2017年3月18日土曜日

 メキシコ人学生43人失踪事件解明を急ぐよう米州人権委員会(CIDH)が墨政府に厳しく要請。ワシントンでの会合で父母側は、政府側の真相隠しを追及

 米州諸国機構(OEA)の機関「米州人権委員会」(CIDH=シダーチェ)はワシントンの本部でメキシコ政府代表と、アヨツィナパ農村教員養成学校生強制失踪者43人の父母代表を招き、同失踪事件解明を急ぐべく話し合いの会合を開いた。

 CIDHの代表パウロ・ヴァヌチは、「麻薬組織首領ホアキン・チャポ・グスマンを逮捕できた墨政府がなぜ学生43人の殺害犯を逮捕、特定できないのか」と、厳しく政府側を追及した。グスマンは昨年逮捕され、今年1月下旬、身柄を米国に送られた。

 墨政府からは、外務、内務両省と検察庁の人権担当次官が出席した。政府側は、既に信憑性が否定されている「事件の公式見解」を繰り返すだけで、積極的発言はなかった。

 事件は2014年9月26~27日、墨ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた。同市警、同州警、連邦警察、同市駐屯陸軍、麻薬組織などの関与が明らかになっている。だが政府は、連邦警察と陸軍の関与を認めれば、行政府の長である大統領に責任が及ぶため、その面の捜査をせず沈黙を決め込んでいる。

 父母代表は、「虚偽と腐敗まみれで、真実を隠している」と政府を糾弾。麻薬組織と国家の不正を捜査するよう要求した。またCIDHに対し、事件をうやむやに終わらせないよう、引き続き捜査に関与するよう求めた。

 CIDHは4月20日訪墨し、CIDH派遣の専門家調査団が得ている捜査結果に基づき真相を暴くよう、政府に働きかけることにしている。ヴァヌチ代表は、政府側に「いつまで時間を引き延ばすのか。真相解明のため時間を限るべきではないか」と迫った。

 来年7月のメヒコ大統領選挙の野党有力候補AMLO(アムロ=アンドゥレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)が訪米中の15日、43人失踪事件への陸軍関与の可能性を示唆したところ、政権党PRIや前政権党PANなどから激しい反発が起きた。

 一方、メヒコ政府は14日CIDHに対し、トランプ米政権の不法移民追放政策を問題にするよう告発した。またメヒコ国会上院外交委員会は15日、米墨国境の壁建設工事に参加する両国建設会社には公共事業を発注しない方針を決めた。

 墨内務省は16日、米国からの移民大量帰国への準備が整った、と明らかにした。「ソモス・メヒカーノス」(私たちはメキシコ人)という計画で、当面、帰国者5万人に職を与える用意が出来たという。

 米国からメヒコへ過去8年間、墨人不法移民250万人が送還された。去年は30万人だったが、うち10万人は自発的帰国だった。