2018年4月30日月曜日

 汚職を追及されているブラジル大統領がアジア歴訪を中止▼ルーラ投獄と均衡図る狙いも▼元ボリビア軍政独裁者が死去▼進歩主義同盟がチリ前大統領を表彰

 ブラジルのミシェル・テメル大統領は4月29日、アジア歴訪を中止すると発表した。5月7日から1週間の日程でシンガポール、タイ、インドネシア、ヴェトナムを訪問する計画だった。
 政府は外遊中止の理由を「議会審議」などの都合と説明している。だが連邦警察が27日、最高裁に対し、テメル大統領の収賄資金洗浄に関する捜査を60日間延長する許可を申請したことが背景にある。

 テメルには以前から巨額の収賄容疑がかけられているが、今回は、昨年サントス港運営認可期間を複数企業に大幅延長してやった見返りに新たに収賄し、不動産取得に充てるなどして資金を洗浄した容疑。買った不動産の名義は妻や息子にしていた。

 ブラジル当局は、今年10月実施の大統領選挙最有力候補ルーラ元大統領を収賄で有罪とし、身柄を拘禁した。これに対しては世論の反発が大きく、釣り合いをとるためにもテメルを追及する必要があった。

 テメルはヂウマ・ルセーフ前大統領の下で副大統領だったが、2016年8月末の「国会クーデター」(弾劾)でルセーフを解任、暫定的に後釜に就任した。今年末、任期が終わる。「ラ米1不人気の大統領」として知られる。

 一方、ブラジル先住民族の2000人が26日ブラジリアで、テメル政権による先住民領土の「前例のないほどひどい侵害」に抗議するデモ行進と集会を実施した。

▼ボリビア軍政独裁者死去

 ボリビア現代軍政史上最悪の圧政者の一人だったルイス・ガルシア=メサ元将軍大統領(88)が4月29日、ラパスの軍事病院で心臓発作により死去した。

 1980年7月、文民のリディア・ゲイレル暫定大統領(女性)をクーデターで追放し、81年に追放されるまで軍政を率いた。その間、人道犯罪が多発した。逃亡先のブラジルで逮捕され、身柄を送還され、30年の禁固刑に服していた。

 部下で内相だったルイス・アルセ=ゴメス元大佐も、麻薬取引で逮捕されていた米国から送還され、09年より30年の禁固刑に服している。

▼チリ前大統領が表彰さる

 旧社会党など中道左翼政党の組織「進歩主義同盟」は4月29日、サンティアゴでミチェル・バチェレ―前大統領を「自由、正義、連帯」への貢献を理由に表彰した。

 この同盟は、旧社会主義インターナショナルの延長組織。チリ社会党所属のバチェレ―は2006~10年、14~18年の2度、大統領を務めた。

2018年4月29日日曜日

 コロンビア大統領選挙は右翼ドゥケ、左翼ペトロの両候補が決選進出の公算▼決選ではドゥケ優位か▼チリ大統領が縁故主義批判受け大使人事撤回

 コロンビア大統領選挙は5月27日に実施されるが、その1カ月前の4月27日、支持率調査結果が公表された。候補者は7人。過半数得票者がいない場合は、上位2候補が6月17日の決選に進出する。

 最有力候補は支持率41%のイバン・ドゥケ(41)。極右のアルバロ・ウリーベ前大統領の子飼い。ウリーベの政党「民主中央」(CD)から出馬。弁護士で、今月まで上院議員(1期目)だった。

 2番手は、32%のグスタボ・ペトロ(58)。「人間的なコロンビア」(CH)運動から出馬。青年時代に旧ゲリラ組織「4月19日運動」(M19)に参加。シパキラー市議だった80年代半ばの2年間、獄中にいた。中道左翼。
 ベルギー駐在大使、下院議員、上院議員、ボゴタ市長を歴任。2005年には「代替民主軸」(PDA)PDAから大統領選挙に出馬、133万票(得票率9%)を得て落選した。

 ドゥケとペトロが決選に進出する公算が大きい。3位以下は、セルヒオ・ファハド(連立コロンビア=CC)13%、ヘルマン・バルガス=ジェラス(前副大統領、政権党候補)8%、ウンベルト・デラカージェ(元和平交渉政府代表、自由党)2・5%など。

 決選では、ドゥヶ555%、ペトロ42・5%で、ドゥケが優位と見られている。ウリーベらは、「ペトロが勝てばコロンビアはベネズエラ化する」と、ペトロ陣営に対し激しい虚偽的罵倒攻撃を展開している。

▼チリ大統領が大使人事撤回

 セバスティアン・ピニェーラ智大統領は4月28日、実弟パブロを亜国駐在大使に任命した人事を撤回すると発表した。

 大統領は19日この人事を決定したが、野党陣営から縁故重用との非難が巻き起こった。3月11日に2期目に就任したばかりの富豪大統領は、重要人事の撤回に追い込まれ、大きな失点を記録した。

 
 

2018年4月28日土曜日

 メキシコのアヨツィナパ教員養成学校生43人強制失踪事件から3年7か月、依然未解決▼グアダラハーラの大学生3人は麻薬マフィアに殺され硫酸で溶かされる▼アルス―・グアテマラ元大統領死去

 メキシコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で2014年9月26~27日起きた学生43人の強制失踪事件および市民6人殺害事件は、未解決のまま4月26~27日で3年7か月が過ぎた。

 43人は、ゲレロ州都チルパンシンゴの郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校の学生。この両日、首都メキシコ市、イグアラ市、同学校、およびハリスコ州都グアダラハーラを中心に、事件を解決しようとしない政府への抗議デモが展開された。

 グアダラハーラ市がなぜ加わったかと言えば、同市にあるグアダラハーラ視聴覚メディア大学(CAAV)の男子学生3人が3月19日、研修取材に出掛けたまま拉致、殺害され、遺体を硫酸で溶かされてしまったことが最近明るみに出たため。3人の遺骨がDNA鑑定にふされ、学生3人のものと判明した。

 アヨツィナパ事件とCAAV事件の共通点は、麻薬マフィアが絡んでいること。CAAV学生は、ハリスコ州内で暗躍するマフィア「ハリスコ新世代」の取材に出掛けたまま行方不明になっていた。各地の学生たちは「第2のアヨツィナパ事件」と捉え、連帯している。

 農村教員養成学校生らは、乗っていたバスに、ゲレロ州に根を張るマフィアが米国のシカゴに運ぼうとしていたヘロインなどの麻薬が積んであったことから、口封じのためか、拉致され消息が不明。1~2人の遺骨が43人のうちの学生のものとDAN鑑定で判明したとされるが、遺族や世論は「43人全員の生還」を政府に訴え続けてきた。

 メキシコでは7月1日、大統領選挙が実施されるが、最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ、中道左翼)は、当選したらアヨツィナパ事件解明に尽力すると公約している。

 すでにレイムダック化して久しい汚職まみれのエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領は同事件を解決できない。なぜならば指揮下にある陸軍、連邦警察が事件に関与、同軍・警察が麻薬マフィアとつるんでいた事実があるからだ。
 この事実はすでに独立調査機関によりほぼ解明されているが、政府は認めない。

▼グアテマラ元大統領死去

 アルバロ・アルス―元大統領(72)は4月27日、ゴルフ中に心臓発作で死去した。
1996年1月から4年間、大統領を務め、同年12月29日、36年続いた内戦に終止符を打つ和平協定に、左翼ゲリラ統一組織「グアテマラ民族革命連合」(URNG)とともに調印した。

 その後、2004年から連続4期、首都グアテマラ市の市長を務めてきた。同名の息子は国会議長。政治的傾向は保守・右翼で、評判の悪いジミー・モレーノ現大統領の同盟者だった。

2018年4月27日金曜日

 ベネズエラとパナマが関係正常化で合意▼ドミニカ共和国大統領が仲介▼背景に米国などによる反マドゥーロ工作

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月26日、パナマとの関係が同日、正常化したと発表した。両国は4月5日、フアン=カルロス・バレーラ巴大統領が駐VEN大使召還を決定、駐巴VE大使に退去を促したことから関係が悪化していた。

 事の起こりはパナマが3月28日、米国、欧州、ラ米の反ベネズエラ陣営の対VEN攻勢策に同調、マドゥーロ大統領を含むVEN人55人との経済・金融取引を禁止する、と発表したこと。
 これに対しVEN はパナマ人22人と巴44社との経済取引を禁止した。これを受けて巴大統領が大使召還などを決定した。VENは4月6日、両国間の航空関係中断を決定。巴も10日、同じく航空関係を25日から90日間中止ることにした。

 だが双方にとり両国関係は重要で、ドミニカ共和国(RD)のダニーロ・メディーナ大統領に仲介の労を求めた。その結果、両国大統領が電話会談し、正常化が決まった。
 マドゥーロは、①大使相互帰任②27日から航空関係再開③両国外相の下で合同委員会を設置、両国間の諸問題の実態調査と解決法を探り、これを30日後に報告、の3点で合意した、と明らかにした。

 ベネズエラでは5月20日、大統領選挙が実施され、再選を目指すマドゥーロら5人が立候補している。米国の音頭取りで反マドゥーロ再選運動が展開されており、揺さぶり政策にパナマも加担していた。
 だが両国にとり経済関係は重要。パナマ運河のカリブ海側にあるコロン市の自由貿易地域の最重要使用国の一つがベネズエラだ。
 米政府は、パナマによる「対VEN一時的断交」を歓迎していたが、当てが外れた形になった。

2018年4月26日木曜日

 ボリビアのコチャバンバ郊外で列国議会同盟議長会議開く▼エボ・モラレス大統領は南米諸国連合(ウナスール)のボイコット6カ国に団結を呼び掛け▼FARC幹部逮捕でコロンビア和平陰る 

 ボリビア・コチャバンバ州サンベニートで4月25日、列国議会同盟の第12回議会議長会議が26日までの日程で開会した。加盟178カ国議会のうち43カ国が参加、「あなたの声が聞き入れられるために働こう」を標語に、「政治における暴力」について話し合う。

 同国のエボ・モラレス大統領は開会演説で、今会議が新築されたばかりの南米諸国連合(ウナスール、12カ国加盟)議会の議事堂で最初に開かれた国際会議であることを強調。同連合加盟諸国に向けて、「南米域内にはイデオロギーや政治の違いがあるが、違いを尊重しつつ団結し、南米市民から世界市民になろうではないか」と呼び掛けた。

 それというのも、加盟国の半数に当たる亜パラグアイ伯智コロンビア秘の6カ国が、イデオロギー的相違に基づく対立からウナスール行事ボイコットを表明したからだ。このような状態が長引けば、せっかく完成した議事堂も意味が薄れてしまう。

 ボリビア国会のガブリエーラ・モンターニョ議長によると、約50各国の議会の議長は女性。ボリビアでは国会議員は男女半々であり、同議長は「この点でボリビアは先進的だ」と自賛した。

 参加43カ国のうち議長が出席しているのは、ウルグアイ、コスタ・リカ、ロシア、フィジーや、アンゴラ、ジンバブウェ、赤道ギニア、ニジェール、レソト、ボツワナ、ウガンダなどアフリカ諸国などだという。
 南米のボイコット6カ国議会は欠席。ウナスールの「分裂」は、地域を超えた国際会議にも影響を及ぼしている。

▼コロンビア和平に陰り

 コロンビア和平(2016年11月)でゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)は政党「人民革命代替勢力」(FARC)になった。同党は3月11日の国会議員選挙に初めて参加したが、全体で5万票程度しか獲得できず、選挙民の信頼が薄いことが印象付けられた。
 だが和平合意により選挙結果とは別にFARCは、上下両院で5議席ずつ与えられることになっている。新議会は7月20日開会するが、FARCは5人ずつ計10人の議員名簿を選管に提出していた。

 ところが政府当局は、FARC下院議員名簿筆頭のヘスース・サントゥリッチ元司令を4月9日ボゴタで逮捕、米国に身柄を送ろうとしている。麻薬取引容疑で元司令を手配していた米政府の要請に従った措置。元司令は拘置所で断食、半月たち衰弱しているという。

 和平交渉のFARC代表だった大幹部で上院議員名簿筆頭のイバン・マルケス政治顧問は24日、上院議席に着かないと表明した。理由は、政府側が和平合意より米国を優先、元司令を逮捕、身柄を引渡そうとしていること。
 サントゥリッチ逮捕とマルケス拒否で、残る8人のFARC議員内定者に動揺が広がるのは避けられない。
 和平合意で16年にノーベル平和賞を受賞したJMサントス・コロンビア大統領は、中立的、仲介者的立場を捨て、米国やラ米保守・右翼勢力寄りに傾斜している。大きな問題は、ここにある。

2018年4月25日水曜日

 ボリビアがリチウム生産の合弁相手をドイツ企業と決定▼ウユニ塩湖に鉱脈眠る▼リチウム電池は電気自動車などに使用

 ボリビア政府は4月24日、同国のリティオ(リチウム)をドイツ企業と合弁で開発する、と発表した。独ACIシステム社で、主目的はリチウム電池の生産。

 ボリビア大高原(アルティプラ―ノ)南部にある広大なウユニ塩湖にはリチウムが眠る。この一帯と亜智両国北部を合わせて「リチウム三角形」と呼ばれている。ボリビアの埋蔵量は世界全体の4分の1とされる。

 国営ボリビア・リチウム鉱床(YLB、フアン=カルロス・モンテネグロ社長)は先週末、エボ・モラレス大統領と話し合い、独社の落札を決定した。

 初期投資13億2800万ドルで、出資率はボリビア51%、独社49%。水酸基、陰極、電池、マグネシウム水酸基をそれぞれ生産する4つの工場を3年内に建設する。

 独社はリチウム電池などの生産と商業化を担当。ボリビア国庫には年間11憶ドルの収益が入ることになるという。リチウム電池は電気自動車、パソコン、携帯電話などに使われる戦略的希少金属。

 入札には、中国5社、露独加各1社の計8社が参加。最後には露ウラニウム・ワングループ社と独社が残り、独社が選ばれた。

 ニカラグアの反政府抵抗行動下火に▼オルテガ夫妻政権に退陣求める声も▼カトリック教会が対話仲介へ▼学校教育も25日再開

 ニカラグアでは先週半ばに始まった社会保障改革をめぐる反政府行動が全国的に拡大し、4月23日現在、公式発表で26人が死亡した。治安部隊の発砲、私刑などによる。
    赤十字や人権団体の集計では死者28人、負傷者428人。逮捕者および所在不明者が約200人いるという。反政府行動は24日下火になった。

 首都マナグア中心部では23日、数千人ないし1万人強の大規模な反政府デモ行進が展開された。エステリ、マタガルパ両市でもデモがあった。
 参加者が「オルテガ退陣」を要求するのが目立った。その落書きが、あちこちの公共建築物などの壁面に殴り書きされている。

 ダニエル・オルテガ大統領は21日、「反政府勢力がニカラグアを破壊するため不安定化を謀っている」と批判したが、22日改革を撤回。カトリック教会を仲介者として「国民対話」を呼び掛けた。これを受けてニカラグア司教会議は24日、仲介に同意した。

 今回の反政府行動の主体である大学生らは、大統領および、その夫人でもあるロサリオ・ムリージョ副大統領の退陣を要求している。社会保障改革問題の解決とは別に、政権への不満が解消されるかどうかは不確かだ。不満がくすぶり続けるのは確かだ。

 暴動状況で授業が休止されていた小学校から大学に至る教育機関は25日に授業を再開させる。特に大学では学生が集まれば、政治的行動が再発する可能性がある。

 今回の出来事の中心にあった社会保障庁(INSS)は、赤字7600万ドルを抱える。このため政府は労使および年金生活者に負担増を求める改革を発動していた。これが総スカンを食らったわけだ。
 専門家は、オルテガ政権が発足した2007年初め当時、INSSは3260万ドルの黒字だったと指摘する。政府の腐敗により赤字になった、との批判が出ている。

 改革が官報に記載されるや、経団連(COSEP)が生産と経済成長を阻害すると反対。これを受けて、首都マナグアにあるイエズス会運営の中米大学(UCA)の学生十数人が抗議集会を開いた。
 これが国立農大(UNA)、国立工学大(UNI)、バプティスト運営のニカラグア工科大(UPOLI)、トマ―ス・モア大(UTM)や、中等学校に波及した。
 闘争の中核となったUPOLIには学生数百人が籠城。警察は22、23両日、同大学を捜索た。

 野党、反政府メディア、学生を含む反政府市民は、今回の騒乱状況を11年以上も続いているオルテガ政権の打倒に繋げたいところと見られる。だが統合組織はなく、強力な指導者も見当たらない。学生らは、野党も経団連も自分たちの代表とは思えないと言う。

 ある評論家は、オルテガ大統領の政治的出自である1979年のサンディニスタ革命を念頭に、そのかすかな延長線上にある現状を「蝕まれた革命」と評した。
 今回の事態を「市民の蜂起」と捉え、その打開には出直し選挙しかないと見る向きもある。しかし、その前提として、選管要員の公正な選出が不可欠と指摘する。オルテガ夫妻のサンディニスタ政権が、3権と選管をすべて握っているためだ。

 別の評論家は、ベネズエラで昨年4~6月起きたマドゥーロ政権打倒のための街頭暴動の焼き直しであり、背後に米政府があると見る。

 国際社会にも波紋が広がっており、国連、欧州連合、米州諸国機構(OEA)、米政府、ラ米諸国などから懸念の声が出ている。
 地元中米では、コスタ・リカ外相が中米統合機構(SICA)加盟諸国に打診、ニカラグア問題をOEAなど国際機関に提起するかどうかを探っていた。

 大統領再選を制限する憲法規定を最高裁判断で変え、再選を繰り返してきたオルテガ大統領は、2021年の次回大統領選挙では夫人ムリージョを大統領候補に擁立したい構だ。
 だが、その長期的野望は今、挫折するかどうか先行きを占うべき微妙な局面に差し掛かっているかに見える。ただしオルテガ体制は強力で、簡単には揺るぎそうにないのも事実だ。貧困大衆の多くは政府を支持している。

2018年4月24日火曜日

ニカラグア人作家セルヒオ・ラミーレスがセルバンテス賞を受賞▼その賞を抗議行動で死んだ同胞若者らに捧げると強調

 ニカラグアの作家セルヒオ・ラミーレス(75)が4月23日、スペイン語文学界の最高賞とされるセルバンテス賞(2017年度、賞金14万 8000ドル)を受賞した。
 マドリード郊外のセルバンテスの故郷アルカラデエナーレスの同名の大学で授賞式が催され、ラミーレスは国王フェリーペ6世から賞を授けられた。

 ラミーレスは小説、物語、論文など多作。『狼狽と迫害』(1971)、『神々しい罰』(1988)、『ある仮面舞踏会』(1998)などの小説が有名。
 ラミーレスは受賞講演で、母国の詩人ルベーン・ダリーオに触れ、「中米の小国ニカラグアの国家基盤が、剣を天に向けてかざす将軍でなく一詩人によって築かれたのは興味深い」と述べた。

 作家はまた、この賞を過去数日間に「正義のために闘って死んだニカラグア人に捧げる」と強調。「彼らはニカラグアを共和国に戻すために戦っている」と讃えた。
 マドリード中心部のプエルタデルソル広場では22日、オルテガ・ニカラグア政権への抗議集会が開かれたが、ラミーレスは同伴した家族とともに参加した。

 ラミーレスは1960年代から作家活動を始めていたが、70年代にソモサ独裁打倒を目指すサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)に参加。79年7月19日のサンディニスタ革命後、政府評議会のメンバーになった。
 85~90年、ダニエル・オルテガ大統領の下で副大統領を務めた。90~95年は国会議員を務めたが、野に下っていたオルテガのFSLN から分派した「サンディニスタ刷新運動」(MRS)に参加。96年の大統領選挙にMRSから出馬、落選したが1万5000票を得た。

 その後、作家活動中心の生活に戻った。一方、オルテガは21世紀に大統領選挙で返り咲き、現在連続3期目の政権にある。その政権が先週、社会保障改革に強引に踏み切ったことから抗議行動が全国に波及、首都マナグアなど数都市に軍隊が治安出動した。
 一連の市民と治安部隊との衝突で25人以上が死亡したと伝えられる。その死者にラミーレスはセルバンテス賞を捧げたわけだ。
 ラミーレスが「共和国に戻すため」と言ったのは、オルテガ夫妻の長期政権支配を「王政」のように捉えているからだ。

2018年4月23日月曜日

 パラグアイ大統領選挙は保守陣営候補アブド=べニーテスが当選▼ニカラグア政府が騒乱状況受け政策を撤回▼ベネズエラ大統領選挙の公式選挙戦始まる▼ボリビア大統領が露中歴訪へ

 パラグアイで4月22日、大統領選挙が実施された。オラシオ・カルテス現大統領の政権党コロラード党(保守・右翼)候補マリオ・アブド=ベニーテス(46)と、野党連合「勝利同盟」(AG、リベラル・左翼)のエフライーン・アレーグレ(55)の事実上の一騎打ち。

 同夜の開票率96%段階での選管発表で、得票率はアブド=ベニーテスが46・49%、アレーグレが42・73%。選管はアブド=ベニーテスを当確とした。有権者は420万人で、投票率は62%。決選投票制度はない。

 アブド・ベニーテスの父親は、かつて独裁者アルフレド・ストロエスネル将軍大統領(故人)の側近で、その時代に蓄財した人物。

 当初、カルテス大統領が選挙規定を変えて再選出馬しようと画策したが、アブド=べニーテスがこれに反対。政権党候補の座を獲得した。

▼ニカラグアが社会保障改革を撤回

 ダニエル・オルテガ大統領は4月22日、使用者、労働者、年金生活者に負担を強いる年金制度改革を撤回した。全土に抗議行動が拡がり、死者は20人を超え、略奪や放火による被害も拡大していた。

 21日にはカリブ海岸のブルーフィールド市で、抗議する市民と警官隊が対峙する様子を取材していたビデオジャーナリスト、アンヘル・ガオーナが後方から頭部を銃撃され、即死した。死者は28人に達したとする人権団体もある。負傷者は100人を超える。

 連続3期目のオルテガ・サンディ二スタ長期政権下のニカラグアは「治安が中米一良好な国」とされてきたが、政権が舵取りを誤れば、今回のような事態に陥ることが広く認識された。

 今回の一連の暴動状況は、権威を否定し自らの意のままに行動する個人主義の強い大学生や若年労働者が中心と伝えられる。彼らは、個人主義を幾分か捨てて両親や祖父母の年金生活者のためにも街頭闘争に参加した、と分析されている。
 オルテガ政権は、騒乱状況によって重要政策の撤回を迫られたことから、打撃は深刻だ。

▼ベネズエラ大統領選挙の公式選挙戦開始

 5月20日の大統領選挙に向けて4月22日開始された。再選を狙うニコラース・マドゥーロ大統領、元チャベス派で野党のヘンリー・ファルコンら候補は5人。

▼ボリビア大統領が露中歴訪へ

 ボリビア政府は4月22日、エボ・モラレス大統領が6月14日モスクワで、ウラジーミル・プーチン大統領と、19日北京で習近平中国主席とそれぞれ会談すると発表した。
 エボは22日ハバナ入りし、23日、ミゲル・ディアスカネル玖議長と会談する。

 

2018年4月22日日曜日

 ニカラグアで社会保障分担金増額めぐり市民が抵抗、死傷者出る▼コロンビアELNゲリラの和平交渉が中断余儀なくさる▼ハバナでキューバとベネズエラが首脳会談

 ニカラグアで4月18日からが反政府抵抗活動が続いている。死者は大学生ら少なくとも10人に達した。うち1人は警官。
 事の起こりは、官報に17日記載された社会保障分担金改革。破産寸前と伝えられる社会保障庁(INSS)の窮状を和らげる措置だった。

 分担金増額は7月1日から。労働者は現行の月給の6・25%から7%に引き上げられる。年金生活者は年金月額の5%を健保負担金として支払はねばならなくなる。

 使用者は、現行の19%が21%に2ポイント増える。さらに2019年1月から1p増しの22%、20年1月から0・5p増しで22・5%になる。
 私企業高等会議(COSEP、経団連)はすぐさま反対を表明。労働者、大学生、年金生活者らも街に繰り出した。

 ダニエル・オルテガ大統領のサンディニスタ政権は警察機動隊に加え、棍棒などで実力行使する青年団を出動させ、バリケードや投石で抵抗する大学生らを制圧した。

 オルテガは21日、COSEPに年金改革決定を修正するための話し合いを呼び掛けた。これに対しCOSEPは、まず弾圧を止め反対運動の自由を認めるべきだと応じ、これを対話受け入れの条件とした。

 4日間続く若者ら市民の反政府行動には、オルテガと、その妻であるロサリオ・ムリージョ副統領の「夫妻強権政権」に対する反感の表れという側面がある。

▼ELN和平交渉が中断

 コロンビアのゲリラ組織「民族解放軍」(ELN)の和平交渉代表パブロ・ベルトラーンは4月21日キトで、レニーン・モレーノ赤道国大統領の発言に「傷つけられた」と表明した。

 同大統領は18日、ELNがテロ活動を止めなければ和平交渉の保障国であること、および和平交渉地(キト)提供を打ち切る、との声明を出した。
 大統領はコロンビア国境地帯で最近起きたエクアドール人報道チーム3人のFARC残党集団による拉致殺害事件を受け、厳しい態度に出た。
 ベルトラーンは、ELNはエクアドール国境地帯では活動していない、と反論している。

 ベルトラーンとコロンビア政府和平交渉代表グスタボ・ベルはモレーノ大統領声明を受け20日、キトで共同声明を発表。赤道国の寄与に謝意を表すとともに、和平交渉第5回話し合いは停止せざるを得なくなったと明らかにした。

 一方、コロンビアのJMサントス大統領は20日、チリ、ブラジル、キューバ、ノルウェー4カ国首脳から電話があり、代替交渉地を提供するとの申し出があったと述べた。同4カ国は交渉保証国。同じ立場にあるベネズエラは電話していないという。

 この和平交渉は2017年2月キト郊外で開始、10月1日から18年1月9日までの停戦を実現させた。今月2日には、その停戦の検証が行われた。

▼ハバナで玖VEN首脳会談

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月21日ハバナで、ミゲル・ディアスカネル玖国家評議会議長と会談した。キューバ元首の交代に伴い、協力関係の現状と今後の在り方を話し合うのが目的。
 VEN大統領にはJアレアサ外相、Eハウア教育相、マヌエル・ケベードPDVSA社長らが同行している。

 マドゥーロ夫人シリア・フローレスと、ディアスカネル夫人リス・クエスタは「プリメラ・ダマ(ファーストレディー)」行事をこなした。キューバにとっては初めての首脳夫人同士の外交交流となった。
 23日にはボリビアのエボ・モラレス大統領が来訪し、玖議長と会談する。

2018年4月21日土曜日

 南米諸国連合(ウナスール)が瓦解の危機▼路線対立から保守・右翼陣営6カ国が活動参加を拒否▼南米統合路線は停滞

 南米大陸の12カ国が統合の理想の下で加盟する南米諸国連合(ウナスール)が4月20日、瓦解する危機に陥った。今月、議長国(任期1年)に収まったボリビアのフェルナンド・ウアナクニ外相は同日、キトの同連合本部で記者会見し、特別外相会議を5月開いて、打開策を探る方針を示した。

 域内の保守・右翼諸国である亜パラグアイ伯智コロンビア秘の6カ国外相は18日付で書簡をウアナクニ外相に送付、空席のウナスール事務局長の選出問題が片付くまでは同連合の会合や行事などに一切参加しない、と通告した。事実上の「脱退通告」と受け止める向きもある。

 今月まで議長国だった亜国のマウリシオ・マクリ大統領は昨年末、チリ駐在の亜国大使ホセ・ボルドーンを事務局長を候補に擁立したが、域内左翼のベネズエラとボリビアに反対された。これにより左右の路線対立が一挙に表面化した。
 加盟12カ国の合意で決定する決まりがあるため、ボルドーンは選出されなかった。マクリは以来、ウナスール「脱退」を検討してきた。

 6カ国以外の加盟国はベネズエラ、ボリビア、エクアドール、ウルグアイ、ガイアナ、スリナム。このうちガイアナは、参加拒否を表明した6カ国に立場が近い。

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は20日、キューバ訪問に先立ちカラカスで記者会見し、「域内右翼諸国は米政府の圧力を受けて<脱退>を決めた。彼らに言いたいのは、少しでも南米の国であるという自覚を持ってほしいということだ」と述べた。
 マドゥ―ロは19日就任したばかりのミゲル・ディアスカネル玖国家評議会議長と会談する最初の外国首脳となる。

 ウナスールは、チャベスVEN、ルーラ伯、キルチネル亜、コレア赤の4大統領がいた2008~10年前半に最も強力な時期にあったあが、チャベスとキルチネルは死去、ルーラとコレアは任期を終え、トランプ米政権の登場もあって、保守・右翼陣営が力を盛り返している。

 米州35カ国のうち米加両国を除く33カ国が加盟するラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)も、中核のウナスールの弱体化で存在感を大幅に失いつつある。ラ米左翼・進歩主義陣営にとり「冬の時代」が厳しくなっている。

 米国主導で米州・日欧16か国が「反べネズエラ」合意▼1カ月後に迫ったVEN大統領選挙をにらんだ牽制措置▼「マドゥーロ憎し」に巻き込まれた日本 

 日米欧を含む16か国は4月19日ワシントンで会合、ベネズエラ政府高官ら公務員が腐敗で得た利益を摘発し差し押さえるため協力することで合意した。16か国は、調査や情報を交換し、腐敗利益を暴き出すとしている。

 スティーヴン・ムニューシン米財務長官の主導で、米州から米加墨グアテマラ・パナマ・コロンビア秘パラグアイ伯亜の10か国と、西仏独伊英および日本が参加した。
 16か国はまた、マドゥーロ・ベネズエラ政権が倒れた場合、同国に総額600憶ドルを融資する計画も検討中。「マーシャル計画」のような復興協力計画という。

 またドナルド・トランプ米大統領は19日、ベネズエラの仮想通貨「エル・ペトロ」(石油)に米投資家が投資するのを禁止する政令を出した。

 べネズエラでは5月20日、大統領選挙が予定されており、ニコラース・マドゥーロ大統領の再選が有力視されている。
 だがこの選挙と選挙結果を認めないと公言する米国および一部ラ米諸国は、米州域外の日欧に働きかけて今回の16か国協力合意に漕ぎ着けた。

 この措置は、マドゥーロ体制存続を阻みたいが軍事介入をラ米側の反対で封じ込められているトランプ政権が、日欧を加え「反ベネズエラ国際戦線」結成を印象付けるため打ったもの。

 一方、キューバ、ボリビア、ニカラグア、ハイチ、ドミニカ共和国や、一部カリブ諸国はベネズエラを支持。ウルグアイ、エル・サルバドールなども「反べネズエラ連合結成」に反対している。
 こうしたラ米の分裂のため、13、14両日リマで開かれた第8回米州首脳会議は、「反べネズエラ統一戦線」を構築できなかった。米政府は、苦肉の策として日欧を巻き込んだわけだ。

2018年4月20日金曜日

 キューバ共産党の次期第1書記はミゲル・ディアスカネル議長、とラウール・カストロ前議長が言明▼新議長はラウール世代の意志決定尊重を誓う 

 キューバのミゲル・ディアスカネル国家評議会議長(20日で58歳)は4月19日、人民権力全国会議(ANPP)での就任演説で、ラウール・カストロ前議長(6月で87歳)ら革命戦争を戦った「歴史的世代」の長老たちに敬意と感謝を表明。「過ちと規律不足を正し、革命を継続、社会主義革命を守り完全なものにする」と強調した。

 さらに「必要な改革は、キューバ主権に基づいて決定される」とのべ、米国など外部からの譲歩要求の干渉をはね付ける意志を表明した。
 また「われわれはキューバだ。つまり抵抗・歓喜・創造・連帯・人生だ」と謳い上げた。そして「フィデルが次世代の役割を果たしたように、我々は自分たちの世代の役割を担う」と語った。

 最後は「祖国か死か。社会主義か死か。勝利するぞ!」とこぶしを固めた右手を振り上げて感動気味に叫び、フィデルの革命用語を使って演説を締めくくった。30分の演説だった。

 次いで、ラウール前議長が退任演説を1時間半に亘り、冗談をちりばめながら上機嫌でぶった。「規定通り2021年4月まで共産党(PCC)第1書記に留まるが、中途で私が死んだらディアスカネル議長が後を継ぐ。議長と第1書記が同一人物になるのが望ましい」と述べた。この発言には権力闘争を避ける狙いがある。

 また「彼(新議長)は即席の指導者ではない。偶然でも急ぎの決定の産物でもない。イデオロギー、政治感覚、革命への関与と忠誠の結果だ」と強調、新議長体制を支援してゆくと述べた。
 だが、「私がしたように、2期(10年)務めたら後任に地位を譲らねばならい」と釘を刺すのを忘れなかった。

 さらにANPP内に委員会を設置し、改憲案を起草、7月に提示すると約束した。長年の課題である二重通貨制度解消問題については、「通貨の一本化は依然頭痛の種だ」と述べ、難題であることを想起させた。
 外交ではトランプ米政権を「新覇権主義」と指摘、先週リマでの米州首脳会議でブルーノ・ロドリゲス玖外相がマイク・ペンス米副大統領によるキューバとベネズエラへの内政干渉発言に対し堂々と反駁したのを讃えた。

 ラウールは「次はメイデー行進の場で会おう」と言い演説を終え、新議長に見送られて議場を後にした。

堂々と
 

 社会主義キューバにミゲル・ディアスカネル議長の新政権が発足 

 キューバで4月19日、ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長が正式に就任、新政権が発足した。新議長は就任演説でカストロ兄弟の遺産や教えを守ると強調、現状を維持しつつ経済改革や改憲を進めてゆくことになる。

 1959年元日の革命で権力を掌握したフィデル・カストロ反乱軍最高司令官は、同年2月首相に就任。65年に新しい玖共産党(PCC)の発足に伴い、第1書記になった。
 76年にはソ連型政治機構に移行、大統領制は廃止され、フィデルは国家評議会議長(国家元首)兼・閣僚評議会議長(首相)となり、革命軍最高司令官と第1書記も兼任した。

 フィデルは2006年7月、大腸癌とされる重病で倒れ、実弟ラウール・カストロ革命軍相兼第2書記(当時)ら集団指導部に政権を暫定的に委譲、回復を期した。だが叶わず08年2月、正式にラウールに政権を渡した。

 ラウールは長年、兄フィデルの政治を陰で支え続け、キューバの抱える問題点を知り尽くしていた。1人の人物の長期支配の弊害も知り、要職の任期を1期5年、1人2期までと決めた。
 11年のPCC大会で第1書記に就任、市場原理を導入する経済社会改革に着手。16年のPCC大会で改革路線継続を確認した。13年1月移民法を改正、出入国を大幅に自由化した。

 13年2月、2期目に入ったラウールは30歳若いディアスカネルを第1副議長に抜擢、帝王学を授けてきた。14年12月、バラク・オバマ米大統領と国交正常化で合意、15年7月国交を54年ぶりに回復。16年3月にはオバマが訪玖した。

 ラウールは21年の次回第8回PCC大会まで第1書記として新議長の後ろ盾となる。新議長は党政治局員だが、それまで3年間の施政が成功すれば、第1書記に道が開かれる。

 6月に87歳になるラウールは、生まれ故郷に近く、革命戦争を戦ったマエストラ山脈東方のサンティアゴ市で余生を送りたい構え。妻ビルマ・エスピンやフィデルの墓もある。だが党務をこなし革命軍の団結を図りながら、新議長を支えねばならない。
 ディアスカネル議長は、オバマ前政権とは打って変わったトランプ米政権の締め付けの下で、難しい対米関係や経済改革の舵取りを迫られる。

2018年4月19日木曜日

★キューバ国会が国家評議会員31人を選出。ミゲル・ディアスカネル第1副議長が議長候補に▼注目の第1副議長候補には労働界代表のサルバドール・バルデス=メサ▼全体的にラウール路線継続の色合い

 社会主義キューバの人民権力全国会議(ANPP,国会)は4月18日、首都ハバナの会議殿堂で特別本会議を開き、3月の選挙で当選した605人(うち1人欠席)の議員が就任、同議会内に設置される最高意志決定機関、国家評議会の会員候補31人を選出した。

 ラウール・カストロ現国家評議会議長の後任には、ミゲル・ディアスカネル現第1副議長が予想通り推挙された。同氏は57歳だが、間もなく58歳になる。

 第1副議長には、元キューバ労働者中央同盟(CTC)議長サルバドール・バルデス=メサが推薦された。就任すれば、エステバン・ラソANPP議長と並び、黒人系最高位となる。

 5人の副議長には、ラミーロ・バルデス(85)、ロベルト・モラレス、グラディス・ベへラーノ、イネース=マリーア・チャプマン、ベアトゥリス・ジョンソンが推薦された。グラディス以下3人は女性。

 また「官房長官」役の書記には、オメーロ・アコスタが推挙された。他の23人は平会員。事実上の決定で、31人は19日正式に就任する。
 ラウール議長は政権を離れ、共産党(PCC)第1書記として、新議長の後ろ盾になる。

 今回の人事の特色は、第1副議長に労働界指導者バルデス=メサが内定したこと、および革命第1世代のラミーロ・バルデスが5人の副議長の首席の地位に就くこと。
 バルデス=メサは72歳で旧世代に繋がり、「労働者主体の経済改革」というラウール政権の建前(政策)を継承する。また革命司令官ラミーロはラウールの腹心として、新しい国家評議会に「にらみ」を利かせることになる。
 女性3人の副議長登用は、「男女平等」政策にほぼ合致する。

 新議長となるディアスカネルは電気技師。出身州ビージャクラーラで共産主義青年同盟(UJC)幹部となり、次いで同州共産党第1書記に就任。大学で教鞭もとった。
 ラウール議長は2013年に自身の後継者の地位である第1副議長に抜擢、「帝王学」を授けてきた。

 2016年半ばに来日し、安倍首相らと会談した。この時の招待で安倍首相は同年9月末、日本の首相として初めてキューバを訪問し、カストロ兄弟と会談した。
 首相はラウール議長の訪日を招待したが、実現しないまま議長は19日任期を終える。ディアスカネル新議長が日本をキューバ議長として初めて公式訪問する可能性がある。
 故フィデル・カストロ前議長は非公式に2度来日した。

 18日にはANPP議長選挙もあり、エステバン・ラソ現議長が再任された。議員605人のうち女性は322人、男性は283人。

 これでカストロ一族でない人物が初めてキューバ政府の最高指導者になることが確定した。1959年元日の革命から実に59年、ようやく世代交代が実現する。

   一方、ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は18日、ラウール議長を祝福するメッセージを送り、近くディアスカネル新議長に会うため訪玖したいと述べた。

2018年4月18日水曜日

 ボリビアが南米諸国連合(ウナスール)議長国就任、連合活性化へ▼トランプ米大統領が一部ラ米大統領にベネズエラへの軍事介入を働きかけたとエボ・モラレス大統領明かす

 ボリビア政府は4月17日、南米諸国連合(ウナスール)の議長国を亜国から引き継いだと正式に発表した。任期は向こう1年間。
 この日付は、ウナスールの発足記念日。2007年のこの日、ベネズエラのマルガリータ島で南米エネルギー首脳会議が開かれた折、南米諸国共同体(CSN)をウナスールと改名することが決まった。その後、08年5月ブラジリアでウナスール設立条約が結ばれた

 亜ウルグアイ伯パラグアイ智ボリビア秘コロンビア赤ベネズエラのラ米10か国と、ガイアナ、スリナムの計12か国が加盟。本部は赤道国のキトに置かれた。
 ウナスールは、南米の大多数が進歩主義・左翼諸国となっていたことから、域内の紛争などを解決する有力な手段だった。

 だが2013年にウーゴ・チャベスVEN大統領が死去、15年末、亜国に財界右翼のマウリシオ・マクリ大統領が登場、16年8月、ブラジル国会のクーデターでヂウマ・ルセーフ大統領が弾劾され労働者党(PT)政権が崩壊。南米は急激に右旋回した。
 するとウナスールは団結を失い、実質的に機能しなくなった。首脳会議も開けなくなった。

 そんな状況の下、ボリビア先住民族アイマラ人のエボ・モラレス大統領がウナスールの顔となった。エボは政治基盤であるコチャバンバ州のサンベニート市にウナスール・ボリビア本部を建設中。エボはウナスール活性化を外交の中心に置いている。

 ボリビア外務省は17日、「ウナスールには南米市民4万人の認同(イデンティダー=アイデンティティー)が懸かっている。それは文化、社会、経済、政治的な南米統合過程で形成される」と声明で強調した。
 さらに、「そのためにボリビアは対話、協力、平和、民主、市民参加、人権尊重を深化させる」と述べた。
 ボリビアはまた、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、加盟33か国)の議長国を19年に務める。

 難題は、ウナスール事務局長が空席であること。17年1月にエルネスト・サンペル(元コロンビア大統領)が退任して以来、後任が決まらない。南米右旋回で12か国の合意形成が困難になったためだ。
 このほどリマで開かれた第8回米州首脳会議でも南米は、「反ベネズエラ」の亜パラグアイ伯智コロンビア秘ガイアナと、そうでないボリビア赤ウルグアイVENスリナムと、「7対5」に分裂した(VENは不参加)。

 エボは首脳会議後の15日カラカスを訪問、ニコラース・マドゥーロ大統領に首脳会議の内容を伝え、併せてウナスールとCELACの運営について協議した。
 カラカスでの記者会見でマドゥーロは、「リマ会議ではイデオロギーと政治の不寛容が支配した。それは米州首脳会議が終わりの始まりに陥ったことを意味する。かつて南米右翼がコロンビアのウリーベ政権だけだった時、誰もコロンビアを制裁しようなどと言い出さなかった」と述べた。

 マドゥーロはまた、VENはウナスール、CELAC、ALBA(米州ボリバリアーナ同盟)、カリブ石油連帯機構(ペトロカリーベ)などを通じて地域の多様性を追求してゆく、と語った。

 VEN外務省は17日、カラカスの米大使館(大使無し)を訪れ、米国が14日リマで「反ベネズエラ」のリマグループ(グリマ)14か国と共に(首脳会議枠外で)宣言を出したことに内政干渉として抗議した。
 マドゥーロは17日、米英仏軍によるシリア爆撃について、「VENにはシリア系100万人がいる」と指摘、爆撃を糾弾した。

 一方、エボはラパスで17日、テレスール(南部テレビ放送、本部カラカス)との会見で、「昨年9月国連の場でトランプ(米大統領)と会ったラ米諸国の大統領の一人からリマで打ち明けられたのだが、トランプからベネズエラへの軍事介入に賛成するよう働きかけられたという」と暴露した。
 トランプは当時、国連でブラジル、コロンビア、ペルーなどの大統領と会談している。

 コチャバンバ市では今月下旬、第12回南米議会議長会議、列国議会同盟議長会議が開かれる。

2018年4月17日火曜日

 キューバ議会が18日、最高幹部31人選出へ▼その中から19日、次期議長(国家元首)を互選▼新議長にはミゲル・ディアスカネル第1副議長が事実上内定

 キューバ各国営メディアは4月16日、人民権力全国会議(ANPP、国会に該当)が18日、国家評議会員31人を選び、19日、新しい国家評議会議長(国家元首)らが決定、就任すると一斉に報じた。

 ANPP議員選挙は3月11日実施され、共産党員605人が当選した。当選者は18日に正式に就任(任期5年)し、最高決定機関である国家評議会員を議員の中から選ぶ。
 選ばれた国家評議会員31人は19日、議長、第1副議長、副議長(5人)、書記を互選する。残る23人は平会委員となる。

 ラウール・カストロ議長は引退するが、共産党第1書記として影響力を維持する。後任には、現第1副議長のミゲル・ディアスカネル(共産党政治局員)が内定している。
 新しい第1副議長には、ブルーノ・ロドリゲス現外相(政治局員)や、共産党ハバナ支党第1書記らが有力視されている。

 議長は閣僚評議会議長(首相)と革命軍(FAR)最高司令官を兼ねる。だがディアスカネルが議長になった場合、最高司令官をラウール第1書記が維持し続ける可能性があると観測されている。

 4月16日は、故フィデル・カストロ前議長が首相だった1961年のこの日、キューバ革命の「社会主義革命的性格」を宣言した57周年記念日。
 フィデルは、CIAがキューバの空港3か所を15日空爆し、玖軍用機を破壊、キューバ人7人が死亡、約50人が負傷したのを受け、対米抵抗の意志を示すかのように「社会主義革命的性格」を宣言した。

 翌61年4月17日、ニカラグアから発信したCIA仕立ての反革命在米キューバ人1200人の部隊がキューバ南海岸コチーノス(豚)湾ラルガ浜とヒロン浜に上陸、カストロ体制打倒作戦を開始した。
 だが上陸を逸早く察知したフィデルはまず民兵隊で防衛線を張り、次いで革命軍を動員して対抗した。フィデルが最前線で指揮を執り、19日までに侵攻部隊の一部を制圧、大多数を捕虜にした。
 フィデルは「米帝軍事作戦に対するラ米側の勝利」と謳い、「プラヤ・ヒロン(ヒロン浜)」は、栄光の勝利の代名詞となった。

 その栄光の19日に、新しい国家評議会議長が就任するわけだ。3年後の2021年のこの日は次回共産党大会の最終日となる。議長就任日をこの日に合わせたのは、将来的に議長と第1書記を一致させる狙いを持つ。 

 ベリーズ南部の領有権問題を国際司法裁判所に提訴するか否か。その是非問うグアテマラの国民投票で提訴支持が勝つ▼ベリーズは年末に国民投票実施か 

 グアテマラは、北の隣国ベリーズ(旧英領ホンジュラス)の南半分の領土約1万1000km2の領有権を主張してきた。この領有権問題をハーグの国際司法裁判所に提訴するか否かを問う国民投票が4月15日実施された。

 有権者は750万人。だが投票したのは23%強で、76%は棄権した。それでも提訴賛成が96%(約168万人)で、提訴を訴えるジミー・モラレス大統領の保守政権は勝利した。
 同大統領は、この国民投票に備え、直前の2日間リマで開催された第8回米州首脳会議を欠席した。だが内政の失政から外に目をそらすため領有権問題を持ち出したとの批判もある。危険率の高さが有権者の関心の薄さを示している。

 この領有権問題は159年前の1859年に生じた。明治維新の翌年だ。グアテマラは英国と、ベリーズのカリブ海岸からグアテマラの首都グアテマラ市まで道路を建設する合意を結んだ。
 だがグアテマラは87年後の1946年、この合意を破棄した。道路が建設されなかったことを理由にしたが、合意に縛り付けられたままでは領有権を失いかねないとの懸念があったためだ。

 ここで、1859年の合意に至る歴史を見る必要がある。ベリーズのあるユカタン半島もグアテマラも、他の中米諸国もメキシコも1821年までは、スペイン領ヌエバ・エスパーニャ(新スペイン)だった。

 英国人は18世紀後半に現在のベリーズ北部に入植、スペインは1783年と1786年に英国人に木材開発権を認めた。その後、英国人入植地は増え、19世紀初頭のヌエバ・エスパーニャ独立戦争のさなか、入植地を南下させた。

 その南半分をグアテマラは、ヌエバ・エスパーニャから引き継いだとして、領有権を主張してきた。

 英領ホンジュラスは1981年独立し、英連邦の一員になった。グアテマラは承認を拒否していたが、1991年に独立を認めた。同年、ベリーズ南部の領有権問題のある地域とグアテマラの間に「仮の国境線」が引かれ、今日に至る。

 2008年、両国は領有権問題を高位の場で話し合い決着させることで合意。国民投票を経て双方が合意すれば、国際司法裁判所にかけることになった。
 この15日、まずグアテマラが国民投票を実施した。ベリーズは今年末に実施することを検討している。

 ラ米には、他に亜英間のマルビーナス(フォークランド)諸島、ベネズエラ・ガイアナ間のガイアナ西部エセキーボ地方、ボリビア・チリ間の太平洋岸領土、などの未解決の領有権問題がある。
 1982年4~6月、マルビーナス諸島の奪回を目指して亜国軍が諸島上陸作戦を決行、戦争となったのは記憶に新しい。勝った英国のサッチャー政権は長期政権を謳歌。敗れた亜國軍政は翌年崩壊、民政移管がなった。
 私は、この戦争を亜国側から取材した。英国側で取材する同僚らと戦争報道で競い合ったものだ。その中心には、かつて諸島を領有していた亜国と、亜国から諸島を奪い実効支配していた英国のどちらに正義があるのか、という視座があった。

2018年4月16日月曜日

 「米州人民サミット」が宣言で、米国の対メキシコ政策やシリア爆撃を糾弾▼11月末のG20首脳会議時にブエノスアイレスでの次期会合を呼び掛け▼べネズエラの首都の1地区で独自通貨が流通開始

  第8回米州首脳会議と並行してリマ市で4月10~14日開かれた「米州人民サミット」は14日、「最終宣言」を発表した。この会合は、ペルーの「全国闘争統一司令部」(CNUL)、およびペルー労働者総連合(CGTP)が主催した。

  宣言の要旨は次の通り。

 第8回米州首脳会議は、米州域内での覇権奪回を狙う新保守主義の意志の表れだった。人民サミットは、新自由主義に対抗するため社会的連帯を促進する目的を持つ。我々は:

 労働者の権利と労働条件を守る。

 社会福祉予算を減らす緊縮財政政策を糾弾する。

 年金制度の民営化に反対する。

 多国籍大企業に利し人民の利益に反する自由貿易協定と投資保護条約を糾弾。

 実際に耕作する先住民族と農民の土地権を守る。

 男性優位主義に反対し、性の違いに拘わらぬ平等主義確立のために闘う。

 社会的抗議活動を犯罪として扱うのを糾弾。

 資源抽出経済を糾弾。 

 資本と組んで愚民化を謀る宗教的原理主義と闘う。

 ラ米の進歩主義政治家を迫害するために司法制度を用いるのを糾弾。

 元伯大統領ルーラに連帯。マルティ、チェ・ゲバラ、フィデル、ラウール、英雄的キューバ人、栄光のキューバ革命に連帯。米国による対玖経済封鎖の破棄とグアンタナモ基地の返還を要求。

 べネズエラ・ボリバリアーナ革命に連帯。ニコラース・マドゥーロ大統領を支持。

 エボ・モラレス大統領率いるボリビア革命に連帯。ボリビアの「海への出口」問題の平和解決をボリビアとチリの人民に要請。

 エクアドールのラファエル・コレア前大統領が為した市民革命の成果の回復を求める。

 人種主義・外国人排斥主義者トランプ米大統領の国境の壁建設など対墨政策を糾弾。

 ハイチで疫病をはやらせ強姦し殺人を犯した国連派遣部隊を糾弾。

 長期刑に服したプエルト・リコのオスカル・ペレス=リベラに挨拶を送る。

 ホンジュラスの活動家ベルタ・カセレス殺害事件断罪を要求。不正選挙で「再選」されたホセ・エルナンデス大統領を糾弾。

 コロンビア和平とELNの和平交渉を支持。囚われている元FARC幹部の釈放を要求。人権活動家300人の最近の暗殺を糾弾、コロンビア政府に活動家保護を要求。

 マクリ大統領による新自由主義の強襲に抵抗する亜國人民に連帯。政治囚ミラグロ・サラ解放を要求。2017年に拉致され殺害された人道犯罪証人サンティアゴ・マルドナードのことを忘れない。

 米帝によるシリア爆撃を糾弾。域内各国の米大使館への抗議行動を呼び掛け。

 ブエノスアイレスで11月30日~12月1日開かれるG20首脳会議時に同市で再開しよう。「反G20女性フォーラム」開催を呼び掛け。

 本人民サミットを連帯確認、抵抗経験交換、闘争議題調整、進歩主義・左翼の人民・社会運動の統合化を図る場として認識する。

▼カラカスの中心区で地域通貨流通開始
  
 ベネズエラ首都カラカス市の中心リベルタドール地区のエリカ・ファリーアス区長は4月15日、同区内エル・パライソ地区の公設市場で、地域通貨「エル・カリーベ」(カリブ海)紙幣を流通させた。
 額面は5,10、20、50、100の5種類。1カリーベは、通貨1000ボリーバルに相当する。
 これを使用できるのは、同区、政権党PSUV、CLAP(供給・生産地区委員会)、漁業・農業省、食糧・都市農業省が認可する公設市場のみ。
 この日、エル・パライソ公設市場では、野菜、果物、鶏肉、牛肉、魚、米、玉蜀黍粉、清掃具、衛生用品などが販売された。
 エル・カリーベには、通貨ボリーバルの国外持ち出し取締り、超インフレ抑制、ボリーバル紙幣の札束携帯の簡素化に役立つと、ファリーアス区長は語っている。 

2018年4月15日日曜日

 米州首脳会議が「リマ公約」採択し閉会▼米副大統領にキューバ外相が厳しく反応▼ベネズエラはシリア爆撃を「犯罪行為」と糾弾 

 リマでの第8回米州首脳会議は4月14日、「民主施政」を求め「反腐敗」を強調する「リマ公約」を採択して閉会した。

 閉会演説でマルティン・ビスカラ秘大統領は、「腐敗への寛容度零で臨む。ベネズエラには公明選挙を望む」と述べた。
 ペルーのPPクチンスキ前大統領は3月、明るみに出ていた過去の腐敗に堪えきれず辞任。副大統領だったビスカラが昇格した。ベネズエラでは5月20日、大統領選挙が実施される。

 会議2日目(最終日)のこの日、各首脳が発言。マイク・ペンス米副大統領はキューバとベネズエラを「独裁」と呼び、5月の大統領選挙の結果を「米国は認めない」と述べた。亜国のマウリシオ・マクリ大統領も、ベネズエラ選挙の結果を認めないと語った。

 これに対し、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は「ペンス氏は誤った情報に基づき現実を無視し、真実を隠している」と指摘。「この会議は一体どんな<民主>を話し合っているのか。リンカーンやマーティン・ルーサー・キングの民主か。それとも米現政権の超保守主義の<民主>か」と問いかけた。

 そのうえで、「米国が人権問題やキューバの民族自決に関心があるならば、直ちに経済封鎖を解除すべきだ」と反駁した。
 さらに、米州右翼潮流の大番頭であるルイス・アルマグロ米州諸国機構(OEA)事務総長を「米政府の道具」と扱き下ろし、身柄を拘禁されたルーラ元伯大統領について「政治囚だ。直ちに解放を」と訴えた。
 19日のキューバ国家評議会議長の交代に関しては、「若い世代は(19日の)ヒロン浜勝利記念日を(同時に)祝う」と述べた。

   ボリビアのエボ・モラレス大統領は「米国はベネズエラに対し一方的制裁を科し、侵略の脅しをかけている」と指摘。「米国は平和と民主にとって世界最悪の敵だ」と糾弾した。

 一方、会議の枠外では、ベネズエラに厳しい態度をとっている「リマグループ」(グリオ)を中心とする16か国が、ベネズエラに公平な選挙を要求する「ベネズエラ宣言」をまとめ、発表した。
 同16か国は、亜伯パラグアイ智秘コロンビア巴CRホンジュラスG国墨加米バハマ・ガイアナ・セントルシーア。

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は会議出席を拒まれ「欠席裁判」に遭ったうえ、場外でも批判された。
 マドゥーロ大統領は14日カラカスで支持者の大群衆を前に、「リマ会議は完全に失敗した」と強調。併せて、米英仏3国軍によるシリア爆撃を「犯罪行為」と糾弾した。
 5月の大統領選挙については、「強国に支援された選挙妨害の動きがある。近く確固たる証拠を示す」と述べた。
 ベネズエラ原油は13日現在1バレル=61ドル強。原油価格の推移が、政権の勢いに反映される。

 またホルヘ・アレアサ外相は、「(ラ米の)右翼諸政府は自国内のみじめな失敗を覆い隠すためベネズエラをやり玉に挙げている」と批判した。
 マドゥーロの腹心であるホルヘ・ロドリゲス通信・情報相は、「(内外の)反ベネズエラ虚偽報道に対抗する」と語った。

 このほかの動きでは、ペンス副大統領は、次回2021年の第9回首脳会議を米国内で開催したいと表明した。これに対しては、「トランプ大統領が欠席し、ラ米・カリブ(LAC)地域への無関心を露わにしたばかりなのに何を言うか」との声がLACから出ている。
 ラ米メディアには、「モンロー教義を新たに浸透させようという狙いがあるのでは」との指摘がある。モンロー教義は2023年、宣言200周年を迎える。

 ペンスまた、加墨両国とのNAFTA(TLCAN)合意は近い、と述べた。カナダのトゥルドー首相はマクリ亜大統領と会談、6月ケベックでのG7首脳会議にオブザーバーとして出席するようマクリを招待した。マクリはG20議長国。

2018年4月14日土曜日

 第8回米州首脳会議が開会▼米・べネズエラ大統領、キューバ議長ら欠席▼エクアドール大統領は記者ら3人拉致殺害事件対処のため急遽帰国

 ペルーの首都リマで4月13日、第8回米州首脳会議が開会した。議長を務めるマルティン・ビスカラ秘大統領は開会演説で、ラ米諸国に蔓延する収賄など腐敗に触れ、「世界銀行統計によれば、米州全体で毎年、全GDPの2%が腐敗によって失われている」と指摘。腐敗撲滅の必要性を強調した。

 開会式は国立大劇場で催された。会議は14日、首脳らが発言する全体会議を開き、最終宣言を採択して閉会する予定。
 首脳会議に先立ち市内では、「市民社会」、「青年」、「企業家」の各フォロ(フォーラム)が開かれた。また並行して、米州の左翼・進歩主義陣営の「人民サミット」が開かれている。人民サミットは13日、ベネズエラとキューバへの連帯を表明した。

 今首脳会議は、腐敗問題と並んで「ベネズエラ問題」が中心議題と目されている。だが同国のニコラース・マドゥーロ大統領は、ビスカラ大統領から招待を取り消されて欠席。13日はカラカスで、反チャベス大統領クーデター未遂事件16周年記念日の行事に出席した。

 反マドゥーロで攻勢をかけてきたドナルド・トランプ米大統領は「シリア情勢」を理由に欠席。マイク・ペンス副大統領が代理出席した。そのペンスは首脳会議開会式でビスカラ大統領に挨拶しただけで、宿舎に引き返した。米軍によるシリア攻撃に関しホワイトハウスと緊急連絡をとる必要が生じたため。

 言わば、トランプ、マドゥーロの「主人公」2人が欠席し、拍子抜けした会議となった。この首脳会議は米州諸国機構(OEA)加盟34か国の会合だが、求められて前回出席したOEA外のキューバのラウール・カストロ国家評議会議長は今回は欠席。ブルーノ・ロドリゲス外相が代理出席してる。
 ニカラグアのダニエル・オルテガ、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーンの両大統領も欠席。22日に大統領選挙のあるパラグアイのオラシオ・カルテス大統領も出席しなかった。

 ラウール欠席は、19日の議長交代への準備に集中するためとされる。だが87歳と高齢であるのに加え、ペンスがリマで反体制キューバ人活動家らと会合するなど反玖言動が目立っているのも関係しているはずだ。
 また、最大の域内同盟国で原油供給国であるベネズエラのマドゥーロ大統領が会議から締め出された以上、ラウールとしては出席するのは得策でないとの判断も働いただろう。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は首脳会議開会に先立つ「企業家フォロ」で演説、資本主義・新自由主義は人類の生存を危うくすると警鐘を鳴らした。そのうえで、国家、民間、協同組合、共同体が参加するボリビア型モデルは多数者に有益で、年率5%の経済成長を達成している、と自画自賛した。
 それによると、エボが政権に就いた2006年に95憶ドルにすぎなかったGDPは17年には278憶ドルと、3倍に膨らんだ。その間、公共投資は6億3900万ドルから80憶ドル12倍に拡大した。また貧困率は41・2%から17・9%に下がった。

 メキシコのエンリケ・ペニャ=ニエト大統領は13日リマで、ジャスティン・トゥルドー加首相と、北米自由貿易協定(TLCAN・NAFTA)の対米交渉をめぐり会談した。同大統領はペンスから申し出のあった14日の会談を受け入れた。

▼エクアドール事件
 一方、エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領は12日、リマからキトに急遽戻り、直面していた重大事件に対応した。
 エクアドールの最有力紙「エル・コメルシオ」の取材班3人がコロンビア国境地帯で3月26日拉致され、4月12日、殺害されていた事実が確認されたのだ。モレーノ大統領は13日キトで記者会見し、同日から16日まで4日間の国喪を宣言した。

 殺されたのはハビエル・オルテガ記者(32)、パウール・リバス写真記者(45)、運転手エフライーン・セガーラ(60)。国境地帯のエスメラルダ県で取材中、コロンビアゲリラFARCの残党「オリバー・̪シニステラ戦線」に拉致、拘禁された。
 「グアチョ」という頭目が率いる同戦線は、FARCの大多数が応じた和平を蹴り、麻薬取引で生き延びてきたとされる。人質にした3人の解放条件に、エクアドールとコロンビアが結んでいる麻薬取引取締協定の破棄を求めていたという情報がある。

 モレーノ大統領は、「グアチョ」逮捕に繋がる情報の提供者に賞金10万ドルを与えると発表した。赤道国の通貨はパナマ、エル・サルバドール同様、米ドル。
 3人の死亡確認を受け、エクアドールとコロンビアの国軍は国境地帯に展開、「グアチョ」らの捜索に当たっている。国喪の対象には、先に同一味との戦闘で死んだ赤国軍兵士4人も含まれている。

2018年4月13日金曜日

メキシコ麻薬マフィアが学生拉致事件に関与。米国で有力な事実が明るみに出る

 2014年9月26~27日メキシコ・ゲレロ州イグアラ市で起きた大量失踪事件に関し、新しい事実係が4月12日明らかになった。というわけだのシカゴでは現在、メキシコの同州を拠点とする麻薬密輸マフィア「ゲレロス・ウニードス」(GU、「団結したゲレロ人」)の幹部8人の麻薬取引罪による裁判が続いているが、その審理過程で、GUがイグアラ事件に関与したことが明白になった。

 事件では、ゲレロ州都チルパンシンゴ郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が拉致され行方不明になる一方、イグアラ市内で市民6人が殺害された。
 学生たちは、首都メキシコ市で予定されていた10月2日の「トラテロルコ虐殺」46周年記念行事に参加するため、乗り合いバス5台をバス会社から乗っ取るようにして「調達」、首都への中継点であるイグアラ市に到着していた。

 ところがバスは地元警察から進路を阻まれ、学生らが拉致された。市民6人は警官らに銃撃されたり、拷問されたりして殺された。
 特に拉致された学生が乗っていたバスには、GUがシカゴに密輸するコカイン、ヘロインなどの麻薬と不法資金が隠されていたとされる。事件は発生後しばらくしてから、GUが「積み荷」を確保するため、当局と謀って実行したと見られるようになっていた。
 大勢の学生たちに見つかってしまったため、抹殺することにしたわけだ。

 米司法当局は、シカゴでのGU麻薬密売を摘発するため、2013年末から14年10月まで上記幹部8人の携帯電話などによる通信を傍受した。このうち14年9月24~10月24日には、イグアラ事件に関係する交信が中心を占めた。

 シカゴの幹部からイグアラのGU要員へのある通話では、イグアラの警察や当局に支援を求めるよう命じている。
 求められた地元警察と「当局」が学生拉致や市民殺害に関与した公算が大きい。「当局」には、連邦警察と国軍、それにゲレロ州警察が含まれている可能性がある。

 また、交信には「拉致されたのは60人」という会話もあった。学生43人のうち1~2人は遺骨が確認されていると公表され、全員が殺害された可能性が濃厚だ。「60人」という人数が正しければ、拉致され殺害された可能性のある人数は17人も増えることになる。

 エンリ・ぺニャ=ニエト(EPN)大統領のメキシコ政府は事件解明をせず、偽りの犯人をでっちあげたり、意図的な虚偽は発表をしてきた。大統領の命令下にある連邦警察と国軍が関与しているとなれば、大統領責任が問われることになるからだ。
 イグアラ警察と「当局」の関与は、GUが麻薬の対米密輸で稼いだ資金をばらまいて警察や「当局」を買収していたことを物語る。

 メキシコ大統領選挙は7月1日実施されるが、今回、新事実が明るみに出たことは政権党PRI(制度的革命党)候補への打撃になる。「トランプの米国」がレームダックのEPN大統領をすでに見放していることを窺わせる。

2018年4月11日水曜日

 トランプ米大統領がシリア情勢理由に米州首脳会議を欠席▼「ラ米軽視」と批判拡がる▼招待取り消されたベネズエラは民間代表団送り込む

 米政府は4月10日、ドナルド・トランプ大統領がリマ開催の第8回米州首脳会議に出席しないと発表した。シリア情勢に取り組むためという。
 代わりにマイク・ペンス副大統領が出席。ジョン・サリヴァン国務長官代行、イバンカ・トランプ補佐官らが同行する。
 首脳会議は13~14両日開催されるが、米代表団は外相会議が始まる前日の10日にリマ入りする予定。

 LAC(ラ米・カリブ)諸国には、トランプ欠席を「LAC軽視と無関心の表れ」と見る世論が拡がっている。トランプはLAC諸国を悪ざまにののしったり、無視したりてきた。
 ラ米でのトランプ支持率は16%だが、さらに低下するとの見方も出ている。
 今首脳会議開催国ペルーのマルティン・ビスカラ大統領は10日、「トランプ大統領の出席は望まれており重要だったのに」と落胆を隠さなかった。

 一方、ビスカラ大統領から出席招待を取り消されたベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10日、「ベネズエラは出席しない。この首脳会議は時間の無駄だ」と切り捨てた。
 だがベネズエラの民間代表団は、首脳会議と並行して開かれる「人民サミット」に主席することにしており、リマに到着しつつある。
 この「人民サミット」にはキューバとベネズエラの反体制勢力も出席、LACの左翼・進歩主義陣営と保守・右翼陣営の民間同士が激論を交わす場になる。

 トランプは、今会議で「ベネズエラ問題」を主要議題として取り上げることにしていた。ペンス副大統領やマウリシオ・マクリ亜國大統領が同問題を持ち出すことになる。
 ペンスら米代表団はリマ滞在中、ぺルー、ブラジル、ハイチ、メキシコ、エル・サルバドール、グアテマラ、ホンジュラス、バハマ、バルバドス、ガイアナ、サンタルシーアの
米国寄り諸国の首脳らと会談する。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は10日、トランプ欠席の報を受けて、「政経問題で遣り合おうと思っていたのに、彼は欠席だ。私も出席予定を再考せねば」と述べた。
 ボリビア政府は同日、首脳会議に出席する米州諸国機構(OEA)OEAのルイス・アルマグロ事務総長を、内政干渉と糾弾した。
 アルマグロはこのほど、欧州理事会の下部組織で法律家らの集まりである「ベネティア委員会」に、モラレス再選問題を持ち出し、却下されていた。

2018年4月10日火曜日

 コロンビア現代の暴力状況の走り、「ボゴタソ」(ボゴタ騒乱事件)から70年。依然解明されていないガイタン暗殺動機

 1948年4月9日、コロンビア自由党の大統領最有力候補だった政治家ホルヘ=エリエセル・ガイタンが首都ボゴタ中心街で暗殺されてから70年が過ぎた。この日、首都をはじめ各地で追悼行事が催された。
 80代の娘グロリア・ガイタンは、「父の死でコロンビアの歴史の方向性が変わってしまった」と述べた。
 グロリアは、「この国の歴史上、大きな転換を企図した政治家は2人しかいない。(大コロンビア時代の)シモン・ボリーバルと父ガイタンだ」と前置きし、「ボリーバルは王政を共和制に変えた。ガイタンは代表制民主制を直接民主制に変えようと期していた」と述べた。

 70年前、コロンビアでは1946年の大統領選挙で勝ったマリアーノ・オスピーナ=ペレス大統領の保守党強権政権が支配していた。自由党内がガイタン派と反ガイタン派に割れ、オスピーナが選挙で漁夫の利を得たのだった。
 ガイタンは、演説で「私は一介の人間ではない。私は人民だ。人民は指導者(権力者)に勝る」と強調、広範な農地改革を公約に掲げていた。
 国立コロンビア大学法学部に学び弁護士になったガイタンは、卒論として「コロンビアにおける社会主義思想」を書いていた。
 1950年の大統領選挙では、ガイタンが圧倒的支持を得て大勝すると誰もが予測していた。これを恐れたのが、保守党と、反共主義が本流になっていた米国だった。
 彼ら保守・右翼勢力は、コロンビアの自由党と共産党が1949年3月末に交わした「協力文書」を警戒していた。

 70年前の4月9日、ガイタンは友人たちとボゴタ中心街で昼食をとり、表に出たとたん、待ち受けていたフアン・ロア=シエラという26歳の労働者に拳銃で銃弾3発を見舞われた。病院に搬送され輸血を受けたが、そのさなかに死亡した。
 ロアは駆け付けた警官に促されて近くの薬局に身を隠そうとしたが、集まった群衆に引っ張り出され、私刑に遭って殺された。その遺体は綱をかけられて、中央広場方面に運ばれた。
 ボゴタではたちまち暴動・略奪が始まり、植民地風の建物多数を含む建物136か所が破壊された。死者は550~2000人に達したと伝えられる。
 暴動は全国的に波及、保守・自由両党の長年の確執と相まって状況は内戦の方向に傾斜してゆく。ガイタン暗殺に始まるボゴタ騒乱事件は「ボゴタソ」と呼ばれる。

 ボゴタソ後、ゲリラ勢力が形をとり、1959年のキューバ革命の影響もあって、60年初頭以降、にコロンビア革命軍(FARC)、民族解放軍(ELN)、解放人民軍(EPL)、キンティン・ラメ、4月19日運動(M19)などが結成された。
 ゲリラ勢力は、国軍、警察、極右自警団、麻薬組織戦闘組織を相手に戦闘、コロンビアは長期的な内戦状態に陥った。
 コロンビア史には「ビオレンシア」(暴力状況)が付きまとってきたが、ボゴタソは現代ビオレンシア開始の契機となった。

 内戦は最後に残った2組織のうち最大FARCがキューバのハバナでのコロンビア政府との4年間の和平交渉を経て2016年10月、和平に到達。FARCは今年18年の国会議員選挙に参加した。
 一方のELNはエクアドール首都キトでコロンビア政府と和平交渉を維持しているが、和平には達していない。

 「記憶と犠牲者連帯委員会」の統計では、半世紀を超える内戦で、98万3000にんが死亡、16万6000人が行方不明、3万5000人が拉致・誘拐された。当局の拷問に遭ったのは1万人。黒人・先住民ら農民713万人が土地を奪われ、国内避難民となった。負傷者は数百万人に及ぶ。

 「真実究明委員会」のフランシスコ・デロー委員長は4月9日、グロリア・ガイタンら遺族や関係者に会い、証言を聴取。ガイタン家に保管されている資料の分析作業に着手した。
 「誰がフアン・ロア=シエラにガイタン殺害を命じたか」。この謎は解明されていない。私刑加担者はどのような政治勢力の利益を代表していたのか。これもわかっていない。

 ボゴタソには興味深い逸話がある。ハバナ大学法学部学生だったフィデル・カストロが
暴動現場に遭遇、一時、「暴動に参加した」という伝説だ。
 フィデルは、当時の亜國大統領フアン・ペロン将軍が支援していたラ米大学生会議の準備会議出席のためボゴタに滞在、ガイタン暗殺の2日前、ガイタンに会っていた。
 フィデルは、群衆が警察署を襲撃して武器を奪うのを目の当たりにし、これにも閃きを得て、5年後1953年7月26日のモンカーダ兵営襲撃を決行した。
 また1948年4月末、ボゴタソの直後だが、ボゴタに集まった米州諸国外相は「米州諸国機構」(OEA)結成を決めた。
 さらに、作家ガブリエル・ガルシア=マルケスは自伝に、ボゴタソ現場に居合わせたと書いている。そして「フィデルと極めて近いところにいた」という趣旨のマジック手法を展開している。

2018年4月9日月曜日

べネスエラ大統領選挙支持率調査:ファルコン候補がマドゥーロ大統領を7ポイント上回る▼他の調査では大統領がトップ▼外務省がルーラ逮捕を「異端審問」と糾弾▼「コンドル作戦司法版」との非難も

 ベネズエラの世論調査会社デタアナーリシス社の大統領選挙候補者支持率調査の結果が4月8日、公表された。それによると、野党候補ヘンリー・ファルコン前ララ州知事が41・4%、次いでニコラース・マドゥーロ現大統領の34・3%だった。

 同社は3月19~29日、全国で有権者800人を調査。この調査と集計が公平なものだとすれば、この趨勢が5月20日の投票日まで続き、投開票の公正さが保障されれば、ファルコン当選が可能なことを示唆する。他の3候補は低迷している。

 この調査によると、マドゥーロ大統領の施政について66%が「極めて悪い」、「悪い」、9・1%が「悪いほうに進む」と回答。併せて75・1%が現政権に厳しい見方をしていることが浮かび上がった。
 「良い・良い方向」と回答したのは22・3%だった。また6割は投票すると答えた。

 ファルコンは、激昂するインフレをなくすため通貨を米ドルにすべきだ提案している。これに対しマドゥーロは、「ベネズエラを米国の植民地にしたいのか。通貨はボリーバル以外にない」と反駁している。

  しかし、他の世論調査会社はコンスルトーレスがマドゥーロ支持率34・7%、ファルコン18・5%。インテルラテ社はマドゥーロ60%、ファルコン18%と発表している。政府は、デタアナーリシスの調査には党派性がむき出しになっている、と非難している。

 一方、ベネズエラ外務省は声明を8日発表、「ルーラは宗教裁判所で異端審問にかけられた」と指摘。ブラジル政界と司法界を糾弾した。
 またボリビアのエボ・モラレス大統領は、「コンドル作戦司法版が跋扈し、ラ米の進歩主義勢力が標的にされている」と述べ、ルーラ逮捕を非難した。
 これを受けて、ベネズエラ政権党PSUV(ベネズエラ統一社会党)のディオスダード・カべージョ副党首は、「地域の進歩主義・左翼指導者が右翼勢力に追い落とされている」と前置きし、「地域の進歩主義勢力を強化せねばならない」と強調した。

 「コンドル作戦」は、1970~80年代、米政府の主導で南米中・南部の軍事政権諸国が合同で展開した反軍政の左翼・進歩主義勢力と市民を殺戮した広域人道犯罪作戦。日本国籍保有の移住者や日系市民も犠牲になった。

2018年4月8日日曜日

パラグアイでゲリラと治安部隊が交戦▼22日には大統領選挙実施▼ルーラが拘置所入り

 パラグアイ北部のコンセプシオン県内で4月7日、治安部隊とゲリラ「パラグアイ人民軍」(EPP)EPPが交戦した。EPPは逃亡する際、手榴弾を投げ、治安部隊の2人が負傷した。
 治安部隊は、軍と警察で構成する「統合作戦部隊」(FTC)。その兵士と警官各1人ずつが負傷した。FTC司令部が発表した。

 EPPは実態が明らかでなく、謎めいた存在だが、これまでに兵士21、警官13、市民27の計61人を待ち伏せ攻撃や戦闘で殺している。

 一方、パラグアイ大統領選挙は今月22日に実施される。政権党ANR(コロラード党)のマリオ・アブド=ベニーテスと、野党「勝利同盟」(AG)のエフライーン・アレーグレが選挙戦で接戦を演じてきた。

 大統領選挙と同時に副大統領、上院議員45人、下院議員80人、県知事17人、南部共同市場(メルコスール)議会(パルラスール)議員16人を選ぶ。
 オラシオ・カルテス現大統領、フェルナンド・ルーゴ元大統領、ニカノール・ドゥアルテ元大統領は、一つの上院議席を争っている。

 米州諸国機構(OEA)は選挙監視団を派遣する。団長はコスタ・リカ前大統領のラウラ・チンチージャ。

▼ルーラ元ブラジル大統領が拘置所入り

 ルーラは4月7日、連邦警察のヘリコプターでサンパウロからパラナー州都クリチーバの連邦警察州本部に連行され、同本部内に設置された特別の拘置室に収容された。

2018年4月7日土曜日

ベネズエラ大統領選挙の状況▼ファルコン候補は通貨の米ドル化掲げる▼野党連合は統一候補を擁立できず▼仮想通貨エル・ペトロの相場

 ベネズエラ大統領選挙は5月20日実施される。選挙戦も本格化しつつある。国家選挙理事会(CNE)は3月4日、出馬する5人の候補を発表している。
 最有力候補は、再選を狙う「ソモス・べネスエラ運動」(MSV=「私たちはベネズエラ」運動)のニコラース・マドゥーロ大統領。
 政権党・ベネズエラ統一社会党(PSUV)および共産党など左翼諸党の連合「大愛国軸」を背後に持つ。
 選挙母体MSVは、旧来のチャベス派と一線を画し、マドゥーロ色が濃い。制憲議会(ANC)議長のデルシー・ロドリゲスが書記長を務める。

 二番手は、ヘンリー・ファルコン前ララ州知事。自党「進歩主義前哨」(AV)に加え、伝統政党・キリスト教社会党(COPEI)および社会主義運動(MAS)が支持。元チャベス派で、反チャベス派にも支持者がいる。
 ファルコンは、ベネズエラ通貨を従来のボリーバルに替えて米ドルにすることを提案、物議を醸している。

 次いで、福音派牧師で実業家のハビエル・ベルトゥッチ。「変革への希望」から出馬。さらに「89人民政治統合」(UPP)のレイカルド・キハーダ、元チャベス派で無所属のルイス=アレハンドロ・ラッティ。

 一方、旧野党連合MUDは昨年7月以来、ANC議員選挙ボイコットし、10月の州知事選と12月の市長選で惨敗した。内部分裂して有名無実化し、大統領選挙に統一候補を送る力も失ってしまった。
 これに代わって3月8日、「自由ベネズエラ拡大戦線」(FAVL)が発足した。政党、教会、大学、学生、経営者団体、一部労組、NGO、元チャベス派などの寄り合い所帯。MUDも参加する形をとっている。
 同戦線も独自候補を樹立できず、ファルコンか、ベルトゥッチに投票する可能性がある。マドゥーロを落とすためだ。

 ホルヘ・アレアサVEN外相は4月5日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた非同盟諸国運動(MNOAL)外相会議で議長を務め、「米政府によるベネズエラへの攻撃」を糾弾した。ベネズエラは同運動の議長国。同外相は7日イランを訪問、テヘランで外相会談に臨んだ。
 またブラディーミル・パドゥリーノ国防相は5日モスクワでの第7回国際安全保障会議に出席、「オバマ前米大統領はベネズエラを<米国にとって並外れた脅威>と言い、これをトランプ現政権が引き継いでいる」と指摘。「我々は米国による<緩やかなクーデター>と戦っている」と述べた。
 同国防相はVEN露国防相会談では、兵器協力などを話し合った。

 マドゥーロ大統領は6日、ルーラ元大統領逮捕を決めたブラジルを「犯罪的迫害」と糾弾した。
 米共和党のピート・セションズ下院議員(下院法制委員長)が4月2~3日カラカスを訪問、マドゥーロ大統領と会談していたことが6日明らかになった。
 ベネズエラ政府は、国営石油PDVSAによる対米原油輸出をトランプ政権が打ち切るのを阻止するため、セションズに善処を求めた可能性がある。
 一方、米共和党下院議員ジョー・ウィルソンが、カラカスに本部のあるラ米多国籍TV放送「テレスール」が米国内でベネズエラ政権の情宣工作活動をしてるか否かを調査するようジェフ・セションズ司法長官に書簡で2月末に要請していたことが6日明らかになった。

 ベネズエラ政府が3月創設した仮想通貨「エル・ペトロ(石油)」の同月平均相場は1P=49・04ユーロだった。この仮想通貨は原油1b当たりの国際相場に連動する。
 
 

2018年4月6日金曜日

★ルーラ・ブラジル元大統領に逮捕命令。保守・右翼勢力による2年前の「国会クーデター」が完成に向かう

 ブラジル連邦判事は4月5日午後、ルイス=イグナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領(72)に、6日午後5時までにパラナー州都クリチーバの連邦警察州本部に出頭するよう命じた。
 同国最高裁判所は5日未明、ルーラ元大統領が 最高裁での有罪判決確定まで身柄を拘禁しないよう求めた人身保護請求を却下、逮捕命令は時間の問題と見られていた。

 2審は今年1月、ルーラを収賄・資金洗浄罪で有罪とし、禁錮12年1か月を命じていた。ルーラは上告した。
 ルーラは、逮捕命令をサンパウロ市内のルーラ事務所で伝えられ、急遽、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市にある金属労組本部に行き、弁護団や側近らと対策を協議した。同労組はルーラの出身母体。

 ルーラは今年10月実施の大統領選挙への出馬を決めており、支持率は現在37%で、群を抜く最有力候補。逮捕されても選挙運動は可能だが、厳しい戦いを強いられることになる。
 ルーラが所属する労働者党(PT)は、逮捕命令を激しく糾弾している。ルーラに出頭を拒否するよう求める側近や支持者も少なくない。

 ルーラ断罪と逮捕命令は、ブラジル富裕層、保守右翼勢力、米政府などが連携して打った2016年8月の「国会クーデター」によるヂウマ・ルセーフ(前)大統領弾劾に始まるPT政権潰しの陰謀の完成を物語る。

 貧困状況改善などで実績を上げ、国際的政治家となったルーラが政権に返り咲けば、富裕層などは再び、思い通りに国富を支配できなくなる。これが本質だ。

 ルーラは2期8年の大統領在任中、新自由主義を批判しつつ、それを使って経済運営を図りながら、「より良い世界」を希求するアルテルムンディスタとして国富再分配に努めた。
 子飼いの後継者ルセーフは、この国初の女性大統領となった。だが大統領弾劾条件としては些細な理由で、リオ五輪閉幕直後に追い落とされた。

 ブラジルでは国営石油ペトロブラス、最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)などが絡んだ大規模・巨額の汚職事件が明るみに出され、その関連でルーラは生贄にされた。
 ルセーフ弾劾の中心人物の一人だったミシェル・テメル現大統領を含む相当数の政治家は、ルーラの「汚職」よりも、はるかに巨額の収賄事件に関与している。

 巨悪はほんの一部しか裁かれず、保守・右翼勢力の最大・正面の敵ルーラの政治生命が断たれようとしているのだ。ルーラにも甘さはあっただろうが、そこを茶番と陰謀に付け込まれた。

 トランプ政権と、亜伯両国などラ米右翼政権は、ルーラを政治的に葬り、ベネズエラのマドゥーロ・チャベス派政権を潰そうと画策中。
 社会主義キューバを弱体化させ、サンディニスタ・ニカラグア政権やエボ・モラレス大統領の改革政権を将来的に潰そうとも謀っている。

 今月13~14日リマでの第8回米州首脳会議は、米州の保守・右翼と、少数派となった進歩主義・左翼の両潮流が相まみえる場となる。ペルー政府は、ニコラース・マドゥーロVEN大統領への招待を撤回している。

 ブラジルは「国会クーデター」によって「政治的バナナ共和国」に成り下がった。さらに今、最重要政治家を潰すことで奈落の底に落ちつつある。

2018年4月5日木曜日

米民事法廷が元ボリビア大統領の「法律外処刑」責任を認める

  ボリビアでは2003年9~10月、当時のゴンサロ・サンチェス=デ・ロサーダ大統領の親米保守政権が下していた天然ガスをチリ北部の港経由で米国に安価で輸出する決定に対し、左翼野党、労働者、先住民族などが反発、激しい抗議行動が続いた。
 その行動は政治首都ラパスおよび、その上方の大高原(標高4000m)に広がるエル・アルト市を中心に展開された。サンチェス政権は軍隊を出動させ、実力で鎮圧しようと試みた。
 それが頂点に達した03年10月17日、軍の発砲などで死傷者多数が出た。サンチェス大統領は同日、政権を放棄し米国に亡命、マイアミに居を定めた。ボリビア検察によると、サンチェスは国庫から2200万ドルを持ち逃げした。
 腹心のカルロス・サンチェス=ベルサイーン国防相も亡命、マイアミに住んでいる。
 一連の反政府行動と鎮圧で、68人が死亡(公式発表で55人)、約400人が負傷した。重傷者の一部は脚を切断するなどで障害者になった。
 米国へのガス輸出取り決めは破棄された。後のモラレス現政権が石油・天然ガスを国有化した。
 死者のうちの8人の遺族は賠償を求めて米フロリダ州でサンチェス元大統領(87)とサンチェス元国防相(58)を相手取り民事法廷に提訴した。
=以上は前置き=
 フロリダ州フォート・ローダーデイルの民事法廷は3月5日審理を開始。陪審員団は4月2日、元大統領ら両人が「法律外処刑」で有罪と判断、法廷は8人の遺族に計1000万ドルの賠償金支払いを命じた。両人は控訴する見込み。
 外国の大統領経験者が米国で、民事とはいえ人道裁判で有罪判決を受けたのは初めてとされる。
 モラレス現ボリビア政権のアルフレド・ラダ大統領府相は4月3日、判決を評価し、「この問題は両サンチェスのボリビアへの身柄引き渡しまでは終わらない」と表明した。
 
 話は遡るが、サンチェス大統領が逃亡した2003年10月、副大統領だったカルロス・メサが暫定大統領となり、05年末の大統領選挙で左翼・社会主義運動(MAS)候補で、コカ葉栽培農民組合連合を率いるアイマラ民族のエボ・モラレスが当選した。
 06年初め就任したモラレス(58)は新憲法制定を挟んで3選を重ね、今日まで12年余り政権を維持してきた。
 現行憲法は大統領連続再選を2選までしか認めていない。このためモラレスは再選回数を無制限にする憲法改正を求めて16年2月国民投票を実施したが、僅差で敗北した。
 だがモラレスは19年の次期大統領選挙への出馬を諦めず、最高裁を動かして17年12月、「無制限再選可能」との判断を強引に勝ち取った。
 しかしながら長期政権は飽きられ、支持率50~60%を常時維持していたモラレスは現在、支持率が25%程度に低迷している。
 このため、1879年にチリに仕掛けられた太平洋戦争で失った太平洋岸領土(現チリ・アントファガスタ州)の奪回(「海への出口」闘争)を選挙運動の中心に据え、ナショナリズムを煽り支持率を上げようとしている。

2018年4月4日水曜日

ペルー政府が米州首脳会議からベネズエラ大統領を排除

 ペルーの首都リマで4月13、14両日、第8回米州首脳会議が開催されるが、同国政府は3日、ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領への招待状を撤回すると発表した。
 理由を、5月20日実施のベネズエラ大統領選挙が「民主的に実施される保障がない」としている。マドゥーロは再選を目指し出馬している。
 ペルーのPPクチンスキ前大統領は3月、親米・反ベネズエラのラ米保守・右翼諸国が形成する「リマグループ」(グリマ)と協議し、マドゥーロを招待しない方針を表明していた。
 だが、クチンスキは同月下旬、汚職容疑絡みの醜聞事件発覚で辞任。マルティン・ビスカラ新大統領があらためて招待撤回を確認した。
 ビスカラはこの日(3日)、リマで米州諸国機構(OEA、加盟34か国)のルイス・アルマグロ事務総長と会談している。アルマグロは反マドゥーロの急先鋒。
 ベネズエラ政府は、招待撤回に激しく反発している。ボリビアのエボ・モラレス大統領は、マドゥーロ招待撤回理由を「内政干渉」と批判している。
 この首脳会議はOEA加盟諸国が3年ごとに開く。前回のパナマ会議には、ケネディ米政権の主導でOEAを1962年に追放されたまま復帰していない社会主義キューバのラウール・カストロ国家評議会議長(国家元首)が初めて出席、当時のバラク・オバマ米大統領と会談した。
 ラウール議長はリマ会議に出席する意向。だがベネズエラから供給されている原油が極めて重要なキューバであり、マドゥーロへの招待撤回はラウールの立場を微妙にする。
 ラウールは4月19日、議長職を離れるため、大統領級の首脳会議への出席は最後となる。出席すれば、関係が冷え込んでいるトランプとどのような出会いになるか、関心を集めている。
 一方、米州首脳会議に初めて出席するドナルド・トランプ米大統領は、ラ米で支持率16%と人気がない。「傲慢横柄強圧的」と受け止められているからだ。
 ラ米情勢に無知なトランプは独自のラ米政策を持たず、反革命亡命キューバ人系右翼マルコ・ルビオ共和党上院議員らの入れ知恵でベネズエラやキューバへの締め付けを強化している。
 トランプ政権は既に何度か公式、非公式にラ米に「ベネズエラ問題解決の軍事的選択肢を排除しない」と」働きかけているが、その都度、ラ米側から拒否された。
 アルマグロOEA総長と並ぶ反マドゥーロの急先鋒で右翼のマウリシオ・マクリ亜国大統領は、首脳会議で「ベネズエラ問題」を取り上げると表明しているが、これにトランプが乗って不用意・半可通な発言をすれば、会議は紛糾するだろう。
 会議の議題の一つは、汚職問題。クチンスキ秘前大統領は、ブラジルの建設会社オデブレシ(オデブレヒト)から賄賂を受け取った嫌疑がかけられている。
  

2018年4月3日火曜日

コスタ・リカ次期大統領は38歳のカルロス・アルバラード=ケサーダ

 「反・反米主義」で保守的な中米コスタ・リカ(CR)で4月1日、大統領選挙決選投票が実施され、政権党・市民行動党(PAC)候補カルロス・アルバラード=ケサーダ(CAQ、38)が得票率61%(120万票)で当選した。5月8日就任する。任期は4年。
 大統領選挙第1回投票は2月4日実施、CAQと、野党・国家再建党(PRN)のファブリシオ・アルバラード=ムニョス(FAM、43)がそれぞれ上位1、2位となって、決選に進出した。
 CAQは、ルイス=ギジェルモ・ソリース現大統領の政権で労働・社会福祉相を務めたが、本業は作家。さまざまな社会問題が争点で、同性婚合法化問題がその中心だったが、CAQは同性婚支持を訴えていた。
 TVジャーナリストで宗教歌手の対立候補FAMは保守色の濃い福音派牧師で、同性婚や堕胎に強く反対していた。得票率は39%(82万票)だった。
 若い候補同士の勝敗を分けたのは、CAQの閣僚経験だった。CAQはまた米企業に3年間勤務したことがあり、財界にも受けがいいのが幸いした。
 CAQ次期大統領の傍らで副大統領(やはり選挙で当選)を務めるのは、国会議員経験の豊かな黒人女性エプシー・カンベル。この国の正副大統領のいずれかに黒人市民が就くのは初めて。
 白人市民が多数派で、長らく白人優位主義が支配し、今もそれが残存するCRでは画期的。バラク・オバマ前米大統領出現の影響があるとの見方が流れている。