2015年12月17日木曜日

キューバ米正常化合意1周年、民間航空機乗り入れで合意

 玖米両国首脳が国交正常化合意を発表してから12月17日で1年経つ。この日、民間航空機の相互乗り入れを決める民間航空協定交渉の妥結が発表された。またバラク・オバーマ米大統領は、米議会に対し対玖経済封鎖解除をあらためて要請した。2月から断続的に続けられていた両国間の水路交渉も17日、ワシントンで終了した。

 玖外務省は17日、1周年に際し声明を発表したが、内容は、対米交渉を執り仕切ってきたクーバ外務省のフォセフィーナ・ビダル米国局長が16日、過去1年を振り返って発表した談話とほぼ同じだった。

 局長は、両国間の民間航空協定交渉に重要な進展があったと明かし、環境保護、海域保護、調節郵便制度などの合意に続く成果となる、と述べた。

 だが、米ドルによる対外決済、米民間金融機関接近、往復通商関係などは依然クーバに認められていない、と指摘した。局長は、オバーマ大統領の権限には限界があり、対玖経済封鎖解除などは米議会の決定次第であると認識していることをあらためて表明した。

 封鎖解除のほか、110年以上も米軍占領下にあるグアンタナモ基地の返還、対玖破壊活動防止、不法移民を促す「クーバ調整法」などの重要問題の解決には進展がない、と局長は強調した。

 オバーマ政権は9月、対敵通商法の対玖適用延長を決め、10月には国連総会での経済封鎖解除決議にイスラエルとともに反対した。

 同法の及ぼす影響については15日ハバナで、ラウール・カストロ議長と、米国渡航を求めるクーバ人6000人を抱えるコスタ・リカのルイス・ソリース大統領が協議した。過去1年間にクーバ人4万5000人が渡米の可能性を求めて密出国している。

 ビダル局長はまた、この1年は人権問題などで双方の立場の隔たりが鮮明になった時期だった、と述べた。だが大使館再開、首脳会談、外相・高官会談、米議員来訪、グアンタナモ基地境界での両国軍人同士の交流維持などの成果があった、と認めた。

 オバーマ大統領が2016年内の訪玖計画を打ち出していることについては、歓迎するが内政干渉は受け入れない、と強調。「節度ある共存」関係を樹立するのがクーバの目的だと述べた。

 米議会下院では16日、共和・民主両党議員が、対玖関係に対応する作業部会を結成した。局長は、これをも進展として評価した。

 一方、米国務省当局者は17日、通貨一本化、民間企業による直接雇用制度確立、政治・社会・経済の活動自由化促進をクーバに求めた。民間部門支援や人民同士の関係強化への関心も表明した。クーバ人の雇用は、国営斡旋会社を通じて行われてきた。

 民間航空協定合意により、これまで両国間でチャーター便を運航してきたアメリカン、ウナイテッド、ブルージェットなど各社は定期便運航に関心を示している。

 だが米国人一般旅行者の自由訪玖が解禁されていないこと、クーバの観光客大量受け入れ態勢が整っていないこと、出入国管理上の問題などから、定期便運航が急速に進むとは受け止められていない。

 クーバは、在米クーバ人30万人の帰国を禁止している。またクーバ航空機は米国で接収される恐れがあるため、乗り入れに踏み切れない。因みに、外国人訪玖観光者は今年前半230万人で、前年比30万人増。

 米ドルにありつけないクーバ庶民の生活は依然、楽ではない。だがテマス誌のラファエル・エルナンデス編集長は、「玖米関係は大きく変わった。長らく敵対関係をとっていた米国が政策を一変させ、相違点を対話で解決するようになったからだ」と指摘している。

 スペインはパリクラブ決定の一環として、対玖債権のうち18億8000万ドルをこのほど帳消しにした。