2017年2月11日土曜日

 ノーベル平和賞受賞のサントス・コロンビア大統領の選挙戦に収賄資金? ブラジル建設会社オデブレヒトの一大贈賄事件がラテンアメリカを揺さぶる

 ブラジルおよびラ米の最大手建設会社オデブレヒトに絡む贈収賄事件がラ米を揺さぶっている。同社は昨年12月21日、米司法省と司法取引し、2009~14年にラ米10ヵ国とアフリカ2カ国で総額7億8800万ドルの賄賂を贈ったと供述、波紋が拡がった。

 その12カ国は、ブラジル、亜国、エクアドール、ペルー、コロンビア、ベネスエラ、メヒコ、パナマ、グアテマラ、ドミニカ共和国、アンゴラ、モサンビーク。アフリカ両国は、ブラジルと同じポルトガル語圏。

 ペルーでは、アレハンドロ・トレード元大統領が自動車道建設事業に絡み2000万ドルを収賄していた事実が明らかになり、逮捕状が出されている。トレードは事態を察知しパリに逃亡、所在不明となっている。ペルー政府は国際刑事警察機構(インターポール)に逮捕を要請するとともに、逮捕につながる情報提供者に賞金3万ドルを贈ることにしている。

 コロンビアでは2月7日、検察庁が、2014年の大統領選挙の選挙戦時、オ社資金100万ドルが現大統領JMサントス陣営に渡った疑いがあると明らかにした。サントス大統領は直ちに検事総長に電話し、証拠の有無を尋ねたという。

 これも自動車道建設事業に絡む汚職で、1100万ドルがコロンビア側に渡されたが、100万ドルはその一部。香港企業経由で渡されたとの情報もある。検察庁は国家選挙理事会(中央選管)に調査を要請した。 

 サントスは昨年、ゲリラFARC(コロンビア革命軍)との半世紀余り続いた内戦の和平に漕ぎつけ、ノーベル平和賞を受賞した。2月7日には、残るゲリラELN(民族解放軍)との和平交渉を赤道国のキト郊外で正式に始めたばかり。サントスの威信が陰れば、FARCとの和平過程深化、およびELNとの和平交渉に影響が出ると懸念されている。

 サントスにとり「不幸中の幸い」は、14年選挙で対立候補だった右翼政党「民主中心」(CD)のオスカル・スルアガ候補もオ社から160万ドルを受け取っていた疑惑が出ていること。

 一方、パナマでは1月下旬、リカルド・マルティネリ前大統領が建設事業に絡んでオ社から2200万ドルを収賄した事実が暴露された。この金は、スイスにあるマルティネリの息子2人名義の銀行口座に入っていた。スイス政府は、同口座を凍結した。前大統領は米国に逃亡中。

 ところが事態はさらに発展、2月9日、パナマのJCバレーラ現大統領がオ社から14年の大統領選挙戦時、資金を受け取っていたと告発された。昨年4月以降、国際社会を震撼させてきた「パナマ文書」に関与しているパナマ市のモサック・フォンセカ法律事務所のラモーン・フォンセカ弁護士が暴いたのだ。

 ラモーンは、政権党「パナマ主義者党」(PP)でバレーラと長年の同志で、バレーラ政権で閣僚級の政策顧問となり、PP党首にも就任した。だが昨年3月、オ社関連の汚職事件関与が浮かびあがり、辞任した。

 9日ラモーンは検察で取り調べを受ける直前に、バレーラが選挙資金をオ社からもらっていたと爆弾発言した。パナマ社会では一気に反腐敗運動が拡がっている。

 またエクアドールのラファエル・コレア大統領は10日、先手を打つかのように、オ社関連疑惑が赤道国に及ぶとすれば、それは19日の同国大統領選挙(第1回投票)に影響を与えるための政治的策謀だ、と表明した。

 ブラジルではオ社は、国営石油ペロとブラスと絡む政財界を巻き込んだ一大汚職事件で裁かれ、収賄者の裁判や捜査が続いている。

▼ラ米短信   ◎長期受刑囚がプエルト・リコで刑期満了へ

 米本土各地の刑務所で35年の禁錮刑を受けいてきたプエルト・リコ独立派のオスカル・ロペス=リベーラ服役囚(74)は2月9日、インディアナ州テレホート刑務所を出され、民間航空機で島都サンフアンの空港に身柄を移された。

 バラク・オバーマ前大統領は1月17日、ロペスを5月17日に釈放する減刑措置を発表していた。今後は、実の娘クラリサの家族と暮らす「自宅軟禁」の形で5月までの刑期を勤める。

 サンフアンのカルメン・ユリーン市長は、ロペスには市の安定職が待っている、と明らかにしている。