2017年5月15日月曜日

 ベネズエラ反政府野党連合MUDを世論は厳しく批判。制憲議会(ANC)担当官は「MUDの対米従属」を非難、「内戦を危惧」と表明。EUは「実効ある対話」の即時実施を呼び掛け。「ウクライナ情勢との共通点」指摘も

 ベネスエラの著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは5月14日のテレベン放送定例番組「今日のホセ=ビセンテ」で、ニコラース・マドゥーロ大統領打倒を目指し激しい反政府活動を続けている保守・右翼野党連合MUDに関する最新の世論調査結果を発表。回答者の83%は、「MUD指導部の交代が必要」と答えた。

 76%「MUDは問題解決のため政府に協力すべきだ」、70%「MUDは分裂している」、67%「MUD指導部はチャベス前政権以前(1998年まで)の新自由主義路線指導者と同じ」、60%「MUDに強力な指導者はいない」、59%「MUDは人民福利に無頓着で政権奪取だけを狙っている」、58%「MUDが政権に就いても経済問題は解決できない」-との回答だった。

 この番組に出演したエリーアス・ハウア教育相(制憲議会=ANC=担当大統領委員会委員長)は、「反政府勢力が今ほど外国に従属し、その指令によって動くことはなかった。政府がANC構想を打ち出すや、フリオ・ボルヘス(MUD代表格の国会議長)は訪米し、米政府の軍事関係者に会った。彼らの政治組織(MUD)は外国政府(米国)に従属しており、憂うべき事態だ」と述べた。

 ハウアはまた、「MUDもかカトリック司教会議もANC開設のための対話を拒否している。我々は内戦になるのを危惧している」と語った。さらに、「18年末には大統領選挙がある。地方選挙(州知事・州会議員)が今年あるかどうかはわからないが、年末にやるということになれば、それで構わない」と述べた。

 マドゥーロ大統領は「母の日」に際し、「ANC議員の半数を女性にすることもありうる」との考えを示した。クーバ駐在のアリー・ロドリゲス大使はハバナで14日、「野党勢力(MUD)との対話が途絶えた今、ANCが唯一の打開策だ。彼ら(MUD)はマドゥーロ大統領排除のため危険な活動を激化させてきた。この緊張のガスを抜くためにも、ANCというバルブ開放が必要だ」と表明した。

 欧州連合(EU)は15日、ベネスエラ政府とMUDに対し、「緊急、建設的、実効ある対話」実施を呼び掛けた。スペイン政府が、この呼び掛けをまとめた。

 反政府行動は依然荒れている。首都カラカスに隣接するミランダ州内で13日、政権党国会議員ヘンケルベ・トバルの護衛2人が武装一味に拉致され、一人が射殺され、もう一人が重傷となった。非公式集計では、4月初めからの反政府派による暴動などによる死者は40人を超えた。

 ボリーバル州のフランシスコ・ランヘール知事は14日、州内の病院に配布する薬品、手術用機材などを保管していた倉庫が同日放火され炎上した事件で、反政府系分子の犯行と断定した。

 マイアミ周辺に多い在米ベネスエラ人組織は13日、ベネスエラ反政府勢力の別働隊の若者らに、催涙ガスよけの「防毒マスク」などを贈ったと明らかにした。

 国営ベネスエラTVは13日、「ベネスエラとウクライナ」というドキュメンタリ-を放映。解説者は、「2014年ウクライナでのヴィクトル・ヤンコヴィッチ大統領打倒運動は、当初の平和抗議から暴動に変わり、やがて外国(ロシア)の援助で戦闘となった。ベネスエラの現在の状況に似ている」と指摘した。