2016年1月3日日曜日

メキシコで元日就任した女性市長が殺害さる

 メヒコ・モレロス州テミスコ市の女性市長が1月2日、暗殺された。元日に就任したばかりだった。殺されたのはヒセラ・モタ=オカンポ市長(33)で、民主革命党(PRD)所属ながら、同党から分派した国民刷新運動(MORENA)に近かった。

 市長は自宅を急襲され、他の2人と共に殺害された。警察が逃亡していた犯人一味の車を遮断、銃撃戦で2人を射殺、他の3人を逮捕した。

 事件の背景には、PRD所属のグラコ・ラミーレス州知事と、州都クエルナバカのクアウテモク・ブランコ市長との確執がある。連邦政府は市警を州警の下で一本化する政策を進めており、モレロス州政府も一本化を進めてきたが、クエルナバカなど十数市は反対してきた。

 またモレロス州は、州内に根を張る麻薬マフィアの存在などから凶悪事件が絶えず、昨年の殺人事件発生率はゲレーロ、シナロア、チアパスに次ぎ4位だった。マフィアの殺し屋が市長殺害に関与した可能性も排除されていない。

 知事は元日、治安維持作戦「デルタ」を開始したが、これをめぐり州警察と州都警察の間に対立があったとされる。テミスコ市は州都近郊にあり、州都圏の一部を構成している。

 殺されたモタ市長はPRDの役職を歴任、2012~15年には連邦下院議員を務め、若手指導者として将来を嘱望されていた。市長候補を決める党内予備選挙で州知事の推す候補を破り、市長選に臨んだ。

 事件と、PRDおよびMORENAの反目を関連付ける指摘もある。MORENAの党首アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)は過去2回大統領選挙に出馬し、一度目は不正開票により勝利を奪われ、二度目は金権候補だった現大統領に敗北した。2018年7月の次期大統領選挙で「3度目の正直」を狙っているが、PRDとMORENAが別々に候補を立てれば敗北が明らかなため、PRDにはAMLO出馬を阻止する動きがある。