2016年4月13日水曜日

ベネズエラ最高裁が「恩赦法」を違憲と判断、政府は反政府勢力の犯罪暴く「真実委員会」を設置

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月12日、「真実・正義・平和・賠償委員会」を設立し、アリストーブロ・イズトゥーリス副大統領を委員長に据えた。検事総長、外相、オンブズマンらも委員として参加している。

 この委員会は、故ウーゴ・チャベス前大統領が就任した1999年2月から2015年末までの期間に起きた反政府勢力による破壊活動、殺傷事件、人道犯罪などの犠牲者について調査、必要な場合、犠牲者側に賠償する。

 南米諸国連合(ウナスール)が委員会を支援する。ウナスールの事務局長エルネスト・サンペール元コロンビア大統領は同日カラカスで、ドミニカ共和国(RD)のレオネル・フェルナンデス前大統領、パナマのマルティン・トリホス元大統領、スペインのホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロ前首相が、委員としてでなく「同伴者」として参加すると発表した。

 今月末には委員会設置との関連で、「国際和平正義セミナリオ(セミナー)」がカラカスで開催される。これには現在、和平交渉が最終段階にあるコロンビア政府とゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の交渉者、少数白人のアパルトヘイト政権を話し合いで消滅させた南アフリカ政府、ネルソン・マンデーラ財団、軍政期の人道犯罪を裁いてきた亜国、チレ、ウルグアイの代表らも参加する。

 マドゥーロ大統領が委員会設置やセミナリオ開催を決めたのは、国会で3分の2に迫る圧倒的多数を占める保守・右翼の野党連合MUDが、組織的な反政府街頭暴事件に関与し、力テロリズムや破壊活動で禁錮刑に処せられた者や逃亡中の者を中途で免罪する「恩赦法」を成立させたことへの対抗策としてだ。混乱する政情を「準内戦状態」と見なしているのだ。

 MUDは、彼らを「政治囚ないし政治犯」と規定しているが、政府は「重大刑事犯」と捉え、それが政治家であれば「(政治囚では決してなく)収監されている政治家」にすぎない、との立場だ。

 国連人権高等弁務官事務所や、米国の影響力が強い米州諸国機構(OEA)事務局はMUDを支持しており、「恩赦法」に署名しないマドゥーロ大統領を批判してきた。

 だがベネスエラ最高裁・憲法法廷は11日、「恩赦法」を違憲とする判断を下し、問題に一応の決着をつけた。12日設立された委員会は、チャベス・マドゥーロ2代17年に及ぶチャベス派政権下で、1998年まで政権を握っていた有産層中心の旧支配勢力、その利益を代表する野党、その現在の連合体であるMUDに関係する諸事件の罪状を暴き出し、「恩赦法」に正当な根拠がないことを内外に示すためだ。

 最高裁判断を受けたMUDは12日、国家選挙理事会(CNE)に、マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票実施を請求する書類上の手続きを開始した。憲法は、大統領が任期半分を過ぎた場合、この国民投票の実施を条件付きで認めている。

 一方、マドゥーロは12日、「ベネスエラは過去17カ月間に対外債務元本と利子計300億ドルを支払った」と明らかにした。大統領は、「それにも拘わらず、米財務省が支援する国際金融界はベネスエラを金融封鎖している」と批判した。

 また17日カタールのドーハで予定されている石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟産油国会議について、「米国は会議を妨害しようとしている」と非難した。大統領は、ベエネスエラ、コロンビア、メヒコ、エクアドールがキトで予備会談を済ませたことにも触れた。

 国際通貨基金(IMF)はこの日、ベネスエラの経済予測を発表。去年5・7%縮小したGDPは今年8%、来年4・5%、それぞれ縮小する展望した。失業率は今年17・4%になる見込み。去年121%だったインフレは今年481%、来年1642%になる見通し、と明らかにした。