2017年1月20日金曜日

 メキシコが任期最終日のオバマ政権に麻薬王グスマンの身柄を引き渡す。トランプ氏への明白な当て付け

 メキシコ政府は、バラク・オバーマ大統領任期最後の一日となった1月19日、麻薬王ホアキン・”チャポ”・グスマン(59)の身柄を米当局に引き渡した。国境のフアレス市の刑務所から厳戒態勢の下、連邦警察の武装ヘリコプターで空港に連行されたグスマンは、米当局の小型飛行機で同日夜、ニューヨーク空港に到着した。

 エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領がこの日を特に選んで身柄を引き渡したのは、翌20日就任するドナルド・トランプ次期大統領への明らかな当て付けだ。グスマンはメヒコ最大の麻薬マフィア「シナロアカルテル」の首領だった。

 EPN大統領は、米墨国境の壁建設、在米メヒコ人不法移民追放、北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直し、メヒコからの米企業投資引き揚げなどの発言や仕打ちで、トランプからさんざんこけにされてきた。

 大統領は敢えてオバーマ大統領の政権当局にグスマンの身柄を引き渡すことで、トランプにグスマンの身柄確保の手柄は与えないと意志表示すると同時に、「メヒコの協力が欲しければ、あなたも協力しなさい」とトランプに暗黙のメンサヘ(メッセージ) を放ったわけだ。

 ラ米でもトランプ就任演説に強い関心が集まっているが、オスカル・アリアス元コスタ・リカ大統領は19日、米市民は女性蔑視、性好み、外国人排斥主義、少数民族排撃などを厭わぬ最も無教養な人物を大統領に選んでしまったのか、と嘆いた。

 アリアスは、トランプの持論である「米墨国境での壁建設」については、「困っている人々が何物をも恐れず目的地に向かうことは、地中海を渡る欧州への移民の行動で明らかであり、壁など何の意味も待つまい」と指摘した。

▼ラ米短信   ◎クーバがオバマ政権と最後の調印

 クーバ政府とオバマ米政権は1月19日ワシントンで、「動植物衛生協力議定書」に調印した。 

★本日1月20日発売の「週刊金曜日」誌に、ブログ子、伊高浩昭執筆の、クーバおよびラ米とトランプ新政権との関係予測記事が掲載されています。