2013年8月23日金曜日

チリのピノチェー旧軍政の化学兵器保有明るみに


 シリア内戦での化学兵器使用が問題化しているが、チリのピノチェー軍事独裁政権が化学兵器を保有していたことが、あらためて明らかになった。

 公共保健庁(ISP)のイングリッド・ハイトマン元長官は8月22日メディアに、長官だった2008年、同庁地下の部屋でボツリヌス毒素入りの容器の詰まった箱2箱を発見した、と語った。多数の人々を殺すのに十分な量だった、という。

 だが元長官は、自分の一存で廃棄処分にした。彼女は1973年9月の軍事クーデターの後、2度逮捕され拷問された。この悪夢から解放されるため、心理的治療を受けていたが、その関係で、「悪夢に繋がるもの」として、毒素の廃棄を部下に命じた、と説明している。

 当時は、ミチェル・バチェレー大統領の政権下だったが、元長官は同大統領にも知らせなかった。バチェレー前大統領(次期大統領候補)は今回初めて知り、驚愕したという。

 これまでの軍政による人道犯罪を裁く法廷で、「政治囚に対する科学兵器の実験」が証言されたことがある。だが具体的に存在が証言されたのは初めて。

 この毒素はブラジル・サンパウロ州の州立ブタンタン研究所が製造したもので、1981年にISPに搬入されていた、という。以来27年間、隠匿されていた。

 元長官は、現物を法廷に提出すれば決定的な証拠となる、ということについては、当時まったく考えが及ばなかったという。