2017年3月16日木曜日

 米州諸国機構(OEA/OAS)事務総長の内政干渉策めぐり、ベネズエラ政府との関係が険悪化。マドゥーロ大統領はアルマグロ総長を「愚劣なごみ」と扱き下ろす★エクアドル大統領選挙決選支持率は政権党候補が優勢

 ベネスエラと米州諸国機構(OEA)事務総長との関係が極度に悪化している。ルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は3月14日、OEA常設会議(加盟国大使会議)に、ベネスエラ政府に大統領を含む総選挙を早期実施させるため圧力をかける目的で、同国のOEA加盟資格停止を提案するという趣旨の報告書を提出した。

 これに対しベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は15日、内政干渉としてアルマグロを糾弾。「アルマグロと呼ばれる愚劣で小さな裏切者、ごみ」と扱き下ろした。また、「米国の植民地省であるOEAは過去に何度ラ米で介入やクーデターを生み出してきたことか」と非難した。

 D・トランプ米大統領、米国務省、米共和党極右のクーバ系上院議員マルコ・ルビオ、ベネスエラ野党連合MUDと意を通じるアルマグロは2015年に事務総長に就任して以来、右傾化が著しく、かつての上司、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領から昨年、「絶縁」を言い渡された。

 米国はジョージ・ブッシュ(息子)、バラク・オバーマ両大統領期から続いてきたベネスエラ改革政権打倒の動きを、トランプ政権になってからも維持しており、OEAを使ってマドゥーロ政権打倒工作を活発化させようとしている。

 加盟国資格停止には、追放されて以来、復帰していない社会主義クーバを除く加盟34カ国のうち3分の2(23国)の賛成が必要。採決は外相会議で為される。

 ベネスエラ支持国は、同国を含め12カ国を超えており、その切り崩しの対象はカリブ英連邦諸国。今後、米政権が経済援助と引き換えに自陣への取り込みを図る可能性がある。

 ベネスエラ外務省は14日、「ベネスエラの敵アルマグロは誤った前提に基づき国際介入を促進し、ベネスエラへの経済戦争を強化しようとしている」との声明を出した。次いでデルシー・ロドリゲス外相が15日、ベネスエラは市民団体などラ米225組織から支持表明を受けていると明らかにした。

 同外相はさらに、「アルマグロは、危険で反民主の米州極右ファシスト分子を指揮している。べエスエラ人民への憎悪をかきたてて介入しようと謀っている」と激しく非難した。

 ブラジル新外相アロイジオ・ヌネスは11日、「ベネスエラ政権は独裁だ」との見方を示したが、デルシー外相は、昨年8月末の政変で政権に就いたミシェル・テメル大統領の現政権を「クーデターを決行し腐敗し人民を攻撃する寡頭体制」とけなした。続けて、「一役人がベネスエラの力強い民主を裁こうとは図々しく卑しむべきことだ」と糾弾した。

 ブラジルの弾劾は、巨額の収賄事件を捜査されていた国会多数派が正当な根拠なくヂウマ・ルセフ大統領を弾劾、事実上の「国会クーデター」だった。だがアルマグロは、ブラジルの加盟資格停止への動きを見せなかった。

 マドゥーロ大統領は9日の(現政権が指定した)「反帝国主義の日」の式典で、「爪、武器、精神、歴史をもって国を守り、帝国主義の内政干渉を許すな」と、支持層のチャベス派に発破をかけた。

 一方、保守・右翼野党連合MUDが圧倒的多数派のベネスエラ国会の外交委員会は15日、アルマグロ提案への支持を表明した。

▼ラ米短信   ◎エクアドル大統領選挙決選支持率調査では政権党候補優勢

 エクアドール大統領選挙(2月19日)の得票上位2人が臨む4月2日実施の決選まで半月余り。3月15日公表された支持率調査結果によれば、ラファエル・コレア大統領の進歩主義改革政権の候補レニーン・モレーノが51%、新自由主義復活を目指す保守・右翼の財界系候補ギジェルモ・ラッソが35%。14%は態度未決定・棄権・白票。

 グアヤキル銀行社主であるラッソは16日、「オフィショー富豪ラッソ」という題名の調査報道記事で、パナマ、ケイマン、デラウェアの租税回避地にある49社に資金を流していたことを暴露された。「選挙民の敵」(脱税者)という非難も起きており、選挙戦に不利に作用するのは疑いない。