2017年4月5日水曜日

 チリ大統領選挙(11月)に女性放送記者ベアトゥリス・サンチェスが出馬表明。左翼「拡大戦線」でまず指名を争う。左右2大勢力の谷間で旋風を巻き起こせるか

 チレで今年11月29日に第1回投票が実施される大統領選挙に4月3日、著名な女性放送記者が出馬への名乗りを挙げた。ラジオ放送「ラ・クラベ」で3月まで政治記者をしていたベアトゥリス・サンチェス(46)だ。子供3人の母親だ。

 サンチェスは、新興の左翼野党連合「拡大戦線」(FA)に所属する「民主革命党」(RD)と「自治主義者運動」(MA)から3月21日、出馬を要請され受諾、記者を辞め、4月28日のFA候補指名の予備選に出馬することを決めた。社会学者アルベルト・マジョールと指名を争う。

 サンチェスは3日、首都サンティアゴ中心街のイタリア広場で出馬を宣言。最初の演説で、「私は政治は素人だが、皆さんも素人だ。素人同士が水平に繋がり、全員で物事を決める政治をしよう」、「女性が女性の問題を決め、先住民族が自分たちの未来を決め、ピノチェー独裁の負の遺産を自由に話し合える社会、異なるチレを創る」と訴えた。

 各会派の「候補者候補」は既にほぼ出そろっている。中道・中道左翼・左翼の政権党連合「新多数派」はアレハンドロ・ギジエル(ジャーナリスト)、リカルド・ラゴス元大統領、カロリーナ・ゴイク(キリスト教民主党首)。

 ピノチェー独裁の流れを汲む「独立民主連合」(UDI)と「国民改新党」(RN)の保守・右翼野党連合は、セバスティアン・ピニェーラ前大統領、マヌエル・オサンドーン上院議員、フェリーペ・カストが指名を争う。

 現時点での支持率は、ピニェーラ24%、ギジエル16%、ラゴスおよびベアトゥリス・サンチェス4%、オサンドーン3%、ゴイク2%、その他各1%。政権党連合と野党連合の谷間にある第3勢力FAは、組織と資金で最初から劣勢に立たされているが、サンチェスは知名度ではまずまずだ。

 サンチェスは1994年に放送記者となり、2014年に5局目の「ラ・クラベ」放送に移っていた。テレビ番組にもしばしば出演してきた。サンチェスが力をつければ、その分、政権党候補は票を食われることになる。

 政権党連合はギリエル、野党連合はピニェーラ、FAはサンチェスが指名を勝ち取る公算が大きい。サンチェスがダークホースになれるかどうかに関心が集まっている。
 
 FA(拡大戦線)には、前記両会派の他、人道党(PH)、「緑環境党」(PEV)、「平等党」(PI)、「自治左翼」(IA)、「絶対自由主義左翼」(IL)が参加している。社会党と共産党は「新多数派」に属している。