2017年6月3日土曜日

 チリ・ピノチェー軍政期の左翼大量殺害事件関与の元DINA要員106人に実刑判決▼パブロ・ネルーダ「毒殺」の真相が10月にも判明か▼ベネズエラ政府と検事総長の対立深まる。米GM社が完全撤退を発表

 チレ第1審法廷のエルナン・クリソスト判事は6月2日、ピノチェー軍政下の1975年に、当時の秘密警察、国家情報局(DINA)にチレ国内で殺された左翼119人「拉致・強制失踪」事件の被害者16人の事件に関与したとして、元DINA軍人106人(うち女性1人)に禁錮20年~541日の実刑判決を下した。刑は控訴審の判断を受けて決まる。

 殺害された119人は、共産党(PCCH)系武闘組織「革命的左翼運動」(MIR)と社会党(PSCH)の要員。軍政は、「仲間割れによる暴力と、亜国軍政当局との戦闘により亜国内で死亡した」と虚偽情報を流した。これを虚偽情報宣伝用メディアとして設立されたブラジルと亜国の週刊誌などが報じていた。同判事は2015年にも同119人事件の容疑者79人に実刑判決を下している。

 119人殺害事件は「コロンボ作戦」と呼ばれた。南米南部のブラジル、亜国、ウルグアイ、パラグアイ、チレ、ボリビアの軍政6国が米政府の後押しで結成した「コンドル作戦」の一部だった。ニクソン米政権のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、コンドル作戦の黒幕だった。

★1973年9月のクーデターで発足したばかりのピノチェー軍政に「毒殺」された可能性が濃いノーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)の死因が10月にも公表される見通しとなった。

 ネルーダの甥ロドルフォ・レイエス=ムニョス弁護士が5月末に明らかにした。ネルーダは軍政によって首都サンティゴのサンタマリーア診療所に強制入院させられ、軍政が送り込んだ人物によって葡萄状菌を接種され死亡した可能性が浮上している。

 同弁護士は、「私は伯父が殺害された可能性を微塵も疑わない」と明言している。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は6月2日ラジオ放送で、「ニコラース・マドゥーロ大統領は制憲議会開設を思い止まるべきだ」と述べた。また、12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙を「繰り上げて早期実施すべきだ」と、国家選挙理事会(CNE)に提言した。さらに、「(政府は)検察から刑事事件捜査権を奪うつもりのようだ」と語った。

 これに対し、政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)の動員担当副党首ダリーオ・ビバスは、「(オルテガは)テロリズムとファシズムを支援しつつ暴力犯罪に密接に関わっている」と、「反政府勢力との関係」を指摘、「辞任すべきだ」と述べた。検察庁前には政府支持派が押し掛け、オルテガを「裏切り者」と呼び、辞任を求めた。

 反政府派大学生組織は2日、国営テレビ放送VTV本社にデモをかけた。VTV社長を兼ねるエルネスト・ビジェーガス情報相は学生代表を迎え入れ、対話。検察情報を基に街頭暴動最中の死者たちの死因を「正しく報道せよ」と迫る学生代表らに情報相は、「検察は捜査権を独占しているが、真実までは独占していない」と交わし、政府側には異なる死因判断があることを説明した。

 検察発表では、4月初めから暴力事件3390件を捜査、63人死亡、1189人負傷。「死者のうち19人は治安部隊要員が責任者」と見なしている。オンブズマン事務所は死者65人としている。またNGO「ベネスエラ社会紛争監視」(OVCS)によれば、4月1日~5月31日に全国で政治的な街頭暴力事件が計1791件あった。

 別件だが、米GM社は2日、カラボボ州バレンシア市から完全に撤退すると発表した。同市の工場で69年間、自動車を組み立ててきた。カラボボ州当局は「約束不履行」などを理由に4月18日同工場を接収、GMは提訴したが、最高裁が5月25日却下した。

 マドゥーロ大統領は、南アフリカとの鉱業開発技術協力、合弁会社設立で協定を結んだ2日、「我々にとって故ネルソン・マンデーラ(南ア大統領)は遺訓である。平等と平和を求め抵抗し闘争したアフリカ民族会議(ANC)の教訓は我々にも伝わっている」と述べた。