2014年12月31日水曜日

惜別2014、懐かしい河原温さんの死

 今年亡くなった数多くの内外人の中で最も心に染みた死は、河原温のそれだった。2014年7月上旬、定住地ニューヨークで81歳で死去した。

 私はメヒコ市のモンテカルロというホテルで1967~68年、温さん、人形作りのひろ子さんの夫妻と知己になった。内庭を隔てた部屋に住む長期同宿の友だった。私はずっと年下だったが、ジャーナリズムをしていて、それなりの情報を持っていたこともあって、かわいがられた。

 温さんは毎日、黒い小さなキャンバスに白字でその日の日付を書く「日記」という作品をつくっていた。これが後に知った有名な「日付絵画」だった。

 その日、朝から夜まで会った人の名前を、会った順にタイプで縦に書き並べる仕事もしていて、夫妻の部屋にしばしばお邪魔していた私は何度も登場した。同じ日に3回訪ねれば、3回名前が記されるのだ。詩のように映った。

 温さんを「今夜はキャバレーで踊りや歌を楽しみましょう」と誘うと、約束の時刻に現れる温さんは、決まって背広、ネクタイで身を固めていた。それが温さんのスタイルだったのだ。

 夫妻はある日、南米に旅立った。68年に戻ってきて間もなく、荷物をたたんでニューヨークに去っていった。別れる日、彫刻のような作品をもらった。「彫刻ですね」と言うと、「いや、それは絵だよ」と言われてしまった。

 「ニューヨークにいらっしゃい。泊めてあげるよ」と言われたのが最後だった。その後、NYに何度か滞在したが、会う機会はなかった。

 ことし、チレ人でメヒコ在住の映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーが来日した。彼を私に紹介してくれたのは温さんだった。このほか、メヒコ人やメヒコ在住の諸外国の芸術家も紹介してもらった。

 私は67年6月に壁画家シケイロスにインタビューし、記事を書いていた。温さんは記事に興味を持ってくれた。47年間も会わず終いだったが、温さんは私の心に生き続けている。

ベネズエラが経済回復計画を打ち出す

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月30日、年末記者会見で、「経済回復計画」を発表した。半年、2年、4年の3段階に分けて経済を回復・拡大させていく。1月3日に計画は発足する。

 大統領は、2014年のインフレが年率64%で、GDPが2・3%縮小したことを明らかにした。

 計画によって、現在3通りある通貨ボリーバル(BF)の公的交換率を変える、新しい外為制度を設ける。政府は外貨防衛のため、2003年以来、交換率を管理してきた。

 食糧や薬品を輸入するための優遇交換率は1米d=6・3bfだが、「第4の交換率」闇市場では1d=150bfにも達している。

 大統領はインフレや国際原油価格低迷(30日相場は1b=47d)に対処しつつ、「新しい経済モデル」を構築する、と述べた。これは、歳出健全化のための補助金削減・廃止などの荒療治を将来的に伴う可能性がある。

 マドゥーロは会見で、米政府はベネスエラとロシアの弱体化を狙って石油輸出国機構(OPEC)を不安定化させようとしている、と非難した。

 ベネスエラは元日、国連安保理非常任理事国になる。安保理が、米国とのせめぎ合いの場となる。ベネスエラはまた、15年からから3年間、非同盟運動の議長国になる。したがって、「第3世界の立場を代表する理事国」として安保理に臨む。

2014年12月30日火曜日

世界最悪の殺人発生率はホンジュラス、次悪はベネズエラ

 NGO「ベネスエラ暴力監視所」(CVV)は12月29日、ことし世界最悪の殺人事件発生率は、10万中104人のオンドゥーラスが記録したと発表した。ベネスエラは次悪で、同82人だった。

 ベネスエラでは2013年に2万4763人が殺されたが、今年は2万4980人に増えた。ラ米・カリブではジャマイカが10万人中45人、エル・サルバドールとコロンビアが44人、ブラジル32人、メヒコ22人など。

 一方、メヒコ大司教区は29日、今年国内で司祭4人、教会従業員1人が殺されたと報告した。司祭はゲレロ州で3人、メヒコ州で1人が殺害された。従業員は運転手で、司祭の拉致を防ごうとして殺された。

 ゲレロ州で殺された司祭の一人は、ウガンダ人宣教師。

2014年12月29日月曜日

ラテンアメリカ2014年重要ニュース

◎ラテンアメリカ2014年重要ニュース


1月 元日クーバ革命55周年記念日、6日グアテマラ元独裁者エフライン・リオス=モント裁判無効決定、14日詩人フアン・ヘルマン死去、27日オンドゥーラス新政権発足、28~29日ハバナで第2回CELAC首脳会議。

2月 2日コスタ・リカとエル・サルバドールで大統領選挙、6日★ベネスエラで極右によるグアリンバ(街頭暴力事件)始まる。

3月 5日チャベス一周忌、9日★エル・サルバドール大統領選挙決選でFMLNのサルバドール・サンチェス当選、11日チレでミチェル・バチェレー大統領就任。

4月 6日コスタ・リカ大統領選挙決選、17日ガブリエル・ガルシア=マルケス死去。

5月 4日パナマ大統領選挙でフアン=カルロス・バレーラ当選、8日コスタ・リカ新大統領就任、25日コロンビア大統領選挙、25日EZLNの「マルコス副司令」引退。

6月 1日エル・サルバドール新大統領就任、15日コロンビア大統領選挙決選で現職フアン=マヌエル・サントスが逆転当選、19日エスパーニャ国王にフェリーペ6世即位、下旬アルヘンティーナ政権と米ハゲタカファンドの対決激化。

7月 1日パナマ新大統領就任、26~28日ベネスエラ統一社会党(PSUV)大会、月内露大統領、中国主席、日本首相がラ米歴訪。

 
8月 7日コロンビア大統領就任。

9月 26日★メヒコ農村教員学校生43人強制失踪事件。

10月 5日ブラジル大統領選挙、12日ボリビア大統領選挙で現職エボ・モラレス3選、26日★ブラジル大統領選挙決選で現職ヂウマ・ルセフ2選、26日ウルグアイ大統領選挙、エクアドール憲法裁判所が大統領無期限再選のための改憲案国会上程を可と判断。

11月 30日ウルグアイ大統領選挙決選でタバレー・バスケス前大統領当選。

12月 10日ブラジル国家真実委員会が大統領に軍政期人道犯罪の報告書提出、17日★★★米玖国交正常化合意発表、22日★ニカラグア横断運河建設着工。

☆★☆書き落としたニュースは後で追加します。惜別2014年末、伊高浩昭




 
   

バンドネオン奏者レオポルド・フェデリコ死去

 亜国タンゴ界の大御所でバンドネオン奏者のレオポルド・フェデリコ(87)が12月28日、ブエノスアイレスの医療施設で死去した。1927年1月12日ブエノスアイレスで生まれ、幼少時代からタンゴに親しみバンドネオンを弾き始めた。17歳でタンゴの舞台に出演した。

 以後、カルロス・ディサルリ、アストル・ピアソーラらのオルケスタに参加。1958年からは、自分のオルケスタ・ティピカ(標準編成バンド)を率いてきた。タンゴ曲の作曲家でもあった。

 1980年代末から90年代初めにかけ、日本人バンドネオン奏者、故米山義則を第二奏者に据え、会計担当も任せていた。演奏で日本にも来ていた。晩年は、演奏家協会の会長を務めていた。

 私が取材を通じブエノスイアレスと東京で付き合った最も親しいタンゲロだった。

2014年12月28日日曜日

「世界」がホンジュラスの青少年暴力組織マラスのルポ掲載

 中米「北の三角形」を構成するグアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラスでは、「マラス」と呼ばれる青年暴力結社が長らく幅を利かせている。彼らは、体中に刺青をするなど恐持てし、殺人をはじめ凶悪犯罪を厭わない。西北に隣接するメヒコにも根を張る。治安撹乱要因として、各国で麻薬マフィアとともに取締りの対象となってきた。

 この「マラス」をオンドゥーラスで取材したルポルタージュが、雑誌「世界」2015年1月号(岩波書店、発売中)に載っている。文・工藤律子、写真・篠田有史の、おなじみコンビの作。日本人が現地で「マラス」を取材し記事を書くことは、極めて稀だ。この点だけからも価値があるが、内容も豊かで、読む者は考えさせられる。つまり上質のルポである。

 極貧の日常に苦しみ病む青少年が「マラス」になるかならないかの分かれ目は何か。鍵は家庭・学校・社会の教育にある。当たり前のことだが、それがなかなか叶わないのが発展途上諸国だ。この記事には、元マラス要員、社会参加・復帰支援者らの生の声も綴られている。だから説得力がある。

 日本人は、中米というと「コスタ・リカ」とくる者が多い。経済人はパナマ運河拡張やニカラグア運河建設工事を気にする。だが、中米を暗く蝕んでいる深刻な社会問題にも目を向けてほしい。

 ラ米、とりわけ中米に関心のある人々や、メディア記者に、このルポを読むことをお勧めする。
 

2014年12月27日土曜日

メキシコの学生43人強制失踪事件が4カ月目に入る

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市で起きた教員養成学校生43人強制失踪事件は12月26日、発生後丸3カ月に至った。この日、家族や支援者はメヒコ市内の革命記念碑前で、政府に事件解明を求める集会を開いた。

 遺族は、事件解明までは選挙で投票しないことを決めた。43人は全員殺害された公算が大きい。うち一人の遺骨の身元が判明している。

 先のオスロでのノーベル平和賞授賞式に駆け込んで逮捕され送還されたメヒコ人大学生アダーン・コルテス=サラスは両親とともに集会に参加した。「私たちは43人の家族に連帯している。私が44人目になる可能性もあるが」と述べた。

 政府は19日、イグアラ市の隣のコクーラ市の市長セサル=ミゲル・ぺニャローサ=サンターナを拘禁し、取り調べている。コクーラ市警は、イグアラ市警が9月26日、学生たちを連行した際、協力した。

ベネズエラ外相が交代、大物ラミーレス氏が国連大使に

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月26日、ラファエル・ラミ-レス外相を国連駐在大使に、後任の外相にセルシー・ロドリゲス情報相(女性)をそれぞれ任命した。

 ベネスエラは15年元日から2年間、国連安保理非常任理事国になる。ホルヘ・アリアサ副大統領は26日、「ベネスエラは安保理で、社会正義と平和のために闘う南の人民の立場を代表する」と述べた。

 故チャベス大統領の側近だった大物ラミーレスの大使任命は時宜に適っていると見る向きがある一方、ラミーレスが石油相だった昨年7月打ち出した「ガソリン価格値上げと通貨交換率一本化」の方針を「忘れ去る」ためとの見方も出ている。

 いずれも実現が困難だからだ。特に来年9月の国会議員選挙を控え、広範な物価上昇を招くガソリン値上げは得策でないとの考えは、政府に根強く浸透している。

ニカラグア運河はパナマ運河の市場3割奪う、と予測

 パナマ運河庁(ACP)のホルヘ・キハーノ長官は12月26日記者会見し、このほど建設工事が始まったニカラグア運河について、「総工費は700億ドルに達する可能性がある。完成すれば、パナマ運河の市場を3割奪うことになろう」と指摘した。

 長官は続けて、「だからこそ我が方は新しいサービスを提供せねばならない」として、建設中の第3閘門式水路のカリブ海側出口コロサルに巨大なコンテナ港を建設することを明らかにした。総工費6億ドルで、工期18カ月。

 第3水路の工事は85%済んだ、とも明らかにした。長官はスエズ運河拡張工事にも触れ、「来年完了する。スエズ拡張でパナマ運河は市場を3%奪われる」と述べた。 

2014年12月26日金曜日

メキシコ人学生43人事件の家族らが抗議デモ

 メヒコ・ゲレロ州のアヨツィナパ農村教員養成学校の学生43人が9月下旬に強制失踪させられた事件で、家族と支援者の一団は12月24日、首都メヒコ市内の大統領公邸前で、学生生還を要求した。

 学生の父親の一人は、重大事件なのに大統領の関心は低いと、大統領の「感受性の乏しさ」を非難した。事件への対応の遅れや豪邸入手の醜聞から、エンリケ・ペニャ=ニエト大統領の辞任を求める世論が高まった。

 43人の学生のうち、一人の遺骨の身元が確認されている。43人全員が殺害された公算が大きい。

 家族らの一団は、ドイツ大使館前にもデモをかけた。ドイツの武器製造会社のG36自動ライフル銃が、学生を拉致したイグアラ市警に使用されていたためだ。ドイツ政府は2010年以降、メヒコへのこの種の武器の輸出は止めていると表明した。

 一方、ゲレロ州アルタミラーノ市のグレゴリオ・ロペス司祭は12月21日拉致されたが、同市近郊で25日、射殺体で発見された。

大麻合法化1年のウルグアイで個人とクラブが栽培

 ウルグアイでは2013年12月、大麻栽培・消費が合法化されたが、1年経った今、1200人の登録栽培者がいる。麻薬管理当局が12月24日明らかにした。会員45人までの「大麻栽培クルブ(クラブ)」は500ある。

 15年3月には、ホセ・ムヒーカ大統領の任期が切れ、タバレー・バスケス大統領(前大統領)が就任する。バスケスは現行の大麻政策を維持するもようだが、修正を加える可能性があると見られている。

 両氏ともに政権党「拡大戦線」(FA)に所属するが、バスケスの方が保守的だ。

ハイチ大統領が次期首相を任命

 アイチのミシェル・マルテリ大統領は12月25日、エヴァン・ポール氏を次期首相に任命した。就任には議会の承認が必要。だが与党は少数派で、すんなり承認されるかどうかわからない。

 野党勢力は24日、首都ポルトープランスで大統領辞任を求めるデモ行進をした。26日、28日、31日、1月1日にもデモをすることにしている。

 野党は14日、ローラン・ラモーテ首相の辞任を勝ち取っており、今や目標を「大統領辞任」一本に絞って攻勢をかけている。 

ブラジルで外国人医師1万4500人が勤務

 ブラジルでは、ルセフ政権の「マイス・メジコス」(もっと医師を!)政策に基づき、1万4462人の外国人医師が働いている。医師が不足していた3785市および、無医村に等しかった先住民共同体34カ所で勤務している。

 そのうち1万1429人はクーバ人医師。クーバ人医師団は2013年7月に為された契約によって導入された。

 政府は、クーバ人をはじめ外国人医師たちをさらに導入する方針。 

パラグアイで新たな諜報制度発足

 パラグアイで12月24日、新しい諜報機関を設置する「国家情報制度(SINAI)創設法」が公布された。SINAIには内務省、国防省、麻薬取締庁(SEAND)、資金洗浄防止庁(SPRELAD)が参加する。

 新設されるのは、国家情報会議(CNI)と、大統領直属の国家情報庁(SNI)。当面は、ゲリラ組織「パラグアイ人民軍」(EPP)対策が主要任務になるという。

2014年12月25日木曜日

アルゼンチン陸軍司令官に新たな容疑加わる

 アルヘンティーナ北部のトゥクマン州検察は12月24日、陸軍総司令官セサル・ミラーニ将軍を不正蓄財容疑などで取り調べるよう、法廷に要請した。

 ミラーニは、1976年3月クーデターで登場したビデーラ軍政下の同年6月、トゥクマン州内の基地に配属されていた徴兵新兵アルベルト・レドの強制失踪事件に関与した容疑で既に調査されている。

 同年7月初め、レドの母親が誕生日祝いに基地を訪ねたところ、息子が前月「行方不明」なっていたことを告げられた。母親は裁判所や人権団体に訴え、息子の捜索を始めた。

 陸軍は同7月末になって捜索を始めたが、レドは「作戦中の脱走」と発表された。当時、同基地に勤務していたミラーニは、レド失踪に関与した大尉と当時連絡を取り合っていた。

 将軍の疑惑は総司令官任命前に明らかになっていたが、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領は批判を押し切って任命した。このため、大統領の責任論も浮上している。

 ビデーラに始まる1976~83年の軍政時代に、亜国で3万2000人が殺害された。レドはその一人だ。

ニカラグア農民が運河建設に反対して道路封鎖

 ニカラグア警察は12月24日、パナメリカン道路を閉鎖していた農民300人を同日、警察機動隊が排除した際、市民6、警官15の計21人が負傷、警官1人は重傷、と発表した。農民らはニカラグア横断運河建設に反対している。工事で土地を奪われるからだ。

 警察によると、農民は銃、マチェテ(山刀)、投石で戦い、警官隊は催涙ガス、ゴム弾で制圧した。農民30人が逮捕された。

 現場は、首都マナグア南東260kmのリオサンフアン県エル・トゥーレ。全国で農民3万人が工事により土地を追われる模様。今後、各地で工事に反対する闘争が拡がる可能性がある。

ベネズエラの「経済戦争」は2015年も続く

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月24日、今年を振り返って、人民勢力が極右勢力による街頭暴力と
憎悪を抑え込んだ、と強調し、2015年も「経済戦争」が続く、と述べた。

 この国の経済は、経済の命綱である原油の国際価格が9月以降下がり続け、現在1b=50d台前半。かつての1b=100dの半分近くになった。来年の国家予算歳出は1b=60dで組まれている。インフレは60%に達し、庶民は生活苦を訴えている。国内総生産(GDP)は18%減ったとの見方がある。

 コロンビアなど国境を接する国々に一日10万bの原油が密輸で流出しているのも打撃だ。年間30億dの損出になる。政府は国軍を動員して、密輸を取り締まっている。

 通貨ボリーバル(bf)と米ドルとの交換率が3通りあるのも問題だ。食糧、薬品など必需重要物資を輸入するための優遇交換率は1d=6・3bf、SICADと呼ばれる第2の固定率は1d=11bf、第3の変動率は1d=約50bf。

 食糧などの輸入業者が優遇率で安くドルを買い、輸入せずにドルを国外の銀行に貯蓄するという不正が横行しており、一大問題になっている。この種の外貨不正流出は2000億dに及ぶとされる。政府は、15年前半に1d=30~40bfに一本化することを検討中。 

メキシコで学生の一団が略奪品を貧者に配る

 メヒコ・ゲレロ首都チルパンシンゴで12月24日、学生らの一団が、3時間に亘る食品輸送車略奪、商店強制提供などによって集めた菓子や清涼飲料剤を同市内の貧困地区で配った。学生らは、ナビダー(クリスマス)のパパ・ノエル(サンタクロース)役を担った。

 学生の一団の中心は、近郊にあるアヨツィナパ農村教師養成学校の学生。同校生43人は9月下旬、同州イグアラ市で警官らに連行され、行方不明になった。うち一人の遺骨は12月初め、43人のうちの一人のものであることが判明している。

 一方、同州教職員組合はチルパンシンゴ中心街にナビダーの木を立て、43人の写真を飾った。「43人が生還するまではナビダーも新年もない」と書かれた紙も取り付けられている。

2014年12月24日水曜日

ボリビアと米国が外交関係正常化で交渉開始

 ボリビアのダビー・チョケウアンカ外相は12月23日、米外交使節団がラパスに到着しており、大使級外交関係復活について話し合う、と発表した。ボリビア政府は今月11日、高級交渉開始を求めていた。

 エボ・モラレス大統領は2008年10月、米政府が政変を画策したとして米大使を追放し、翌11月には米麻薬捜査局(DEA)駐在官を国外退去させた。大統領は、同年9月の反政府暴動の背後で米政府が動いていたと指摘した。

 だが両国は2011年11月、外交関係正常化の枠組みで合意し、緊張関係を緩和させつつ、低級の話し合いを続けていた。

 外相は、モラレス大統領とバラク・オバーマ米大統領の首脳会談設定も話し合われており、最終的には首脳会議で正常化が決まる、と明らかにした。

2014年12月23日火曜日

米側の計らいでキューバ人元囚人の妻が妊娠

 スパイ罪で16年間米国で服役し12月17日クーバに帰還した元諜報機関員ヘラルド・エルナンデスの妻アドリアーナ(44)は1月初め女児を産む。なぜ彼女が妊娠できたのか、そこには人道的計らいがあった。

 エルナンデスは米国で1998年9月逮捕された「5人の英雄」(米国では「マイアミ・ファイヴ」)の代表格で、「終身刑2回および禁錮15年」という常軌を逸した実刑判決を受け、カリフォルニア州内の刑務所で服役していた。この判決は「ヘイトクライム」とも呼べるものだった。

 だが米玖国交正常化を願う米連邦議員が司法省に掛け合い、今年初め、エルナンデスの精液を妻に送ることに成功した。アドリアーナは人工授精で妊娠した。

 彼女は42歳だった2012年、「夫は長期刑に服役しており、私が母親になれないまま時が経つばかり」と、あるインタビューで述べた。これが米議員と司法省を動かした。

 同省は12月22日、仲介の労を取ったことを認めた。人工授精は、米玖交渉がカナダで極秘裏に展開されていたさなかに施された。クーバでは、エルナンデス夫妻があちこちで祝福されている。

★ニカラグア横断運河建設工事始まる

 ニカラグアの太平洋岸ブリート港とカリブ海岸のプンタゴルダ河口を結ぶ総延長278kmの「ニカラグア大運河」の着工式が12月22日、太平洋岸のりバスで行なわれた。モイーセス=オマール・アジェスレベンス副大統領、工事を請け負った香港HKNDの王靖(ワンジン)社長らが出席した。

 副大統領は、「大運河はニカラグアの歴史と地理だけでなく、経済を大きく変える」と述べた。王社長は「この日は歴史に刻まれる」と語った。

 運河建設は昨年6月に正式決定した。総工費は当初400億ドルと見積もられていたが、今では500億ドルとされている。ニカラグア政府とHKNDは、諸外国や国際金融界に融資を仰いでいる。

 運河は幅230m~520m。深さ30m。建設中のパナマ運河第3閘門式水路よりも規模が大きい。278kmのうち105kmは、太平洋岸に近いニカラグア湖(コシボルカ湖)を通過する。このため、湖の環境汚染が最大の問題となっている。

 工事は、運河建設地への接近路確保のため、自動車道建設、港湾整備、鉄筋・セメント製造工場などの建設から始まる。最終的には、運河両出入地の深海港、運河沿いの自動車道、空港、人造湖、観光複合体、自由貿易港などが建設される。

 運河開通時期は2020年代前半とされる。開通すれば、世界海洋貿易の5%を担うことになるという。工事はニカラグア人20万人に職を与えると期待されている。この国の経済成長率は4~5%だが、政府は、工事開始後の2015年は10%、16年は15%に膨らむと計算している。

 ニカラグア横断運河構想は19世紀初めからあったが、20世紀初めのパナマ運河建設に先を越された。ダニエル・オルテガ現大統領は、貧困脱出と、自ら歴史に名を残すことを願って、一大土木事業に挑んだ。

 だが、建設用地として土地を奪われる農民は激しく反発している。この日もリバス近郊で道路を封鎖し、タイヤを燃やして抗議した。環境団体も反対している。環境調査を請け負っている英ERM社は、調査結果を提出するが工事続行・停止などの助言はしない、と表明している。

 かつてオルテガと同志だった作家セルヒオ・ラミーレスは、「悲劇的な日だ。主権が大国に渡される」と嘆いた。首都マナグアでは、オルテガ主催の着工行事が催されることになている。

 パナマをはじめラ米諸国は、完成への懐疑心を抱きつつ、工事開始を見守っている。

2014年12月22日月曜日

ベネズエラ政府が欧州議会決議をはねつける

 ベネスエラ外務省は12月21日、欧州議会が18日採択した同国内政に関する決議を「内政干渉、主権侵害」としてはねつけた。同時に、欧州連合外交上級代表による同様の発言にも反駁した。

 欧州議会は、ベネスエラで今年2月始まったグアリンバ(街頭暴力)を教唆した罪で同国法廷で裁かれている右翼指導者の一人レオポルド・ロペス被告らの釈放を要求し、反政府勢力との対話を求めている。

 ベネスエラ政府は、オバーマ米政権および米議会と欧州連合、欧州議会が連携して圧力をかけていると見ている。

 欧州議会決議は賛成476、反対109、棄権49で可決された。
 

ハイチ暫定首相決まる

 アイチのミシェル・マルテリ大統領は12月21日、任期30日間の暫定首相にフローランス・ギヨーム保健相を任命した。次期首相は、その30日間に国会議決を経て決定する。

 同国では今月12日、野党勢力が大統領と、当時のローラン・ラモーテ首相の辞任を求めてデモを掛けた。デモ隊は警官隊と国連派遣部隊に解散させられたが、ラモーテ首相は14日辞任した。

 国会では野党が多数派であり、大統領は首相人事をめぐって野党との話し合いを続けている。 

2014年12月21日日曜日

キューバ議長が国会で社会主義堅持を強調

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は12月20日、人民権力全国会議(国会)の閉会演説で、「対米関係改善のためクーバは理想を捨てるべきだ、と企図してはならない」と述べ、社会主義の理想を堅持することを強調した。

 議長は、「我々は一度も米国に政治制度の変更を要求したことはない。米国は我々の政治制度を尊重すべきだ」と述べた。また、「米国はクーバが主権国家であることを理解すべきだ。クーバ人民は国民投票で社会主義憲法を承認し、社会主義の道を選んだ」と語った。

 さらに、「クーバはあらゆる問題を話し合う用意がある。それには米国の国内問題も含まれる」と言い、米国の人権や民主に問題があるのを懸念していると述べた。

 「解決すべき本質的な問題が残っている。それは経済・通商・金融封鎖だ」と指摘した。

 「対米国交再開は、(ベネスエラなど)地域の同盟諸国と関係を忘れることを意味しない」と述べ、一部にあるクーバ・ベネスエラ「分断工作説」を牽制した。

 ラウールは、今年のクーバ経済の成長率は1・4%だったと明らかにし、来年の目標として4%を挙げた。

米国は暴力扇動、とベネズエラ国防相が非難

 ベネスエラのブラディーミル・パドゥリーノ国防相は12月20日、「米国の内政干渉はベネスエラに暴力を再発させる狙いを持つ」と非難した。

 「内政干渉」とは、今年2~5月発生した街頭暴力事件を取り締まった政府高官への査証発給を禁止することなどを規定した米新法を指す。

 国防相は、「米国は非通常戦争を我々に仕掛けている。コロンビア国境地帯に居る準軍部隊は危険だ」と指摘した。また「国軍の士気は高い」とも述べた。

米軍侵攻25周年に際しパナマ政府が調査開始へ

 パナマは12月20日、米軍軍事侵攻25周年記念日を迎え、パナマ市内のエル・チョリージョ地区を中心に追悼行事が催された。米軍に殺害された市民らの遺族は中心街から、パナマ運河に近い同地区まで行進し、式典に臨んだ。黒服姿で歩くことから「黒い行進」と呼ばれる。同地区では米軍の爆撃で多数の市民が殺された。

 フアン=カルロス・バレーラ大統領は同地区に建立されている犠牲者追悼碑に花輪を捧げ、黙祷した。1990年の記念日以来、大統領が追悼行事に参列したのは初めて。

 米国のジョージ・ブッシュ(父)大統領は、「米国の秘密を知りすぎた男」マヌエル・ノリエガ将軍を米国に連行し、米国に都合の悪い機密資料などを破壊するため侵攻した。侵攻作戦には皮肉にも「正当な大義」と、正反対の名前が被せられた。

 これまでの大まかな調査では、侵攻で殺されたパナマ人は5000~8000人とされる。政府は正式に調査したことがなく、犠牲者数は依然不明。

 遺族会のトゥリニダー・アヨラ代表は、バレーラ大統領に、12月20日を「国喪の日」に指定すること、犠牲者・不明者数確定、米国への賠償・謝罪要求、記念館開設などを訴えた。

 大統領は調査委員会を設置し、アヨラ代表の要請のすべてを調査項目に含めると約束した。委員長には、イサベル・デサンマロ副大統領兼外相が就任する。

 ノリエガ将軍は1990年初め米軍によってマイアミに連行され、麻薬取引罪などで禁錮20年に処せされた後、フランスで2年間収監され、帰国後はパナマで暗殺命令罪などで長期刑に服している。 

2014年12月20日土曜日

LATINA誌「乱反射」はメキシコ学生43人強制失踪事件特集

◎最近の伊高浩昭執筆記事など

★共同通信12月18日配信、19日朝刊以降掲載;「識者評論-米玖国交正常化合意」

★毎日新聞19日付朝刊掲載;「米玖国交正常化合意に関する談話」

★TBSラジオ19日2200以降「セッション22」出演;「米玖国交正常化について」


☆月刊誌LATINA2015年1月号(12月20日刊)

「ラ米乱反射」連載第105回;「体制テロリズムが学生43人の<教員の夢>砕く  <死の政治>の頂点・大統領に世論が辞任を要求」(メヒコ情勢)

書評;『葉巻を片手に中南米』渡邊尚人著、山愛書院

☆そんりさ書評;『マエストラ山脈からサンティアゴデクーバへ-戦略的逆襲』フィデル・カストロ、クーバ国家評議会出版局 邦訳・明石書店

ベネズエラ経済は4%縮小か

 格付け会社の間で、ベネスエラ経済が今年4%減少し、来年も停滞する、との見通しが出ている。

 ベネスエラは、原油国際価格が1バレル=60米ドルとすると、年間170億ドルの減収となり、財政がその分苦しくなる。外貨保有高は214億ドルだが、その72%は黄金。

 対外債務は1500億ドルで、来年105億ドルの返済を迫られる。原油安が続けば、ベネスエラが来年、債務不履行に陥る可能性があると指摘する声もある。

オバーマ米大統領の新法署名にベネズエラ政府が反駁

 バラク・オバーマ米大統領は12月18日、米議会が10日可決したベネスエラ高官への査証発給停止、高官らの在米資産凍結を定めた新法に署名した。

 これに対し、ラファエル・ラミーレス外相は19日、ベネスエラはこの件を国際機関に諮ると述べ、ニコラース・マドゥーロ大統領がしかるべき措置をとる、と語った。

 マドゥーロは、米国はベネスエラに圧力をかけることで、変革を目指す地域の新機軸に影響を及ぼそうと企んでいる、とし、「米国は誤った進み方をしている」と批判した。

 大統領はまた、オバーマの新法署名と17日の米玖国交正常化合意は「相関関係にある」と指摘した。一方でクーバと仲直りすべく決断し、もう一方でベネスエラに内政干渉する両面戦略に出ている、と見ているわけだ。

 ベネスエラは2015年元日から2年間、国連安保理非常任理事国を務める。安保理の場で両国の論戦が展開されることになるだろう。

 米国がクーバとベネスエラの分断を図っているとの見方があるが、クーバはベネスエラ原油に深く依存しており、クーバ・ベネスエラ関係が米国に揺さぶられることはありそうもない。
 

キューバ国会が対米国交正常化合意支持を宣言

 クーバ人民権力全国会議(国会)は12月19日、ラウール・カストロ国家評議会議長が17日発表した対米関係正常化合意を支持する宣言を全会一致で可決した。

 同全国会議の幹部機関である国家評議会が最高意思を決定する。同評議会議長が国家元首。

 それぞれ旧ソ連のソビエト最高会議、最高会議幹部会に倣って1976年に発足した。

2014年12月19日金曜日

チレ政界でボリビアとの国交回復論議出る

 チレ政権党連合の中心政党の一つキリスト教民主党(PDC)のイグナシオ・ウォーカー党首は12月18日、エラルド・ムニョス外相に、国交が断絶して久しいボリビアとの外交関係を再開してはどうかと提案した。玖米両国が17日、国交正常化で合意したのを受けた発想だ。

 これに対し外相は、発案としては聞いておくが、外交は大統領の専権事項であるため提案としては受け入れられないと応じた。

 旧ボリビア軍政のウーゴ・バンセル大統領は、太平洋岸領土回復交渉がこじれたため1978年、当時のピノチェー・チレ軍政と
断交した。以来、領事・通商関係しかない。

 現在のモラレス・ボリビア政権は「海への出口奪回」を国策の前面に押し出し、国際司法裁判所に裁定を仰いでいる。

 ボリビアはペルーとともに、チレ相手に戦った1879年の太平洋戦争に敗れ、海岸領土を失った。今日のチレ・アントファガスタ州である。戦争を仕掛けたのは、錫採掘採掘条件をめぐるボリビアとの抗争を経て出兵したチレだった。

2014年12月18日木曜日

米キューバ国交正常化合意めぐりTBSラジオで語る

★お知らせ: 

 伊高浩昭は、クーバ・米国間の国交正常化合意について、12月 19日(金)2240ごろから、TBSラジオ「セッション22」で、荻上チキさんの質問に答える形で小一時間、話すことになっています。

 ご連絡まで。

ボリビアのメルコスール加盟は来年に延期

 南部共同市場(メルコスール)は12月17日、亜国エンテレリオス州都パラナー市で第47回首脳会議を開いた。協賛国ボリビアは当初、今会議で加盟が正式に認められるはずだったが、ブラジル、パラグアイ両国の国会がメルコスール条約の加盟条項修正を承認していないため、加盟は来年前半の次回首脳会議に持ち越された。

 会議は、クーバと米国の国交正常化合意を支持した。ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は「オバーマ米大統領の勇気」を讃えた。

 会議の声明は、米国のヘッジファンドの債権取り立て攻勢に遭っている亜国への支持、マルビーナス諸島領有権問題での亜国支持、米議会によるベネスエラへの「制裁」措置糾弾などを謳っている。

 メルコスール域内貿易は数年来下落傾向にあり、深刻な問題点として指摘された。ベネスエラ、ブラジル、アルゼンチンなど産油国にとり原油国際価格の下落が響いていることも指摘された。

 会議では、将来の「メルコスール市民」の資格確立も話し合われた。

 加盟5カ国の輪番制議長国は、亜国からブラジルに移った。亜国、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ベネスエラの5カ国大統領と、ボリビア大統領が出席した。

★★★キューバと米国が国交正常化で同時発表

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は12月17日、米国と外交関係を復活させることで合意した、と国営テレビ全国放送で発表した。

 ラウールは、クーバ人囚人3人と米国人囚人2人との交換実現に触れ、仲介したバティカン(ローマ法王庁)に謝意を表した。米国人囚人はアラン・グロスと、20年以上収監されていた元諜報機関員。クーバ人3人は16年間収監されていた。

 議長は、16日にバラク・オバーマ米大統領と電話会談したことを明らかにし、「人権、政治、主権などをめぐる両国間の隔たりは依然大きい」と述べた。

 その上で、「諸国は相互の違いを認めつつ文明的に共存すべきだ」とし、「国交正常化は国際法の原則に基づいてなされなければならない」と強調した。

 一方、オバーマ大統領も同時刻にワシントンで、米国人囚人2人と同クーバ人3人が交換釈放されたと発表し、仲介したバティカンと、米玖交渉の場を提供したカナダ政府に感謝した。クーバ側が「政治囚」釈放を約束したことも明らかにした。

 大統領は、「米国は過去半世紀の対玖関係上のくびきを打ち壊し、関係を正常化させる。過去と異なる結果を期待する」と述べ、経済封鎖を柱とする敵対政策が破綻したことを認めた。だが、封鎖を支持する強硬派もいる在米クーバ人亡命社会に対しては、「これまでの貢献に感謝する」と配慮を示した。

 オバーマは、外交関係樹立のためジョン・ケリー国務長官をはじめ高官らをハバナに派遣するとし、近くハバナに大使館を開く方針を明らかにした。

 クーバに関する米市民へのさまざまな規制を見直すこと、米玖間の旅行自由化、対玖貿易拡大を図っていく方針も打ち出した。米国人はクーバでクレジットカードを使えるようになり、クーバ政府は米国で市銀口座を開設できるようになる、とも述べた。

 経済封鎖については法制化されているものが多く、撤廃のため議会と折衝していくと語った。大統領も、ラウールが言ったように、両国の考え方の隔たりが依然大きいことを指摘した。

 オバーマは最後にスペイン語で、「トドス・ソモス・アメリカーノス」(我々は皆、米州人だ)と述べた。

  

キューバが米国人受刑囚を釈放

 クーバは12月17日、スパイ罪で禁錮刑に処していた米国人アラン・グロス(65)を人道的措置により釈放した。グロスは直ちに米政府機で米国に向かった。米政府も、これを確認した。

 ラウール・カストロ議長とバラク・オバーマ大統領は17日、同時刻に両国関係について相互に発表する、と伝えられる。

 クーバでは、1998年9月12日にスパイ罪で逮捕され禁錮刑に処せられた元クーバ諜報機関員5人のうち、既に釈放された2人を除く3人がグロスと引き換えに釈放される、との観測が高まっている。

 グロスは2009年12月4日、米国際開発局(USAID)の契約要員として電子通信機器などをクーバに持ち込み、逮捕された。スパイ罪で禁錮15年の実刑に処せられたが、健康不調により、このところはハバナの軍事病院に収容されていた。

 ラウールとオバーマは昨年12月、ネルソン・マンデーラ元南ア大統領の国葬の場で握手し、短い会話を交わした。来年4月パナマで開かれる第7回米州首脳会議には、ラウールがクーバ元首として初めて出席することが決まっている。

 玖米関係改善は、オバーマの課題だった。

2014年12月17日水曜日

ガルシア=マルケスが来年からコロンビア通貨に登場

 コロンビア国会は12月16日、作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(1927~2014)の肖像を通貨ペソの紙幣および硬貨に入れる法案を可決した。大統領の署名をもって発効し、1月施行される。

 GGMはノーベル文学賞作家で、今年4月、永住地のメヒコ市で死去した。

 コロンビアでは、GGMを「過去100年間で最も重要なコロンビア人」とする評価がなされている。

2014年12月16日火曜日

NYT紙が米政府にキューバ経済改革支援を呼び掛け

 ニューヨークタイムズ紙は12月15日論説で、オバーマ米政権に対し、クーバを「テロリズム支援国家」指定から外し、クーバの自営業者ら起業家を支援するよう呼び掛けた。

 同紙は、「従来の強硬政策は、経済改革に慎重なクーバの保守派の立場を強めることになるだけだ」とし、在米クーバ系市民のクーバ起業家への投資参加も求めた。

 また、クーバ通貨ペソの購買力は、ソ連が存続した1991年末までの購買力の28%しかないと指摘した。

 一方、サンティアゴデクーバにあるダメックス造船所は15日、ベネスエラ政府が発注していた多目的貨物船(4隻目)を同国に引き渡した。貨物積載量は740トン、コンテナならば42個積むことができる。

 同造船所は、ベネスエラ発注の巡視艇(2隻目)を建造中。

ベネズエラで「米帝国主義糾弾」の抗議行動

 カラカスで12月15日、「傲慢な米帝国主義による内政干渉」を糾弾する政府支持派数万人の抗議デモ行進と集会があった。公務員や政権党員らが参加した。

 これは米議会がこのほど、ベネスエラ政府高官40~50人への米査証発給禁止などを規定した法を「人権蹂躙」を理由に可決したことに対する反撃行動。この行動は、故ウーゴ・チャベス大統領が制定した現行のボリバリアーナ憲法が国民投票で承認された15周年記念日に合わせて実施された。バラク・オバーマ大統領は、まだ同法に署名していない。

 集会でニコラース・マドゥ-ロ大統領は、「米国に他国を制裁する道徳的資格はない」と論駁した。グアナタナモ米軍基地強制収容所での拷問事件、黒人を殺害した白人警官不起訴など米国の人権蹂躙状況を踏まえている。

 さらに大統領は「リビア、イラク、シリアを爆撃した人道犯罪者を戦犯として国際刑事法廷で裁くため、委員会を設置すべきだ」と前置きし、ディオスダード・カベージョ国会議長に、国会内に委員会を設置するよう要請した。

 マドゥーロは、イラク侵攻を命じたジョージ・ブッシュ元米大統領、ディック・チェイニー元副大統領、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官、および、ホセ=マリーア・アスナール元スペイン首相を被告候補に挙げている。アスナールは、スペインがイラク戦争に派兵した時の首相。

2014年12月15日月曜日

米州ボリバリアーナ同盟が結成10周年機に首脳会議

 米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)は12月14日、創設10周年記念日に合わせて第13回首脳会議をハバナで開き、創設者のフィデル・カストロ前クーバ国家評議会議長と故ウーゴ・チャベスVEN大統領の功績を讃えた。

 会議は43項目の宣言を採択して終了した。カリブ海のセントキッツネヴィス、グレナダ両国の加盟が認められた。これにより加盟国はクーバ、ベネスエラ、ボリビア、エクアドール、ニカラグアのラ米5カ国と、カリブ英連邦加盟6カ国の計11カ国となった。

 これにより、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、33カ国加盟)の3分の1がALBA加盟国となり、ALBAブロックの発言権は増す。

 会議にはクーバ議長(ラウール・カストロ)、ベネスエラ、ボリビア、ニカラグアの大統領、エクアドール副大統領、英連邦6カ国首相が出席した。

 宣言は、2015年に非同盟議長国となるベネスエラ祝福、ボリビアで15年開かれる「母なる大地のための世界社会運動」会議支援、ALBAとペトロカリーベ(カリブ石油連帯機構)による経済開発地域(ZED)設立促進を謳っている。

 また、米支配下にあるプエルト・リーコの「ラ米性とカリブ性」確認と植民地状態脱出および独立の希求支持、ベネスエラに内政干渉している米国糾弾、米国によるクーバ経済封鎖糾弾、亜国によるマルビーナス諸島領有権奪回の主張支持なども盛り込まれた。

 ALBAは2010年に域内決済単一制度(スクレ)を発効させたが、これにより貿易5657件(総額25億ドル)が米ドルなど外貨を介在させずに決済された。

 会議では、ベネスエラが提唱している、ALBA、ペトロカリーベ、南部共同市場(メルコスール)による経済圏結成についても話し合われた。国際原油価格は1バレル=60ドルと低迷しているが、これは議題としては取り上げられなかった。

 一方、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、同国のテレベン放送ニュース番組にハバナからビデオ参加し、野党勢力に対し新たな対話を呼び掛けた。だが、野党連合MUDに最高指導者がいないことや、MUDに「国益を第一とする意志が欠けていること」を指摘した。

ハイチのローラン・ラモーテ首相が辞任

 アイチ(ハイチ)のローラン・ラモーテ首相は12月14日辞任した。ミシェル・マルテリ大統領と同首相の辞任を要求する野党勢力の圧力が長らく続き国政が麻痺していたことから、首相は辞任を余儀なくだれた。

 マルテリ大統領は事態打開のため諮問委員会を設置していたが、同委は9日、首相辞任、政治囚釈放などを大統領に提示していた。

 首相は辞任に際し、極貧率を31%から24%に引き下げたこと、通学児童を88%に押し上げたこと、2010年の大震災被災者のうち140万人を収容所から自宅に戻したこと、地震で破壊された建物・公共施設・空港などを再建したこと、総延長700kmの道路建設計画に着手したこと、などを施政の成果として列挙した。

 大統領は11日、政治囚を解放している。野党が首相辞任を受けてどう対応するかが焦点となる。

2014年12月14日日曜日

来年の米州首脳会議にラウール・キューバ議長出席へ

 パナマのイサベル・サンマロ外相は12月13日、来年4月パナマで開かれる第7回米州首脳会議にクーバのラウール・カストロ国家評議会議長(国家元首)が出席すると明らかにした。

 この首脳会議は、米州諸国機構(OEA)加盟34カ国の会合だが、1962年に米国の圧力でOEAを追放されたクーバはこれまで参加する機会はなかった。あったとしても、OEAを「米国のラ米支配の道具」と見なしているクーバに出席する意図はなかった。

 ところが昨年12月、ネルソン・マンデーラ南ア元大統領の葬儀の場でバラク・オバーマ米大統領がラウール議長に歩み寄って握手したことや、パナマに進歩的なフアンカルロス・バレーラ大統領が7月1日就任したことで状況は変化し、バレーラ政権は「米州の冷戦を打破するため」クーバ議長に招待状を送っていた。

 一方、クーバ文化省は13日、米国際開発局(USAID)が在米クーバ系音楽家らを使ってクーバ不安定化工作をしようと企図していたことを糾弾した。米AP通信が11日、工作が存在していたことを暴露した。

 それによると、USAIDは興行会社を介在させ2008~12年、フロリダ州タンパ市に住むクーバ系ラッパー、アルド・ロドリゲスが率いる「ロス・アルデアーノス」などと契約したが、これにはクーバ不安定化の意図が隠されていた。

 アルドは、クーバ社会主義政権を厳しく批判してきた。だが、不安定化工作に加担する意志はない。

 USAIDは過去に、クーバにトゥッターのような「スンスネオ」を設置したり、ラ米諸国の青年たちをクーバに送り込んだりして不安定化工作を図ろうとして失敗していた。

 同機関は、コロンビア人歌手フアネス、クーバ人歌手シルビオ・ロドリゲスらにも触手を伸ばしていた、と伝えられる。

2014年12月13日土曜日

メキシコの学生43人拉致事件でFBIが捜査協力

 メヒコ検察庁のヘスース・ムリージョ長官は12月12日、テレビ放送「40チャネル」に対し、学生43人拉致事件の捜査を開始した10月上旬、政府は米連邦捜査局(FBI)に協力を依頼した、と明らかにした。FBI要員は以来、現在までメヒコで捜査に協力している、という。

 長官が捜査結果として以下を明らかにした。

 学生たちは事件当日の9月26日、所属するアヨツィナパ農村教員養成学校から東方10km前後の距離にあるゲレロ州都チルパンシンゴで、10月2日メヒコ市で行なわれるトラテロルコ虐殺46周年記念行事に参加するためのバス料金を募金する目的でバスに乗った。だが北方100kmのイグアラ市に連れて行かれ、当時の同市市長夫婦による政治集会を妨害するのに動員された。

 これによって学生はイグアラ市警と衝突した。学生は投石し、市警は銃撃で応じ、学生3人を含む6人の死者が出た。「学生たちをだましてイグアラ市に連れていった長髪の男」の行方を追っている。

 その後、43人の学生は麻薬組織の殺し屋に引き渡され、殺害された。イグアラ市と隣接するコクーラ市の市警も事件当日イグアラ市警に協力しており、コクーラ市長を取り調べ中。

 長官は、逃亡中の容疑者を逮捕し、その取り調べが済むまで捜査を続ける、と述べた。これまでに80人が逮捕されている。

社会主義キューバで100%外資の企業9社が営業

 ラウール・カストロ政権が市場原理を採り入れているクーバでは、100%外資の法人が9社営業している。貿易・外資省(MINCEX)高官が12月12日グランマ紙上で明らかにした。

 企業名は明らかにしていないが、進出分野はエネルギー(油田開発、発電)、鉱業、工業基盤など、という。

 このほか199社が外資とクーバの合弁企業として存続している。100%外資企業は、今年6月28日発効した新外資法で可能になった。

 外資100%企業と合弁会社を合わせた208社の42%は観光で、ホテル建設・運営、ゴルフ場建設などが中心。エネルギーと鉱業は合わせて13%を占める。

 出資国は西加伊ベネスエラ仏英など。建設、農業、食品加工などへの投資も目立つ。

 高官は、クーバ経済が年率5~7%の成長を達成するには、年間20~25億ドルの外資導入が必要、としている。

 政府は、ハバナ西方45kmのマリエル港地区に建設中のマリエル経済特区が完成すれば外資が増える、と期待している。この特区はシンガポール法人が運営することになっている。

2014年12月12日金曜日

グアテマラのリオス=モント裁判再審開始が成るか否か、関心高まる

 グアテマラでは、軍政期の軍人独裁者エフライン・リオス=モント退役将軍の大量虐殺事件の再審が来年1月5日始まることになっている。だが、司法の最高決定機関である憲法裁判所(CC)の最終判断が依然なく、予定通り再審が始まるかどうかわからない。

 CCは13年5月20日、法廷で直前に下された禁錮80年の実刑判決を無効とし、再審を命じた。だが、その再審が今、始まるかどうか危ぶまれているわけだ。

 リオス=モント軍政期に佐官だったオットーペレス=モリーナ現大統領らは、部隊指揮官として人道犯罪に深く関与した疑いがもたれている。

 再審となれば、新たな証言が出てくるのは必至だ。現大統領らに都合の悪いことも少なくないはずであり、この辺りに再審開始が不確かな理由があると見る向きも少なくない。

ニカラグアとベネズエラが衛星2個共同打ち上げで協定

 ニカラグアとベネスエラは12月11日マナグアで、地上監視衛星2個を共同で打ち上げる協定を結んだ。

 衛星は「ミランダ」と「シモン・ボリーバル」と名付けられている。地表、気象を監視し、また地震予知に役立てるという。

米議会がベネスエラ当局者「制裁」を決めるも、同国は一蹴

 米国議会(上院12月8日、下院10日)は、「人権蹂躙に関与したベネスエラ政府当局者たち」への査証発給を禁止し、その在米資産を凍結するという「制裁」法案を可決した。バラク・オバーマ大統領が署名すれば発効する。

 ベネスエラは、「制裁」を受けるいわれはないとの立場だ。ニコラース・マドゥーロ大統領は11日、
「米国は圧力をかける術がない。どんな圧力をかけてきても、殺人犯を獄中から解放することはない」と一蹴した。

 またベネスエラが盟主を務める「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)は11日、「米議会決定は内政干渉だ」と、米国を糾弾する声明を発表した。

 米国が「人権蹂躙」と形容しているのは、ことし2~5月、野党、右翼勢力、学生らが、米国やコロンビアの右翼勢力、内外メディアの支援を得て、ベネスエラ国内の野党市長のいる都市を中心に反政府街頭暴力事件を展開した際、当局が厳しく取り締まったことを指している。

 ベネスエラ政府は、「治安維持上、当然のことをしたまで」という立場だ。

 マドゥーロ大統領が言う「殺人犯」とは、死傷者多数が出た街頭暴力事件を、その初期の段階で教唆したとして起訴され裁判にかけられている、野党「武闘派」指導者格のレオポルド・ロペス被告らを指す。 

フィデル・カストロ前議長が「孔子平和賞」を受賞

 クーバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(88)が第5回孔子平和賞を12月9日受賞したことが、11日明らかにされた。

 この賞は、ノーベル平和賞に対抗する賞として中国で2010年に創設され、賞状、賞金、孔子像が贈られる。

 フィデルは、米国から敵対行為を受けながら「平和裏に対応した」ことなどが評価された。

 これまでにプーチン露大統領、アナン元国連事務総長らが受賞している。

 フィデルは、朴韓国大統領、パン国連事務総長を含む20人の候補の中から選ばれた。

 フィデルはクーバ革命の最高指導者で、革命軍最高司令官、共産党第1書記、国家評議会議長(元首)、閣僚評議会議長(首相)の実務を2006年7月、病気で倒れるまで担った。

 現在は実弟ラウール・カストロが議長を務め、フィデルは「革命の指導者」の敬称を持つ。

ブラジル真実委員会が「恩赦法」廃止を政府に要請

 ブラジルの国家真実委員会(CNV)は12月10日、軍政時代の人道犯罪に関する報告書をヂウマ・ルセフ大統領に提出した際、人道犯罪追及の障害となっている恩赦法を無効とするよう大統領に要請した。

 CNVは併せて、首都ブラジリアに「記憶博物館」を建設すること、行方不明者の遺骨を探し続けること、軍部の内部文書の公開を要請した。

2014年12月11日木曜日

グリーンピースがナスカ地上絵地域に侵入し大問題に

 環境活動団体グリーンピースの若者すくなくとも12人が12月8日、ペルー・ナスカの地上絵のある地域に侵入し、「変化すべき時」など文字を象った布のような物を並べた。

 折からリマで開かれているCOP20会議の参加者やマスメディアに注目させるためだったようだ。

 場所は、地上絵の中でも最需要の「ハチドリ」のすぐ近く。現地で被害状況を調査した文化省は驚愕し9日、検察庁に告発した。

 検察庁は、「修復不能な害」が及んでいると表明した。ペルー政府はグリーンピース側の謝罪を拒否し、法的措置を取る構えだ。活動家のうちの外国人は出国を禁止されるもよう。

 ナスカ地上絵は、世界遺産に指定されている。

国際アムネスティがメヒコ検察に43人事件への政府関与捜査を要請

 アムネスティ・インターナショナル(AI)は12月10日、メヒコ検察庁に12万人の署名を渡し、学生43人拉致事件をはじめ、2万2000人の強制失踪者の捜査を徹底的に行なうよう要請した。

 AIは特に、43人事件への政府の関与について捜査すべきだと述べた。

 署名はメヒコ、ウルグアイ、チレ、カナダ、米国、スペイン、イタリア、ベルギーで集められた。

 一方、10日オスロで催されたノーベル平和賞授賞式の場に、メヒコ人の若者が駆け込んで、「メヒコを忘れないで」と、受賞者のマララさんに話しかけた。

 若者は、一部に血の付いた大きなメヒコ国旗を持っていた。

 メヒコ国立自治大学(UNAM)の学生アダーン・コルテス=サラス君(19)と判明した。

在米キューバ代表部が領事業務継続と発表

 ワシントンのクーバ利益代表部は12月10日、来年3月末まで、領事部業務を継続すると明らかにした。

 米国による金融封鎖で、領事部の口座を新たに受け入れる米市銀がなく、それまでの取引銀行は今年2月14日、取引を停止した。

 同利益代表部は、取引銀行は依然決まっていないが、領事業務は3月まで続けると述べた。

 利益代表部は、国交のない国同士が大使館の代わりに設置するもので、ハバナには米利益代表部がある。

ブラジル真実委員会が軍政期の人道犯罪で報告書提出

 ブラジルの国家真実委員会(CNV)は12月10日、軍政時代の人道犯罪に関する最終報告書を政府に提出した。

 報告書は4328ページ。1964~85年の軍政期には434人が殺害、強制失踪の被害者となった。うち210人は不明のまま、190人は殺害され、33人は他殺体として発見された。

 拷問、殺害など犯罪の直接の責任者は軍、警察、民間人ら計377人。カステロ=ブランコ、コスタ=イ=シルヴァ、ガラスタズ=メヂチ、ガイゼル、フィゲイレドの5人の将軍大統領も含まれている。

 軍政期の1979年に恩赦法が成立し、責任者は処罰されない。それゆえに犯罪加担者もCNVで証言した。

 弁護士会は2010年、恩赦法は違憲として訴えた。だが最高裁は合憲と判断した。

 犯罪責任者、被害者の特定は、公式文書、当事者証言に基づいて行なわれ、伝聞や状況証拠は排除された。責任者と被害者の実名が報告書に盛り込まれている。

 ヂウマ・ルセフ現大統領は2012年5月CNVを設置した。大統領は若い日にゲリラ組織に参加し捕えられて拷問された被害者。

 ルセフは報告書について10日演説したが、「被害者」という言葉を使った際、感極まって声が詰まった。聴衆全員が起立して拍手し、大統領を励ました。

アルゼンチンもキューバ人医師団受け入れへ

 アルヘンティーナのエル・チャコ、ラ・パンパ両州は、クーバ人医師団を長期間、診療のため雇うことを決めた。それぞれの州都を離れた内陸部で医師が不足しているため。

 クーバ政府は、医師団派遣の見返りとして、小麦、牛肉、香辛料、原材料などの現物を受け取る。また医師の月給は3400ユーロになるもよう。

 これに対し両州の医師会から異議が出ている。両州では医師の月給が多くて1900ユーロ程度だからだ。

 医師会は、州内の僻地に医師が行きたがらないとの批判に対し、診療環境が劣悪のためであり、環境が改善されれば行く、と釈明している。

 クーバ人医師団はベネスエラ、ブラジルなどラ米諸国で勤務している。

2014年12月10日水曜日

イベロアメリカ首脳会議とカリコム・キューバ首脳会議終わる

 ベラクルスでの第24回イベロアメリカ首脳会議は12月9日、「変化過程にある世界における教育・刷新・文化」と題した文書を採択して閉会した。

 一方ハバナで8日開かれた第5回カリコム(カリブ共同体)・クーバ首脳会議は、経済・通商関係強化、保健・教育・気候変動問題での協力、域内統合努力強化を謳った文書を採択して終了した。

イベロアメリカ首脳会議開催、6カ国首脳欠席

 メヒコのベラクルスで12月8日、第24回イベロアメリカ首脳会議が開会した。日程は9日までの2日間。

 ラ米20ヵ国中、ハイチを除く19カ国と、イベリア半島のスペイン、ポルトガル、アンドーラの3国、合わせて22カ国が加盟している。

 だがブラジル、アルヘンティーナ、ベネスエラ、ボリビア、ニカラグア、クーバの6カ国首脳は欠席した。メヒコ社会を揺さぶっている学生43人拉致事件が首脳会議に影を落とし、左翼、中道左翼の首脳を遠ざけたのは疑いない。

 またエル・サルバドールのサルバドール・サンチェス大統領は出席したが、体調不良のため帰国した。

2014年12月8日月曜日

メキシコ検察庁が学生一人の遺骨の身元判明と発表

 メヒコ検察庁のヘスース・ムリージョ長官は12月7日、43学生拉致事件の被害者の一人の遺骨が特定された、と発表した。

 アレクサンデル・モラ君(19)。オーストリアのインスブルック大学法医学研究所が12月4日、DNA鑑定の結果、判断した。

 父親のエセキエル・モラさんは、「大統領が正義を施さなければ、反市民行動に同意していると見なす。我々農民は抗議できない。すれば拷問され殺される。政府は市民を守らない。腐敗した犯罪政府だ」と、大統領と政府を厳しく批判した。

 エンリケ・ペニャ=ニエト大統領に対しては、辞任を要求する声が市民の間で高まっている。

 一方、メヒコ湾岸のベラクルスで8、9両日、第24回イベロアメリカ首脳会議が開かれる。ハイチを除くラ米19カ国と、スぺイン、ポルトガル、アンドーラの計22か国が加盟しているが、首脳陣がどれだけ来訪するかに関心が集まっている。

 数が少なければ、学生事件の影響と見なされる。

グアンタナモ米基地収容所から解放された6人がウルグアイ到着

 クーバ島東部のグアンタナモ米海軍基地に収容されていたアラブ人6人が12月7日、モンテビデオに到着した。6人は直ちに病院で健康診断を受けた。

 6人は、シリア人4人、チュニジア人とパレスティーナ人各一人。

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は、「6人は政治亡命者として迎え入れた。国内を自由に移動できる。ウルグアイ定住を強制しない」と語っている。

 グアンタナモ基地は、米国が1898年以後、事実上の占領地として使用してきた。クーバは返還を要求している。この基地の問題の本質は、収容所閉鎖の是非ではなく、クーバへの返還が成るか否かだ。

2014年12月7日日曜日

政治は職業でなく献身だ-ムヒーカ・ウルグアイ大統領語る

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は12月6日、メヒコ中西部のハリスコ州都グアダラハーラにあるグアダラハーラ大学で講演した。「政治は職業でなく献身だ。金(かね)のために政治をしてはならない」と強調し、喝采を浴びた。

 大統領は、「私はウルグアイ人民が生きるために必要としているもの以上は必要としない」と述べた。

 さらに、「富裕層がより多く支払う税制改革、公務員給与の引き下げ、労働者への尊厳ある労働提供が必要だ」と語った。

 講演後の記者会見で、先に学生43人拉致事件の解決が遅れているメヒコ政府について「失敗国家ではないか」と語ったことについて訊かれると、「思っていたことを言ったまでだ。これはラ米全体の問題でもある」と答えた。

 ムヒーカは7日には、グアダラハーラ書籍見本市で対談する。8、9両日はベラクルスでのイベロアメリカ首脳会議に出席する。

メキシコ不明43学生の一人の身元が判明

 メヒコ政府当局者は12月6日、拉致され行方不明になっている学生43人のうちの一人の遺体の身元が確認された、と明らかにした。検察庁は7日記者会見し、正式に発表する。

 政府は、オーストリアのインスブルック大学法医学研究所に遺骨のDNA鑑定を委託していた。同研究所は5日、メヒコ政府および、メヒコに派遣されているアルへンティーナ法医学調査団に報告した。亜国調査団は同日夜、遺骨の身元が判明した学生アレクサンデル・モラ(19)の遺族に事実を伝えた。

 拉致事件は9月26日、ゲレロ州イグアラ市で発生した。同市で募金活動をし約100km南方のアヨツィナパ農村教師養成学校にバスで帰ろうとしていた学生約80人をイグアラ市警と近隣のコクーラ市警の警官隊が襲撃、3人を殺害、二十数人に重軽傷を負わせた。43人を拘禁し、身柄を地元の麻薬マフィアに引き渡した。

 マフィアはコクーラのゴミ捨て場で43人を殺害し、遺体を燃やしてから袋詰めにし、近くの川やごみの中に投棄していた。

 学生一人の身元が判明したことで、事態は重大局面に入った。「全員生還」とエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領辞任を求める抗議行動が全国各地で続いているが、5~6日、首都メヒコ市では4000人の農民が騎馬やトラクター43台を連ねて抗議行進した。

 これはメヒコ革命(1910~17)で活躍したエミリアーノ・サパタ、パンチョ・ビーヤらの農民軍に倣っている。「貧農派革命」の潮流は今も、農村部に流れている。事件犠牲者が農村教員を志す学生だったため、連帯している。

 一方、ベラクルスでは8~9両日、第24回イベロアメリカ首脳会議(23カ国加盟)が開かれる。メヒコ政府は、学生事件が会議に影響することはない、と6日表明した。

2014年12月6日土曜日

キト郊外に南米諸国連合の本部開く

 南米諸国連合(ウナスール)首脳陣は12月5日、キト郊外の赤道碑のある「世界の中央」(ミタ・デル・ムンド)で、新設されたウナスール本部建物の開場式に臨んだ。

 本部には、ウナスール結成に貢献し初代事務局長を務めた故ネストル・キルチネル亜国大統領の名前が付けられている。夫人のクリスティーナ・フェルナンデス現大統領が、本部前に建てられたキルチネルの銅像の除幕式を行なった。

 4日グアヤキルで始まった今首脳会議は、「いつの日か域内を自由通行できる南米市民を創る」ことなどを盛り込んだ最終宣言を採択して終了した。

 ウナスールは08年の結成から6年を経た今年、非合憲政権の加盟資格を停止させる「民主条項」が発効した。本部ができ、「南米市民」構想を打ち出したことで、新しい一歩を踏み出した。

 会議にはメヒコのホセアントニオ・メアデ外相が招待出席し、今月8~9日ベラクルスで開かれるイベロアメリカ首脳会議へのウナスール首脳陣の出席をあらためて要請した。

 一方、米国務省は5日、来年4月パナマで開かれる第7回米州首脳会議にクーバが出席することについて、「それによっても会議の信頼性は変わらない」と表明した。同省は、バラク・オバーマ大統領が同会議に出席するか否かは明らかにしていない。

2014年12月5日金曜日

フォークランド戦争期にキューバが亜国に潜水艦派遣を提案か

 亜英マルビーナス(フォークランド)戦争(1982・4・2・~6・14)の開戦後間もない82年4月10日、亜国駐在クーバ大使は、亜国軍政のレオポルド・ガルティエリ大統領に会い、英艦撃沈のため潜水艦一隻を戦域に派遣する用意があるとの、フィデル・カストロ玖議長(当時)の意思を伝えた。

 ガルティエリは、謝意を表しながらも玖潜水艦の参戦を受け入れれば国際的な大問題となることを認識しており、断った。

 これは、メネム亜国政権(1989~99)期の諜報機関SIの長官だったフアン=バウティスタ・ショフレ氏が12月2日公表した。

エクアドールで南米諸国連合首脳会議開く

 南米諸国連合(ウナスール)は12月4日、エクアドールのグアヤキルで臨時首脳会議を開いた。会議議長のラファエル・コレア大統領は開会演説で、「これまで連合はあまり機能してこなかったが、それは統合を望まない域内外の勢力の意思を代表する拒否権があるからだ」と指摘し、全会一致による決議方法を改め、多数決とするよう提案した。

 コレアはまた、ネストル・キルチネル元亜国大統領とウーゴ・チャベス前ベネスエラ大統領の死は打撃だっと述べ、「加盟国はイデオロギーの違いを超えて統合に向かうべきだ」と強調した。

 事務局長のエルネスト・サンペル元コロンビア大統領は、「南米市民」の概念を確立することで合意がなされた、と発表した。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、「南米の意識を軍人に植え付けるため軍人を南米で教育する制度を創設すべきだ」と提案した。従来、米国で教育される場合がほとんどで、米国の意思によりクーデターを演じる軍幹部が多かった。

 首脳会議は5日首都キトに場所を移し、北15km郊外の赤道記念碑のある「世界の中央」に建てられたウナスール本部の開場式に臨む。本部は総工費4350万ドルで建てられた。

 ウナスールの輪番制議長国はスリナムからウルグアイに移った。議長になったホセ・ムヒーカ大統領は来年3月1日、タバレー・バスケス(次期大統領)と交代する。

2014年12月3日水曜日

ハバナで12月8日、第5回カリコム・キューバ首脳会議開催へ

 クーバ外務省は12月2日、ハバナで8日、第5回カリコム・クーバ首脳会議を開くと発表した。

 カリコム(カリブ共同体)諸国の多くは、革命後のクーバが実現した平等主義的発展や社会福祉に学んできた。

ピノチェー独裁時代は遠く、陸軍勲章名が変更さる

 チリ国防省は12月1日、陸軍が授与する最高勲章の名称を、従来の「アウグスト・ピノチェー大将・陸軍最高司令官章」から、「陸軍最高司令官章」に名称を変更した。

 独裁者だったピノチェーは、自ら「カピタン・ヘネラル(大将)」位を新設し、そこに<昇進>した。勲章に自分の名を刻み込んでいた。

 ピノチェー2006年12月に死去。8年経ったいま、ようやく、お手盛り昇進独裁者の名が勲章から排除されたわけだ。

2014年12月2日火曜日

メキシコ各地で大統領辞任要求デモ

 メヒコ大統領エンリケ・ペニャ=ニエト就任2周年の12月1日、全国60都市で大統領辞任を求める抗議デモが行なわれた。9月26日発生した師範学校生43人の強制失踪事件の真相をいまだに解明する気のない大統領は施政3年目に入る日に、無能の烙印をあらためて押され、窮地に陥っている。

 EPN大統領支持率は39%に落ちた。失踪事件が発生したゲレロ州イグアラ市を3日訪ねる予定だったが、急遽中止した。

 首都メヒコ市での抗議行動は、大統領政庁のある憲法広場(ソカロ)からレフォルマ大通りの独立記念碑まで5000人が行進した。抗議行動の終わるころ、覆面をした約50人が銀行の現金引き出し所、商店などを破壊し、略奪した。覆面組には、平和デモを貶めるため、当局の回し者が入っている場合が多い。

 43人事件は、メヒコの政界、財界、麻薬組織が一体化した「国家の犯罪」と受け止められており、国際社会の関心も集めている。政府は地方警察や麻薬組織による「よくある」拉致・殺害事件として片付けようとしたが、学生の家族が立ち上がり、支援が内外に拡がって、政府は動きが取れなくなっている。

 真相に迫れば、政権基盤がぐらつくとの見方もある。EPNはメヒコ州知事時代や、大統領候補としての選挙運動期間中に腐敗、不正、暴力がつきまとっていた。最近は、7億円とされる豪邸を、高速鉄道建設工事を落札した企業集団関係者から建ててもらうという癒着が暴露された。

2014年12月1日月曜日

ウルグアイ次期大統領はタバレー・バスケス

 ウルグアイで11月30日実施された大統領選挙決選で、政権党・拡大戦線(FA)のタバレー・バスケス候補(前大統領)が当確となった。相手の国民党候補ルイス・ラカージェ候補も敗北を認めた。
 
 これでバスケス-ホセ・ムヒーカ現大統領ーバスケスと、2代・連続3期のFA政権(計15年)が続くことになった。