2018年4月13日金曜日

メキシコ麻薬マフィアが学生拉致事件に関与。米国で有力な事実が明るみに出る

 2014年9月26~27日メキシコ・ゲレロ州イグアラ市で起きた大量失踪事件に関し、新しい事実係が4月12日明らかになった。というわけだのシカゴでは現在、メキシコの同州を拠点とする麻薬密輸マフィア「ゲレロス・ウニードス」(GU、「団結したゲレロ人」)の幹部8人の麻薬取引罪による裁判が続いているが、その審理過程で、GUがイグアラ事件に関与したことが明白になった。

 事件では、ゲレロ州都チルパンシンゴ郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が拉致され行方不明になる一方、イグアラ市内で市民6人が殺害された。
 学生たちは、首都メキシコ市で予定されていた10月2日の「トラテロルコ虐殺」46周年記念行事に参加するため、乗り合いバス5台をバス会社から乗っ取るようにして「調達」、首都への中継点であるイグアラ市に到着していた。

 ところがバスは地元警察から進路を阻まれ、学生らが拉致された。市民6人は警官らに銃撃されたり、拷問されたりして殺された。
 特に拉致された学生が乗っていたバスには、GUがシカゴに密輸するコカイン、ヘロインなどの麻薬と不法資金が隠されていたとされる。事件は発生後しばらくしてから、GUが「積み荷」を確保するため、当局と謀って実行したと見られるようになっていた。
 大勢の学生たちに見つかってしまったため、抹殺することにしたわけだ。

 米司法当局は、シカゴでのGU麻薬密売を摘発するため、2013年末から14年10月まで上記幹部8人の携帯電話などによる通信を傍受した。このうち14年9月24~10月24日には、イグアラ事件に関係する交信が中心を占めた。

 シカゴの幹部からイグアラのGU要員へのある通話では、イグアラの警察や当局に支援を求めるよう命じている。
 求められた地元警察と「当局」が学生拉致や市民殺害に関与した公算が大きい。「当局」には、連邦警察と国軍、それにゲレロ州警察が含まれている可能性がある。

 また、交信には「拉致されたのは60人」という会話もあった。学生43人のうち1~2人は遺骨が確認されていると公表され、全員が殺害された可能性が濃厚だ。「60人」という人数が正しければ、拉致され殺害された可能性のある人数は17人も増えることになる。

 エンリ・ぺニャ=ニエト(EPN)大統領のメキシコ政府は事件解明をせず、偽りの犯人をでっちあげたり、意図的な虚偽は発表をしてきた。大統領の命令下にある連邦警察と国軍が関与しているとなれば、大統領責任が問われることになるからだ。
 イグアラ警察と「当局」の関与は、GUが麻薬の対米密輸で稼いだ資金をばらまいて警察や「当局」を買収していたことを物語る。

 メキシコ大統領選挙は7月1日実施されるが、今回、新事実が明るみに出たことは政権党PRI(制度的革命党)候補への打撃になる。「トランプの米国」がレームダックのEPN大統領をすでに見放していることを窺わせる。