2016年4月4日月曜日

マクリ大統領も絡む脱税天国事件でパナマ政府が捜査開始

 パナマ政府は4月3日、パナマ市にある「モサック・フォンセカ弁護士事務所」が運営する特殊会社の電脳が侵入され「パナマ文書」と名付けられた厖大な機密文書が盗まれて暴露された事件の捜査を開始した。文書内容は、南ドイツ新聞および「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ) 加盟のメディアが3日一斉に報じた。

 流出したのは、過去数十年に亘りファイルされていた1150万点に及ぶ文書類で、世界約200カ国・地域の21万4000企業、72カ国の現職・元職書国家元首・政府首班、富裕有名人多数が顧客などとして絡んでいる。

 パナマのJCバレーラ大統領は、パナマが脱税天国提供国名簿に入っていたのを屈辱とし、金融取引の「完全透明化」に努め、名簿からのパナマ削除を勝ち取った。それだけに今回の事件は強烈な打撃となった。

 顧客名簿には、アルヘンティーナのマウリシオ・マクリ大統領、ロシアのウラディーミル・プーチン大統領、「世界一のサッカー選手」リオネル・メッシ(亜国人)、欧州サッカー連盟前会長ミシェル・プラティーニ(仏人)、スペイン人映画監督ペドロ・アルモドーバルらが関係する法人も含まれている。

 亜国では3日、政府寄りの新聞「ラ・ナシオン」と、TV「13チャネル」が「パナマ文書」事件を報じた。マクリ大統領は同日、ブラジルでの投資を目的とする同族会社「フレグ商事」に父、兄弟と共に重役として参加していた事実を認めた。同社はバハマに置かれていた。

 マクリは、「たまたま重役陣に名を連ねていただけで、資本に参加しなかったし配当金も受け取っていない」と釈明した。同商事は、マクリがブエノスアイレス市長になっていた2009年に営業を終えた。マクリは07~08年に米国などの銀行に口座を持っていたとも明かしている。

 去る1日ワシントンでマクリは、核物資・兵器安保首脳会議出席の折、安倍首相と会談。亜国側報道によると、安倍は「亜国が自由経済を伴う新しい時代を推進しているのは日本にとっても喜ばしい」と述べ、マクリは気を良くした、という。

 また日本側は、亜国が希望するOECD(経済協力開発機構)加盟と、2018年のG20首脳会議の亜国開催を支持した、と報じられている。「パナマ文書」事件で、日本側のマクリの印象が多少変化するのを否めまい。

 問題を複雑にしているのは、上記弁護士事務所の幹部所員である弁護士ランモー・フォンセカが、バレーラ大統領の顧問であることだ。