2017年5月21日日曜日

 ベネズエラ反政府勢力の暴力伴う街頭行動が50日に近づき、死者も50人に及びつつある。南米諸国連合のサンペール前事務局長は、「MUDが街頭行動止め、政府がANC開設方針取り下げれば、交渉開始可能」と指摘▼LATINA誌6月号がベネズエラ情勢詳述記事掲載

 ベネスエラでは5月20日も政府支持派と反政府勢力の街頭行動が首都カラカスを中心に展開された。反政府勢力は主要な自動車道を埋めた。行動を指揮する保守・右翼野党連合MUDのエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は、デモ隊を内務省まで向かわせようと発破をかけたが、治安部隊に規制され、果たせなかった。

 この反政府行動のさなか、別働隊の暴徒に青年一人が私刑に遭い、ガソリンをかけられ焼かれ、体の70%に火傷を負った。ニコラース・マドゥーロ大統領は、この青年の救命を命じた。約50日間に亘る一連の武力事件で死者は50人に及びつつある。

 コロンビア国境沿いのタチラ州のホセ・ビエルマ=モラ知事は、「MUDが同州内で動員した4日間の反政府行動は華々しく敗れた」と表明。知事は、MUD加盟の極右政党VP(人民意志)所属の「国会議員ガビ・アレジャーノは麻薬、酒、現金を(動員のために)配布していた」と告発した。州内の食糧と燃料の供給は、治安部隊の増強で滞りなく実施された、と述べた。

 過去の政治的人道犯罪を追究する「正義・真実委員会」のフェルナンド・ソト=ロハス顧問は、「バネスエラは内外から包囲されている。国内では準軍部隊と繋がる反政府ファシズム勢力に攻められている。(背後に居る)米国は、ベネスエラの原油資源獲得のため限りない戦を仕掛けている」と糾弾した。

 ジュネーヴ国連駐在のホルヘ・バレーロVEN大使は人権理事会で、反政府勢力による街頭行動時の暴徒らによる暴力・破壊活動を映したビデオ映像を見せ、暴徒による殺傷、破壊活動、さらに反政府勢力側の狙撃手の銃撃による殺人を告発した。

 同大使はまた、外国メディアの虚偽報道、意図的誤報を糾弾。「治安部隊は市民と公共・私有財産を守っている。政府は対話を求めているが、反政府勢力内の暴力肯定派が対話を阻止している」と説明した。理事会の各国代表らが聴きいった。

 デルシー・ロドリゲス外相は故ウーゴ・チャベス前大統領の出身地バリーナス州での制憲議会(ANC)開設運動の集会で演説、「ANCは暴力を終わらせるのために決定的に重要だ。主権と民族自決権の防衛が同様に重要だ」と強調した。

 外相はまた、「反政府右翼勢力は米帝国主義に従属し、ボリバリアーナ革命以前のような新自由主義と売国主義を植え付けようとしている」と、MUDを非難した。

 マドゥーロ大統領は、MUDを支持してきたメヒコについて、「暴力、不平等、麻薬によって失敗国家に成り下がった」と扱き下ろした。デルシー外相も先ごろ、ルイス・ビデガライ墨外相を、「米国の家来だ。メヒコとラ米の間に壁を築こうとしている」と非難した。

 ベネスエラに敵対的姿勢をとってきた米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長はワシントンで、「ベネスエラは、民主回復方法を決めるため決定的な交渉を開始すべき時に至った」と述べた。

 エルネスト・サンペール元コロンビア大統領は19日、「反政府勢力が街頭行動を止め、政府がANC開設方針を取り下げれば、民主的解決の糸口となる。対話では選挙日程を決めるべきだ。選挙抜きで民主はありえないからだ」と指摘した。サンペールは南米諸国連合(ウナスール)の前事務局長で、ベネスエラ対話仲介の労をとった、双方の対立が厳しく、任務を完遂できなかった。

 一方、カリタスのラ米・カリブ地域代表ホセルイス・アスアヘ(バリーナス州司教)はローマで20日、「ベネスエラのカトリック教会は反政府でなく、人民の味方になるべきだ。(政党でなく)人民の声を聴いて、その意志を実現させるべきだ」と語った。

 このところマドリード、メキシコ市、サンホセ、パナマ市などで、ベネスエラ政府を支持する行事に、反政府派が押し掛け行事を妨害する事件が相次いでいる。ベネスエラ外交当局は、反政府勢力が「暴動を輸出している」と非難している。

★月刊誌LATINA6月号(発売中)掲載; 伊高浩昭執筆 「ラ米乱反射」 連載134回 「<クーデターの危機>に対抗するベネズエラ  反政府勢力は米指示通り街頭暴力激化作戦」