2016年11月22日火曜日

~~波路遥かに2016年10~11月~第3回ニューヨークまで~


 レイキャビックからNYまでの1週間は、国連で核兵器禁止条約が議論されているのに関連付けて、「反核兵器」が中心テーマとなった。反核兵器専門家であるピースボート共同代表・川崎哲を中心に、さまざまな国籍の反核活動家らが連日華々しくも真剣に討論した。

 広島・長崎への原爆投下を命じた故トルーマン大統領の孫クリフトン・トルーマン・ダニエル(59)=米地方コラムニスト=は、「広島原爆投下に関する記述を乗せた教科書を読んだ息子に触発され、2012、13年、息子らと訪日、被爆者証言を聴いた」と切り出し、被爆死した佐々木禎子の家族と交流し、折り鶴を通じて平和を発信する活動をするに至った過程を語った。ミズーリ州内にあるトルーマン大統領記念館の名誉館長であり、館内に「禎子伝承」の在米窓口を設けている。

 NHKが今夏流した原爆投下の真相では、軍部が原爆投下の効果を確認するための実験として日本の5カ所を標的に選び、トルーマン大統領の意志が定かでないまま最初の2カ所に投下された事実が明るみに出された。あまりにもひどい惨劇に驚愕した大統領側近は3発以降の投下を禁止した。だがトルーマンは「多数の米兵の命を救い、早期終戦を招くため必要だった」と釈明せざるを得なかった。これについてクリフトンは、「その番組内容は私にとっても初耳だった」と言った。

 原爆投下時にエノラゲイなど米軍機2機のいずれにも搭乗していた軍事技士を祖父を持つアリ・ビーザー(28)は、被爆者について米国人に伝え、祖父のことを日本人に語りながら、「戦争という過ちを繰り返さないため」活動している。クリフトンの訪日に同行したこともある。外国人「地球大学生」として船内で発言を続けた。

 元国連軍職担当上級政務官の米国人ランディ・ライデルは、核兵器禁止をめぐり核保有国と非保有国の間で激しい闘争が展開されてきた経緯を語り、合意達成の難しさを説明した。

 イスラエルの核兵器対策について訊くと、「彼らは持っていないと否定するから、取り組みは難しい」と肩をすくめた。かつて小型核弾頭を保有していた南アフリカの首都プレトリアの核施設で原爆製造の跡を見た、とも語った。

 船内では、国連が推進してる「持続可能な開発のための17目標(SDGs)」をめぐる講演会や話し合いも活発に展開された。オーシャン・ドゥリーム号の船体には、17目標のロゴが描かれている。

 知的大家の武者小路公秀は地球規模の文明論を展開。国際政治やジェンダー論の専門家である羽後静子は、17目標を解説、分析し、TPP(環太平洋連携協定)の問題点を鋭く指摘した。

 私はと言えば、NYとクーバに備え、「クーバ革命体制の変遷」、「チェ・ゲバラ論」、「NYの歴史」などを語った。音楽番組では、ファド、シャンソン、カントリーをやった。

 グリーンランド南方、ニューファウンドランド東方の海は寒く、波が高かった。だが、徐々に暖かさが増してゆく。オーロラの余韻を楽しみつつも、心は南下する。