発言をしている。

▼観測筋は、この発言にはカベージョの暫定大統領就任を阻止したいマドゥーロの意図が込められている、と分析している。ひとたび就任し、暫定期間が長期化すれば、事実上の大統領となり、マドゥーロの出番が無くなることにもなりかねない、と観るからだ。

▼カベージョは再任された後、「憲法規定に忠実であり続ける」と述べたが、これは暫定大統領就任の可能性を意識した発言と受け止められている。マドゥーロ、カベージョの両実力者の間で権力闘争が進行しつつあると観る向きが多い。

2013年1月5日土曜日

グアテマラのヘラルディ司教補暗殺事件の共犯が釈放さる


▼▼▼グアテマラ(GUA)最高裁決定により1月4日、フアン・ヘラルディ司教補暗殺事件の共犯マリオ・オランテス元司教補(48)が釈放された。20年の禁固刑に処せられ、12年10カ月服役した。

▼ヘラルディ司教補は1998年4月26日、首都GUA市中心街の勤務地サンセバスティアン教区の住居で撲殺された。オランテスは同僚だった。

▼ヘラルディは、GUA大司教区人権事務所を創設、運営し、1960~96年の内戦中の人道犯罪の調査報告書『歴史的記憶の回復-GUA2度と再び』を発表した。その2日後に暗殺された。

▼この報告書には5万4000件の事件が盛り込まれている。その90%は軍部および、その手先による犯行とされている。

▼主犯の元大佐バイロン・リマ=エストゥラーダ(78)は、やはり刑期途中の昨年6月釈放された。その息子の元大尉バイロン・リマ=オリバ(42)は服役中。

▼上官命令により直接手を下した元軍曹オブドゥリオ・ビジャヌエバは03年2月、刑務所内で起きた青少年暴力団「ロス・マラス」の暴動事件のさなか、斬首され殺された。そう報告されている。

▼一方、人権団体「相互支援集団(GAM)は4日、GUA政府が「膨大な賠償金支払いは不可能」として、米州司法裁判所(コスタ・リカ首都サンホセ)に対し、1987年以前に起きた人道犯罪を裁かないよう画策していることを非難した。

 

チャベスは10日宣誓しなくともよい、と副大統領語る


▼▼▼ベネズエラのニコラース・マドゥーロ副大統領は1月4日、ウーゴ・チャベス大統領の新任期就任問題について、エルネスト・ビジェーガス通信情報相と質疑応答する形式で所見を明らかにし、これを国営テレビVTVが伝えた。

▼マドゥーロは、「チャベス大統領は前任期から継続して大統領の任に当たる。国会が全会一致で、ハバナでの医療滞在を承認しているからだ」と指摘し、職位が1月10日に途切れないとの判断を示した。

▼そのうえで、「10日に国会で宣誓できなければ、しかるべき時に最高裁判所で宣誓できる」とし、憲法規定にある最高裁での宣誓には期日規定が無いとの解釈を示した。

▼新たな大統領選挙実施には「就任すべき大統領の絶対的不在」が条件となる。マドゥーロは、「それを宣言すべき要素はない」と否定し、「大統領の心身の状態は、最高裁が国会の承認を得て任命する医師団が判断する」と述べた。

▼マドゥーロは、「チャベス大統領は有権者の多数派の支持で再選されている。人民意思に立つボリバリアーナ憲法の本質を踏まえ、柔軟に対応しよう」と強調した。

▼副大統領はさらに、「野党は、国会およびカベージョ国会議長がチャベスに対しクーデターを決行するかのように語っている」と述べ、野党勢力を非難した。

▼【伊高解釈】マドゥーロがこのような形でカベージョの名に言及したことは、「カベージョの野心」を牽制する狙いがある、とも受け止めることができるだろう。

2013年1月4日金曜日

英国によるマルビーナス諸島奪取180周年に際し、亜英が応酬


▼▼▼英国が、亜国領だったマルビーナス諸島など南大西洋の3群島を奪取してから1月3日で180年が過ぎた。同諸島は、英国ではフォークランド(F)諸島と呼ばれる。

▼クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)大統領は同日付の英紙ガーディアンとインデペンデントに、デイヴィッド・キャメロン英首相宛ての公開書簡を意見広告として掲載した。

▼同書簡は、「亜国は180年前、英植民地主義によってロンドンから1万4000㎞離れたマルビーナス諸島などを奪われた。諸島領有権は亜国にある。1965年の国連決議に従って亜国との領有権交渉に応じるべきだ」と呼び掛けている。

▼これに対し、英首相は、F諸島住民が英国に留まりたいと意思表示している間は領有権が英国から動くことはない、と一蹴した。

▼また英国の大衆紙「サン」は4日付の亜国英語紙ブエノスアイレス・ヘラルドに、「亜国はF諸島から手を引いたままでおれ」と主張する意見広告を掲載した。

▼一方、1982年のマルビーナス戦争に出征した亜国軍退役軍人会は3日、ブエノスアイレスの英大使館に抗議書を提出した。 

思い出の「テネシーワルツ」=パティー・ペイジ死去に際して=


★☆★☆★正月の悲しいニュースの一つは、パティー・ペイジが元日に死去したことだ。あの「テネシーワルツ」を歌った素晴らしい歌手である。85歳だった。

★パティーは、私の最も好きな歌手の一人だった。彼女の明確な発音の英語歌詞は極めて聞き取りやすかった。彼女が歌う歌はすべて好きだった。

★40年も前のことだが、私はカントリー音楽の本山ナッシュビルに行った。「テネシーワルツ」は、既にテネシー州歌に指定されていた。

★私はカントリー酒場を何軒も梯子していたが、ある酒場の感じのいいバンドに「テネシーワルツ」を歌ってくれと頼んだ。当時は「シティー・オブ・ニューオーリンズ」という歌が大ヒット中で、ほとんどすべての客がこの同じ歌ばかりを注文していた。

★バンドの面々は私の注文に一瞬たじろいだ。日本の現代の若者のバンドに「湯の街エレジー」を歌ってくれと求めたようなものだったからだろう。

★だが、間もなく、「日本から来ているお客さんが我々の州歌を聴きたいそうなので、これから、あの歌を歌います」と言い、私を客たちに紹介してから歌ってくれた。

★パティーのソロの美性とは大きく異なる、本場カントリー調の和声とバンジョーやバイオリンの音色に彩られた歌だった。素晴らしかった。私はチップをはずんで、店を出た。

★江利チエミの歌う「テネシーワルツ」も良かったが、やはりパティーのが最高だった。

★パティーは去年9月引退し、米加州南部の療養施設に入っていたという。彼女は今後、数々の持ち歌が演奏され歌われるたびに甦ることになる。