2016年8月20日土曜日

「南」にきつかったカナダでの「世界社会フォーラム」

 社会正義のあるよりよい世界創設を志す世界社会フォーラム(FSM)の第12回大会が8月9~14日、カナダのモントリオールで開かれた。「北」の工業先進国での開催は初めて。問題点が浮き上がった。

 初日は市の中心街を多数の参加者が「アルテルムンディズモ」(よりよい世界を求める思想)の横断幕を掲げて行進。カナダの知識人、ナオミ・クラインも加わった。

 6日間の会合には125カ国から3万5000人が参加したが、主催者が予定した5万人を下回った。ラ米やアフリカなど「南」からは1000人程度しか参加しなかった。旅費や宿泊料が高いのが一つの問題だった。

 またカナダ政府は査証発給を制限、アフリカ人やラ米人の講演予定者230人が入国を拒否された。これが最大の問題。

 FSMは2001年、世界経済フォーラム(WEF、ダヴォス会議)に対抗して始まり、第1回会合が伯南部のポルトアレーグレで開かれた。それから15年、FSMは曲がり角に立っている。

 それはFSMを推進してきたブラジル労働者党がヂウマ・ルセフ大統領弾劾の危機にあることや、強力な支援者だったウーゴ・チャベス前ベネスエラ大統領の死去、亜国政権がペロン派左翼から保守・右翼のマクリ政権に代わったことなどによる。

 また「アラブの春」が色あせ、内戦や混乱を招いたこと、欧州などでの無差別テロリズムの頻発なども原因だ。

 G7の一員カナダでの今会合では、対立を避けるため、環境・気候温暖化、課税回避・脱税、移民など、南北間に共通する問題が議題に選ばれた。これらの議題を中心に22の主要な会合が開かれた。

 だが、ルセフ大統領を弾劾しようとしているブラジル国会による「制度的クーデター」を会合は糾弾できなかった。反対意見があったためだ。こうした点は前回までのFSMと大きな違いだ。

 FSMの発案者の一人、ブラジルの神学者レオナルド・ボフは、「リオ五輪開会式の5日夜は広島の6日朝だった。我々は国際五輪委員会に開会式さなかの黙祷を求めたが拒否された」と明らかにしている。

 ラ米諸国の進歩主義・左翼勢力は、8月26~28日リマで、「ラ米共産党・革命政党会合」を開き、ラ米情勢を総括することにしている。