2017年5月5日金曜日

 ロシアのロスネフト社がキューバに石油を供給。トランプ政権への鞘当てか▼ベネズエラ情勢: 反政府勢力による破壊活動激化で、カラボボ州に軍事法廷復活。政府は野党連合MUDに制憲議会選挙参加を呼び掛け

  露国営石油ロスネフト社は5月3日、クーバに25万トンの石油を輸出することで合意し、10日に最初の24万9000bが到着する、と発表した。その内訳は原油とディーゼル。総量25万トンをいつまでに輸出するのかや代金の額などは明らかにされていない。

 クーバはベネスエラから優遇条件で原油を輸入していたが、同国経済の悪化で供給量が半減、エネルギー事情が悪化、経済成長も昨年、マイナスに転じた。

 ラウール・カストロ議長は昨年7月から、プーチン政権に優遇条件での原油供給を求めていた。25万トンと量的には大したことはないにせよ、ここへきて露社が輸出に踏み切ったのは、関係が悪化しているトランプ米政権への牽制策と言える。

 ベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)は昨年、ロシアから借款を受ける際、担保として、同社所有の在米製油所CITGOの株の49・9%をロシアに渡した。これも米政府の神経を苛立たせた。

 ロシアは4月には、先にウラカン(ハリケーン)被害6300万dの出たクーバに、復興資金として150万dを贈っている。

★ベネスエラ情勢   カラボボ州で軍事法廷復活

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)のアントニオ・ベナビデス長官は5月4日、武装決起、治安部隊への襲撃、略奪、破壊活動に関与した43人を逮捕、裁判を軍事法廷に委ねる、と発表した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月17日、騒擾状態とゴルペ(クーデター)を未然に防ぐための「サモーラ文民・軍人合同計画」(プラン・サモーラ)を発動した。この計画には重大犯罪者を対象とする軍事法廷活用が含まれている。ネストル・レベロール内相も、カラボボ州で武装蜂起があった、との判断を示している。

 検察庁は、4月初めから4日朝までの反政府勢力の抗議行動および暴動で、死者35人、負傷者717人が出た、と発表した。死者はカラカス首都圏、カラボボ州が多い。

 アンソアテギ州にある地域工科大学では4日、学生会を開いていた学生会長フアン・ロペス(23)が、侵入した2人組の殺し屋から至近距離で銃撃され即死した。他の4人も重軽傷を負った。ロペスは政府支持派であり、警察は反政府勢力が殺し屋を雇ったとみて捜査中。

 刑務所管理相は、検事総長が3日「当局の実力過剰行使」に触れたことに関し、暴力、襲撃、破壊活動を続けている反政府暴徒のことをなぜ指摘しないのか、と批判した。電力相は5月になってから鉄塔破壊を試みた男3人が感電死した、と明らかにした。

 政府は、一連の暴動で破壊され放火され略奪された店舗に4日、総額110億ボリーバルの復興手当金を支給した。

 マドゥーロ大統領が政令で打ち出した制憲議会(ANC)議員選挙について、その担当官エリーアス・ハウア教育相は4日、ANCおよび選挙の説明会に出席するよう、保守・右翼野党連合MUDに呼び掛けた。

 MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長は4日ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部でルイス・アルマグロ事務総長に会い、ベネスエラのOEA脱退を認めないとする国会決議の文書を手渡した。

 ムヒーカ・ウルグアイ前政権の外相だったアルマグロは反マドゥーロの急先鋒で、ムヒーカ前大統領から絶縁されている。バスケス現ウルグイア政権の政権党連合「拡大戦線」(FA)に属する左翼政党「民族解放運動トゥパマロス」(MLN-T)は4日、アルマグロをベネスエラ政変誘発の陰謀に加担していると糾弾した。

 クーバ系右翼の共和党議員ら米連邦議会議員十数人は4日、ベネスエラ情勢を国連安保理で話し合うよう、トランプ政権に要請した。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は4日、コロンビアのマリーア・オルギン外相が前日、ANC開設がベネスエラ問題の解決に寄与するとは思わないと発言したことに関し、内政干渉として一蹴。「組織的に人権蹂躙を続けてきたコロンビア支配勢力にはなおさら、他国に干渉する倫理的資格はない」と扱き下ろした。

 だがコロンビアおよび亜PAR伯CR・HON・GUA墨の8カ国政府は4日、VEN政府に「過剰警備をやめ人権を尊重するよう」呼び掛けた。反政府派暴徒による破壊活動や治安部隊襲撃には触れていない。デルシーの激しい反撃を招くのは必至だ。

 レックス・ティラーソン米国務長官は4日、欧州諸国と協働してベネスエラ問題に対処したい、と述べた。マドウーロ政権はMUDとの対話実現のための回路として、従来からの南米諸国連合(ウナスール)の対話仲介団に、ラ米・カリブ諸国連合(CELAC)の対話促進団4カ国をこのほど加えた。