2017年1月3日火曜日

キューバで革命軍および「戦う人民」が大行進

 第58回革命記念日翌日の1月2日、ハバナのホセ・マルティ革命広場で軍事観閲式と「戦う人民」行進が約2時間に亘って繰り広げられ、数十万人が参加した。

 1か月前の12月2日は、故フィデル・カストロ以下82人のゲリラ戦士部隊が1956年にクルーザー「グランマ号」でクーバ島東部に上陸、革命戦争を始めた日。昨年は、11月25日に90歳で死去したフィデルの国喪期間だったため、ひと月遅れて記念行事が挙行された。12月2日は「反乱軍(革命後は革命軍)創立記念日」とされている。

 今回の行事は叛乱軍創設60周年だけでなく、フィデルへの栄誉礼の意味も込められていた。マルティ像から見て、広場向かい側の右にある革命軍省の壁面には、革命戦争中のフィデル、グランマ号、マエストラ山脈を写した巨大な写真の幕が掲げられた。

 広場中央の特設画面には、ヒロン浜侵攻部隊を迎え撃つ革命軍を指揮するフィデルの映像などが流されていた。

 式典は暑い日差しを避けるため早朝に始まった。マルティ像真下の幹部および貴賓席にはラウール・カストロ国家評議会議長(85)以下、革命軍、共産党、政府、国会の最高幹部が勢ぞろい。招待席には外交団、FARC最高司令ティモチェンコ、FARC幹部イバン・マルケスらが並んだ。

 この日唯一の演説者は、大学生連盟(FEU)のジェニファー・ベーヨ議長。世代交代を急ぐラウールの意向で、革命体制を若者たちが担ってゆくことを象徴させるため若者代表が選ばれた。FEUは1950年代、ハバナ大学生を中心に「革命幹部会」を結成し、革命に参加した歴史を持つ。

 ジェニファーは演説で「クーバは原則で譲歩することはない」、「対米接近過程の道程は長い。経済封鎖、グアンタナモ基地返還などを要求してゆく」、「反帝国主義を掲げ、全人民戦争戦略を維持する」など、ラウール政権の立場を代弁した。

 これは20日就任するドナルド・トランプ次期米大統領に向けた明らかなメンサヘ(メッセージ)だ。

 軍事行進に先立ち、19世紀のクーバ独立軍の騎兵隊を装った騎馬隊から始まり、複製のグランマ号、ゲリラ部隊を摸した縦隊などが行進。各種軍事学校生、陸軍、特殊部隊、海軍、内務省部隊、女性民兵隊などが観閲を受けた。

 部隊はいずれも自動小銃程度の軽装備で、戦車、地対空ミサイルなどの重兵器類は一切登場しなかった。燃料節約のためだ。

 観閲式に続いて、「戦う人民」行進。労働者、スポーツ選手、専門職、中学生、共産主義青年同盟(UJC)、革命防衛委員会(CDR)、家族連れ市民らの太い行列が延々と続いた。

 「私はフィデル」のスローガンを叫び、「私たちはフィデル」の横断幕が掲げられていた。フィデル、ラウール、JAメーヨ(旧共産党創設者、1929年メヒコ市で暗殺)、カミーロ・シエンフエゴス、エルネスト・チェ・ゲバラの大きな肖像写真もあった。

 ハバナ市内の国立ハバナ大劇場では、アリシア・アロンソ(96)率いる玖国立バレエ団が、革命記念日公演として「カスカヌエセス」を演じた。