2017年6月2日金曜日

 ベネズエラが有志5カ国の対話醸成会合を招集。デルシー外相はメキシコでの次回外相会議で「アヨツィナパ問題」取上げると表明▼カラカスで極右が高裁判事暗殺した可能性浮上▼キューバ国会が「ベネズエラ連帯宣言」を採択▼バチェレー・チリ大統領が最後の施政報告演説 

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6月1日カラカスで記者会見し、国内対話醸成のためエル・サルバドール、ニカラグア、ドミニカ共和国、セントヴィンセント&グラナディーン、ウルグイアの有志5カ国の会合を招集する、と明らかにした。

 また、カリブ共同体(カリコム)が、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の枠組内で対話すべきだと提案したことについて、「国際法の原則に則った提案だ」と評価した。

 だが、「ベネスエラは、米州諸国機構(OEA)のいかなる決定をも認めない。したがって(反ベネスエラ決議採択工作をしている)アルマグロ(OEA事務総長)はOEAを破壊していることになる」と指摘した。ベネスエラの政情については、「反政府勢力が民主と憲法に反して暴力状況をつくってしまった、というのが真実だ」と強調した。

 外相は、今月21日、メヒコの保養地カンクンで開かれるOEA外相会議には出席すると31日発表したが、その会議でアヨツィナパ問題を提起する、と述べた。2014年9月26~27日、メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた農村教員養成学校生43人の強制失踪事件のことで、発生後32カ月経ったが、未解決ののまま放置されている。

 「ベネスエラの人権問題」をOEAで再三批判してきたメヒコに、その痛いところを蹴り込んで逆襲する戦略だ。

 制憲議会(ANC)議員の出馬登録は1日終了したが、政府中枢部と対立するルイサ・オルテガ検事総長は同日、最高裁が大統領にANC開設を発議する権限を認めたことについて、憲法が定める国民投票権という人民の権利をないがしろにする決定、と批判した。

 これに対し、ニコラース・マドゥーロ大統領は同日、「新憲法(大幅改定憲法)の最終草案ができたら、それを国民投票にかける」と約束した。

 一方、ネストル・レベロール内相は、カラカス市内で31日殺された首都圏高裁のネルソン・モンカーダ判事(37)は「反政府右翼の殺し屋に殺害された可能性がある」と指摘した。同判事は、14年に街頭暴動事件を教唆した罪などで服役中の極右政治家レオポルド・ロペスの無罪要求を昨年却下、ロペスの有罪はこれで確定した。このため逆恨みの犯罪と見られている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、社長を兼任する国営テレビVTVに出演、反政府勢力はデモの目的地をVTV本社にしており、放送局を乗っ取る戦術のようだと非難。「だが、何があろうと放送が中断されることはない」と述べた。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は、反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の代表フリオ・ロドリゲス国会議長が、米投資会社ゴールドマンサックスがベネスエラ国営石油PDVSAの債券28億ドル分の購入を決めたことを誹謗中傷したとして、「反国家的言動」として提訴する考えを示した。

 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領はモスクワで1日、通信社10社との会見で、ベネスエラ情勢に触れ、「ベネスエラは激しい政治闘争のさなかにある。反政府勢力も政府も憲法を守り、過激主義を許してはならない」と強調した。

◎クーバ国会が「ベネスエラ連帯宣言」を採択

 社会主義クーバの人民権力全国会議(ANPP、国会に相当)は6月1日、ベネスエラ連帯宣言を採択した。ラウール・カストロ国家評議会議長(共産党第1書記)は閉会演説で「ベネスエラの合憲政権の打倒を狙う攻撃、政策、内政干渉を糾弾せねばならない。経済権益を持つ彼らは、故ウーゴ・チャベス大統領が始めたボリバリアーナ革命の継続を阻もうとしている」と、ベスエラ内外の敵対勢力を非難した。

 議長はまた、「反政府勢力の多くは、2002年のチャベス大統領打倒クーデター未遂事件及び、03年の<石油クーデター>の首謀者と同一人物だ」と指摘した。

 さらに、「ベネスエラを支援する唯一の方法は、主権を全面的に尊重しつつ、立場の相違を和らげるため積極的対話を奨励することだ」と強調。続けて、「もしベネスエラでの人権や安全を懸念するのなら、多くの死傷者を出してきクーデター促進者(反政府勢力)の暴力行為を糾弾せねばならない。人を生きたまま焼くなどの彼らの行為は、最悪のファシズムを想起させる」と厳しく批判した。

 今回のANPPは、去年4月の第7回共産党大会で採択され、党中央委員会も承認した経済改革関連文書類を審議し採択するため開かれた。ラウール議長は採択された文書との関連で、「変わらねばならないものは全て変えよう。変える速度は、人民合意に基づいて」と述べた。

 議長は来年2月に退陣するが、任期が9カ月弱となったこと、石油供給源ベネスエラの政経危機、トランプ政権下で玖米関係が停滞する可能性などを踏まえ、「改革」について極めて慎重な展望ぶりだった。

▼ラ米短信   ◎バチェレー智大統領が最後の施政報告

 チレのミチェル・バチェレー大統領は6月1日、国会で最後の施政報告演説をした。来年3月11日任期を終える。バチェレーは2006~10年、14~18年の2期務めたきた。計8年間を振り返って、「貧富格差是正に努めたが容易ではなく、政策結果は完全ではなかった」と述べた。

 重点政策として、民主憲法起草過程前進、税制改革、選挙法改正、腐敗防止法制定、堕胎合法化、教育改革などで成果を挙げたと自賛した。

 また先住民族マプーチェ人の「500年越しの土地闘争」に終始符を打つため、アラウカニーアの居住地域で統合的計画を促進してきたことを強調した。

 チレでは11月19日、大統領選挙第1回投票が実施される。保守・右翼勢力が優勢と見られている。